雨が降ったりやんだりの梅雨の季節にもかかわらず、海外からの観光客や年配のご夫婦、女性同士のグループや浴衣姿の若者たちが吸い込まれるように皆、川越氷川神社に入って行きます。
鳥居をくぐる前から聞こえる涼やかな音、出迎えてくれたのは風に揺れる色とりどりの江戸風鈴でした。
2019年で6度目を迎えた埼玉・川越氷川神社の「縁むすび風鈴」。境内に掛かる風鈴の数はなんと2,000個以上! 願いを込めた短冊を風鈴に結ぶこのおまつりはどこを切り取っても可愛く、そしてありがたいものでした。
川越氷川神社とは
今から約1,500年も前の古墳時代に創建されたと伝えられる川越氷川神社は、太田道真と道灌親子により川越城が築城されてから、城下の守護神や藩領の総鎮守として城主たちによって崇められてきました。
境内には多くのご神木があり澄んだ空気が漂う。中でも本殿の裏手にあるケヤキのご神木は樹齢600年超。周りに組まれた石段を8の字を描くようにまわると、良縁に恵まれるそう。
江戸時代後期に川越城主・松平斉典の寄進と氏子の寄付などにより建立された本殿には、関東特有の彫刻である「江戸彫り」が全面に施されており、これは県の重要文化財にも指定されています。
川越観光の中心地からもほど近く、縁むすび風鈴の時期は多くの人で賑わう境内。
ご祭神として「脚摩乳命(あしなづちのみこと)」と「 手摩乳命(てなづちのみこと)」の夫婦神様、その娘であり「素盞嗚尊(すさのおのみこと)」の妃神である「奇稲田姫命(くしいなだひめのみこと)」、さらにその子孫ともいわれ出雲大社の縁結びの神様としても知られる「大己貴命(おおなむちのみこと)」の5柱の神々がまつられています。
木製の鳥居としては日本一の大きさ。鳥居に掲げられた扁額の文字は勝海舟の筆によるもの。
これらの神は皆家族であることから、川越氷川神社は「家族円満の神様」ご祭神に2組の夫婦の神さまがいることから「夫婦円満」そして「縁結びの神様」などさまざまな「ご縁」の神様として長い間、広く信仰を集めてきました。
◆川越氷川神社公式サイト:
川越の夏の風物詩「縁むすび風鈴」
そんな、縁むすびの神様が宿る川越氷川神社では、2019年 7月6日(土)~9月8日(日)の期間「縁むすび風鈴」が行われています。
「縁むすび風鈴は、涼やかな音色とともに“風の力”という日本人の昔ながらの考え方に思いを馳せていただきたいということから始まりました。」と話すのは、川越氷川神社広報の荒川裕也さん。
「目に見えるもの」と「目に見えないもの」で成り立つこの世の中。神社は、神様はもちろん、“風”という目に見えないものの力を感じる場所でもあります。
初年度から賑わいを見せていたこのおまつりも今年で6年目を迎え、毎年この時期になるとたくさんの問い合わせを受けるほど縁むすび風鈴を楽しみにしている人は増えているようです。
「木製の短冊は絵馬のように願い事を書いて風鈴に結びます。風が吹き、“ちりん”と鳴る音は神様に願いが届いた合図かな? と、そんなふうに感じるゆったりとした気持ちで神社を訪れて欲しいです」(荒川さん)
透明な空気の流れが神様の出現を感じさせたり、想いを運んでくれる存在だと捉えられてきた風の力。涼しさを運んでくれる風鈴に、そんな一説があったとは…。誰かの願いが届いた風鈴の音を耳にしながらのお散歩は、いつもより優雅なものになりそうです。
◆縁むすび風鈴特設サイト:http://www.hikawa-fuurin.jp/
境内には約2,000個の江戸風鈴
吊るされている風鈴は全て「江戸風鈴」。江戸風鈴は、現在限られた工房でのみ制作される貴重なものです。風鈴はもともとは、魔よけのために一年中吊るしていたそうですが、その涼し気な音色は今ではすっかり夏のイメージがありますね。
