パスポートや新千円札に有名な波の絵が起用され、今また注目を集めている葛飾北斎。1998年にアメリカの『LIFE』誌が行った「この1000年で世界に功績を残した100人」の調査でただ一人、選ばれた日本人でもあります。
でも、葛飾北斎ってどんな人なのでしょう?
2021年、知られざるその生涯にスポットライトを当てた映画が公開に。
和樂webスタッフのレビューやいかに?
それではさっそく聞いてみましょう!
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波乱万丈! 浮世絵界の鬼才・葛飾北斎の生涯
ーー映画『HOKUSAI』いかがでしたか?
とま子:平均寿命が40歳くらいだった江戸時代に、葛飾北斎って90歳まで長生きしたんですよね。映画を見る前は90年の人生を2時間にどうまとめるんだろうって、気になっていたんですけど。
鳩:映画ではじめて北斎を知る人にも分かりやすくまとめられていましたね。マンガにしたら全100巻とかの超大作になっちゃうところだけど、映画なら2時間で北斎のことが分かるから、お得だと思う!
ちあき:浮世絵って江戸時代の娯楽ですよね。厳しい弾圧を受けていたことにはびっくりしました。
とま子:特に映画の後半で、北斎と親交のあった作家の柳亭種彦が絶筆を迫られるシーンはもう、手に汗握る迫力でした。
鳩:そうそう、江戸時代は寛政の改革とかがあって、出版文化が弾圧を受けるんですよね。北斎は長生きだったから、何度も厳しい時代をくぐりながら、絵を描き続けていく。
天才が天才になるまでの人生90年
ーー映画の前半、葛飾北斎の青年期を柳楽優弥(やぎらゆうや)さんが、後半の老年期は田中泯(たなかみん)さんが演じました。
とま子:わたし、柳楽優弥さんのファンなんです!
『星になった少年』も見たし、実写版『銀魂』の土方役もかっこよくて。
柳楽さんが演じた北斎は、すっごく頑固だと思う。先輩絵師の喜多川歌麿からお酒をすすめられても、(モノマネ風に)「俺は飲まねえ」とか。
ちあき:似てる(笑)
鳩:若いころは自分の絵に悩んで、苦労していました。
とま子:印象に残っているのが、絵に行き詰まって旅に出た北斎が、海に飛び込むシーン。北斎って天才だけど、最初から天才だったわけじゃなくて、苦悩しながら天才になっていったんだって感じました。
鳩:北斎は頑固だったからこそ、絵を描き続けて天才になれたのかもしれない。
絵を描く人、もの作りをしている人に見て欲しい映画だと思う。
とま子:年をとってからの北斎を演じた田中泯さんは、ダンサーだけに身体能力がすごくて、躍動感があって。若い日の北斎は静かに情熱を燃やしているというか、目力が……。
ちあき&鳩:わかる、柳楽優弥さんの目力!!
北斎を取り巻く、個性豊かな面々
ーー北斎の脇を固めた俳優陣も豪華でしたよね。
ちあき:玉木宏さん演じる喜多川歌麿、すっごくセクシーでした。遊女をモデルにして美人画を描くシーンとか、もう(ため息)。あんな風に歌麿に描かれたいって思いながら見てました。
鳩:歌麿が美人画を描いているときのカメラワーク、ぐるっと部屋の天井を映していたのがおもしろかったです。「この部屋に歌麿の人物像が描かれているのかも」って。
ちあき&とま子:なるほど~。
とま子:自分の描きたい絵を見つける前の北斎が、歌麿から「お前の絵には色気がねえ」ってバカにされたり、若い東洲斎写楽の才能に圧倒されたり。「江戸時代のあの人やこの人が、北斎と同じ時代を生きていたんだ」って人間関係が見えてきたのもおもしろかったです。
ずーっと北斎を気にかけてくれていた蔦屋重三郎の店の番頭が、後に日本初の専業作家になる滝沢馬琴だったり。
ちあき:うんうん、今までは作者の名前と絵が線でつながっているだけだったんだけど、人物像や時代背景が分かると、浮世絵がぐんと身近になりますよね。
実は今まであんまり興味がなかったの、浮世絵って。でも、すごく楽しめるようになりました。
鳩:わたしは映画の冒頭、阿部寛さんの蔦屋重三郎に引き込まれました。
映画ではじめて知ったという人は、江戸の出版王だった蔦重(つたじゅう)について、もっと知りたくなるんじゃないかな。
ちあき:映画の中で、「絵で世の中を変えられるんだ」っていう言葉を北斎に残したのも、蔦重でしたね。
とま子: わたし、『HOKUSAI』の映画を見たの2回目なんです。2020年に公開の予定だったのが新型コロナの影響で延期になったので、去年マスコミ試写も見ているんですけど。2回目は細かく作り込まれたところが見えてきて、「あ!」っていう発見がたくさんありました。「この時期にこの絵を描いているんだ」とか。
気になったのは、北斎の……ふんどし!?
