角だし(つのだし)って、何だと思いますか? 角だから、鬼に関係するもの?
いえいえ、違うのです!
角だしとは帯結びの一種で、着物大好き女子から支持高めの結び方。
フォーマルな装いではなく、もっぱらおしゃれとして楽しむ角だしは、江戸時代から流行っていたんだそうです!!
どんな結び方なの?
よく見かける太鼓結び(たいこむすび)は、帯揚げ(おびあげ)と帯締め(おびじめ)が使われますが、角だしは使いません。
帯をやや低めに巻いて、ふっくらと仕上げるのが特徴です。太鼓結びの場合は、中に帯枕(おびまくら)※を入れて、きっちりと着付けますが、角だしは帯枕を使いません。
帯を胴に巻きつけて、結んでから形を整えます。中心部を下ぶくれにつくり、両側から角を形よく出して出来上がりです。
インターネットの着付けチャンネル動画で、手順を紹介しているのを見かけます。これを参考にするのもいいですね。
浮世絵にも出てる!
角だしは、浮世絵の着物姿にも描かれています。江戸時代の商家の奥さんなどに、人気の結び方だったようです。武家の娘は文庫結び(ぶんこむすび)など、今でも振り袖を着る時に使われる結び方でした。庶民は、もっとゆるやかに粋に結ぶのがトレンドだったのでしょう。
現在はフォーマルな場に使う袋帯と、普段使いの名古屋帯を使うことが多いですが、江戸時代から明治にかけては違いました。よそいきには丸帯、普段着は昼夜帯(ちゅうやおび)が主流だったようです。
昼夜帯というのは、表と裏が別の柄になっている帯のことを言います。表地が白博多帯地で裏地が黒の繻子(しゅす)が基本だったことから、その色目から鯨(くじら)の黒い背と腹にたとえて、鯨帯とも呼ばれていました。徐々に柄や素材が豊富になって、表地に花柄が入ったり、表裏が別柄のリバーシブルタイプが出てきたりして華やかさを増しました。
角だし結びで楽しくお出かけ!
アンティーク着物や帯をおしゃれに着るのが流行っていますが、昼夜帯を結ぶ時は注意が必要です。江戸時代は、まだ太鼓結びが一般的ではありませんでした。そのため、当時の昼夜帯の柄は、角だしなどの結び方を想定して描かれています。古い昼夜帯で太鼓結びにすると、背面の中心部に出る柄が逆向きになってしまうことがあります。
おしゃれな柄の入ったアンティーク昼夜帯をゲットしたら、是非角だし結びをお試しください。気楽なお出かけにぴったりの結び方なので、紬(つむぎ)と合わせてもすてきです。浮世絵風にふんわり結んで楽しんではいかがでしょう。
参考文献:『帯結びと着こなし』主婦の友社
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