竹かごの中の風鈴には夜になると照明があたり、境内は夜もカラフルに。
江戸風鈴の主な特徴は「風鈴の縁の部分がギザギザしていること」「宙吹き(※)で作られているため、カタチと音色にそれぞれ違いが出ること」「風鈴の内側からの絵付け」の3つ。神社に吊るされた風鈴も、同じ色なのによく見ると深い色の部分があったり、カタチも音もひとつとして同じものはない個性豊かな風鈴たちが勢ぞろいしています。(※宙吹き…型ではなく、長い竿を吹き回しながら空中でガラスを膨らませて形を整える方法のこと)
すべてが昔ながらの手法による手作り。職人が作る数には限りがあるため、貴重な江戸風鈴を2,000個以上も目にすることができるのは、またひとつのご縁かもしれません。
社務所の軒下には、頒布されている10色の風鈴が掛けられています。
手づくりの江戸風鈴は販路も限られてくるためとても貴重なものですが、神社の社務所では10色の江戸風鈴が頒布されています。一時、人気で頒布終了となった「空色」と「恋色」(なんて素敵なネーミング! )の風鈴は、先日再び頒布が始まりました。たくさんの方が自宅でも縁むすび風鈴を楽しんでいるんですね。
色とりどりの「風鈴回廊」
縁むすび風鈴のおすすめのひとつ、風鈴回廊は9時~21時の間に通り抜けることができる色とりどりのトンネルです。見事な景色を写真におさめたいと、たくさんの人が列をなし、多くの人がカメラを向ける姿が見られました。
一風変わっているのが、風鈴回廊に限らず縁むすび風鈴の写真は良縁の願いを込めて神社で奉納されること。奉納された写真を覗いてみると、とても素敵な写真ばかり! 見ているだけでも涼しく、ありがたい気分になります。
◆写真奉納について 公式サイト:http://www.hikawa-fuurin.jp/photohounou/
当たるとウワサの「あい鯛みくじ」
境内にはいくつかのおみくじがある中、ひと際目を引く存在のおみくじが「あい鯛みくじ」です。
竿を使って吊り上げ、張り子の鯛のしっぽ部分に入ったおみくじを抜き出す珍しさから、ここも多くの人で賑わっていました。恋愛について詳しく書かれている内容は当たる! と評判だそう。釣り上げた鯛を大切に持ち、熱心におみくじを読む様子があちらこちらで見られました。
全部で13種類のお守り
可愛くてありがたいものは、さらに続きます。
川越氷川神社のお守りにはこの時期恒例の風鈴仕様が登場。 全部で13種類のお守りが3期に分けて頒布されます。
第一期 7月6日(土)から 4種
第二期 7月27日(土)から5種
第三期 8月17日(土)から4種(それぞれ数量限定)
photo by 川越氷川神社
さて、ここで気になるのが、こんなに可愛ければあれもこれも欲しい…となってしまうお守りの数について。お守りをいくつも持つと、神様同士がケンカするなんていう話を聞いたことがありますが、本当でしょうか。
「集めることが目的となり、コレクションのようになるのは意味合いが違います。ひとつひとつを等しく、大切に持ってくださるならば複数持つことは問題ありませんよ」(荒川さん)
絵柄は毎年違ったものが出てくるので、楽しみに待つ方も多いよう。神様同士がケンカをする…なんていうことはないようですが、ありがたくひとつずつを大切にしたいですね。
こんなところにも可愛くてありがたいものを見つけました。こちらはお守りを購入した際におわかちされたカード。(現在は授与所で誰でも手に入れることが可能)福井県の図案家「ウィギーカンパニー」の作で、私は「縁」というカードをいただきました。
「風」や「恋」など全部で5種類あり、描かれた女性の着る浴衣や持ち物、裏面に書かれた言葉も種類により違うのでぜひチェックを!