ーー入口がたくさんあるというか、見どころの多い映画ですね。
ちあき:衣装もステキでした。蔦屋重三郎の衣装がすごくおしゃれで、さすがいい絵を見出す仕事をしているだけあるなって思いました。
あとね、気になったのは北斎のふんどし! 江戸時代ってふんどしは見せていいものだったのかしら。気になる~。
鳩:(パンフレットを確認しつつ)ほんとだ見えてるね、北斎のふんどし。
絵を描くときにこう前かがみになったりしたら、見えちゃうのかもね。うん。
ちあき:ひと昔前に男子高校生がズボンをずり下げて、パンツ見せてたみたいな江戸のカルチャーだったのかしら。
とま子:あの、北斎の衣装ってけっこうバリエーションがありましたよね。竹林の中の緑の着物とか、自然や心情ともリンクしていた気がします。
若いころの北斎はけっこう派手な着物を着ているんだけど、どんどんシンプルになっていって、最後は藍の……。
鳩:北斎の風景画に欠かせない、ベロ藍ですね。
そういえば、海、波、風。北斎が描いたものが全部、映画に出てくるんだ!
こんな時代に生まれて、幸せになれるのか
ーー北斎が生きた時代は、町人文化が花開いて一見平和ですが、自由に絵を描くことができません。
ちあき:奥さんとの間に子どもを授かったときに、北斎が戸惑って「こんな時代に生まれて、この子は幸せになれるのか」ってつぶやくシーン。コロナ時代の不安ともつながるというか、今、北斎と同じような息苦しさを感じている人も多いんじゃないでしょうか。
とま子:でも、北斎はただひたすら絵と向き合って、描くのをやめない。年をとってからも新しい絵を描くために旅をしたり、すごく活動的です。
鳩:人生で93回も引っ越しをしたんですよね。
とま子:掃除をしないで絵ばっかり描いて、部屋が汚れたら引っ越したっていう説もあるみたいですよ。
ちあき:あの波の絵『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』を描いたのが、70歳のころなんですものね。田中泯さんの北斎はセリフは少ないけれども、体の表現がとても豊かでした。実在した北斎もまさに、体をはって絵を描いていたんでしょうね。
鳩:今の時代に、迷っている人のヒントになる映画かもしれません。
5月28日(金)劇場公開! 映画『HOKUSAI』
工芸、彫刻、音楽、建築、ファッション、デザインなどあらゆるジャンルで世界に影響を与え続ける葛飾北斎。しかし、若き日の北斎に関する資料はほとんど残されておらず、その人生は謎が多くあります。
映画『HOKUSAI』は、歴史的資料を徹底的に調べ、残された事実を繋ぎ合わせて生まれたオリジナル・ストーリー。北斎の若き日を柳楽優弥、老年期を田中泯がダブル主演で体現、超豪華キャストが集結しました。今までほとんど語られる事のなかった青年時代を含む、北斎の怒涛の人生を描き切ります。
画狂人生の挫折と栄光。幼き日から90歳で命燃え尽きるまで、絵を描き続けた彼を突き動かしていたものとは? 信念を貫き通したある絵師の人生が、170年の時を経て、いま初めて描かれます。
公開日: 2021年5月28日(金)
出 演: 柳楽優弥 田中泯 玉木宏 瀧本美織 津田寛治 青木崇高 辻本祐樹 浦上晟周 芋生悠 河原れん 城桧吏 永山瑛太 / 阿部寛
監 督 :橋本一 企画・脚本 : 河原れん
配 給 :S・D・P ©2020 HOKUSAI MOVIE
公式サイト: https://www.hokusai2020.com