御朱印帳が縁むすび風鈴仕様
涼し気な様子は、ご朱印にも。期間中、背景の図柄は何度か変わるそうです。どんな図柄になるかのご縁もまた楽しみですね。
※縁むすび風鈴の期間ご朱印は書置きの頒布となります。
伝説の「光る川」が神社の由縁?
昼間は厄払いの“人形(ひとがた)流し”が行われる小川は、夜になると「光る川」となり人々をひきつけます。
photo by 川越氷川神社
これは神社の創建に関わる話で、その昔、入間川の川底が毎夜光ったという言われから。その光のもとをたどったところ、この場所にたどり着いたため氷川神社をまつるに至ったという伝説があります。
また、風鈴はカラフルなものばかりではなく、無色透明のシンプルなものも。夜になるとこの風鈴には照明があてられ、昼のさわやかな景色とのギャップがまた素敵! 光る川と共に、境内は幻想的な雰囲気に包まれます。
街なかで楽しむ「恋あかり」
photo by 川越氷川神社
光る川のように創建の頃から光と密な関係にある川越氷川神社では、「神社のあかりを、まちへ」をテーマに、「恋あかり」というイベントが行われます。
photo by 川越氷川神社
3年目を迎える恋あかりは、風鈴のようなぼんぼりの、ほのかな明かりを街なかで楽しむ行事。ぼんぼりは、毎日18時30分から行われる「恋あかり特別良縁祈願祭」の授与品として頒布されるほか、恋あかりの期間中は毎日9時~21時に社務所でも頒布されます。
浴衣姿に恋あかりのぼんぼりを持ち、川越の街を歩く姿はとても絵になりそう! 昼間の川越とは違ったお散歩の楽しみ方ですね。
◆恋あかり詳細
恋あかり公式サイト:http://hikawa-koiakari.jp/
期間:2019年7月27日(土)~8月31日(土)
恋あかり特別良縁祈願祭斎行時刻:毎日18時30分~(10分前までに社務所で受付が必要)
祈願初穂料:ひとり1,500円
授与品:恋あかりのぼんぼり・飴
※期間中、予定数が終了した場合は頒布終了。
※事前予約は不要。祈願祭の時間は前後する場合もあり。
※特別良縁祈願祭は、斎行時刻前に受付をした人のみで、社務所でぼんぼりの頒布を受けた全員が参列できるものではありません。
「恋はなび」は運命の赤い糸
photo by 川越氷川神社
運命の人とは、小指と小指が赤い糸で結ばれているというお話は聞いたことがある人も多いでしょう。川越氷川神社では、結婚式の中で結婚指輪の交換の代わりに「結い紐の儀」としてお互いの小指に赤い結い紐を結び合います。
その結い紐をイメージして作られたのが恋はなびです。
photo by 川越氷川神社
恋はなびは、持ち手が二つにわかれている特製の線香花火で、大切な人と一緒に灯す線香花火として楽しむことができます。
そして終わった後は、それぞれの手元に残ったこよりを結い紐のように小指に結びます。想い出がカタチとなって残り、より絆も深まりそう。恋人に限らず、夫婦、親子、友人など大切な人と恋はなびを楽しむのはいかがでしょうか。
◆恋はなび
恋はなび公式サイト:http://www.hikawa-fuurin.jp/
開始日:2019年7月27日(土)9時から限定頒布
初穂料:300円
毎日先着100本(1組1本)なくなり次第終了です。
※恋はなびはそのまま持ち帰るか、七夕祭など特別な日に限り、境内の特設スペースで行うことができます。
ペットボトルがカワイイって?
photo by 川越氷川神社
形が丸っこくなると、途端に可愛くなるのはなぜでしょう! 風鈴に見立てた丸いカタチのペットボトル「縁むすび風鈴 水(1本300円)」は、人気だった去年とはまた違った図柄のものも登場しています。カタチもイラストも可愛い夏らしいペットボトルは、街でも注目されそうですね。
※7月20日から8月中旬頃まで販売。販売場所は、隣接する「むすびcafé」(店休日を除く毎日10時~18時)と、屋外(土曜・日曜のみ11時~18時)で予定されています。
※屋外販売は常温と冷やした状態、むすびcaféでは常温での販売です。
※むすびcaféは一日の販売予定本数に達した時点で、その日の販売は終了です。
むすびcaféで風鈴モチーフの限定スイーツ
川越氷川神社に隣接する氷川会館1階にあるのが「むすびcafé」です。
お料理やお菓子に使う材料を神前にお供えしてから作り始めるというむすびcafé。年中行事にこめられた「ココロ」や伝統文化に表われた「カタチ」、そして神社のお祭りや作法などが紹介される場として開かれています。
風鈴に見立てたスイーツ「彩り風鈴」
photo by むすびcafé
縁むすび風鈴のスタートと共に販売が始まった「彩り風鈴」は、風鈴に見立てた器にゼリーやムースが層になった夏限定のスイーツです。
旬の果実をたっぷり使い、上層のフルーツゼリーには噛み応えのある海藻系の材料を使うこだわり。ホワイトチョコレートのフタにある、水滴に見立てたソースがとても涼やかで、味にも見た目にも作り手の気持ちがたっぷり込められたスイーツです。
※全7種類(もも・ライチ・マンゴー・ぶどう・パイン・メロン・塩ミルクグレープフルーツ、全品500円)。
※彩り風鈴はイートインのみの取り扱いです。
◆むすびcafé公式サイト:https://musubicafe.com/
美しい結びのお守り「まもり結び」
photo by むすびcafé
むすびcaféに入ると目に飛び込んでくるのが、壁にかけられた美しい結び紐です。今回「まもり結び」というものを初めて知りました。
まもり結びは、季節の移り代わりを感じながら毎日を平穏に過ごせるようにと家に飾るお守りで、それぞれの月の年中行事が「結び」として表現されています。月ごとに結びと色が変わり、翌年の新しい月を迎える前に再び神社に持っていくことで、お清めし戻してもらえます。
photo by むすびcafé
川越氷川神社のまもり結びは、監修の結び研究家 関根みゆきさんから数年かけて学んだ神職たちが、心を込めてひとつひとつ結び整えお祓いされているもので、毎月25日に社務所で頒布される時には朝のかなり早い時間から並ぶ人もいるそうです。
美術品や武具、おみこしなどにもみられる結びは、用いられる場面や道具によりさまざまな意味を持つそうで、またひとつ素敵な日本らしさを見つけてしまいました。
※毎月25日、朝8時より、限定50体、翌月分を社務所にて頒布。ひとり1体まで。初穂料3,000円。
※実物は、むすびcaféの展示スペース、神社の社務所内の壁に展示があります。ただし、縁むすび風鈴期間中は社務所のレイアウトを変更している為、参拝者からは見えにくい位置にあるようです。
観光地の喧騒から少し離れた神社に一歩足を踏み入れ、涼しい風鈴の音を聞きながらゆったりとした時間を過ごすことができる川越氷川神社。いよいよ夏本番! 夏の風物詩を満喫できる川越さんぽにお出かけしてみませんか?
川越氷川神社へのアクセス
池袋・川越アートトレインで行く川越
東京・池袋と川越を結ぶ東武東上線には、2月から「池袋・川越アートトレイン(以下、アートトレイン)」が登場しています。アートトレインの車両には、若手画家・古家野雄紀氏により川越に縁のある観光地やイベントが可愛く、そしてダイナミックに描かれており、今回訪れた川越氷川神社や縁むすび風鈴、あい鯛みくじもそのデザインになっています。
あい鯛みくじの群れが描かれた「池袋・川越アートトレイン」(photo by 東武鉄道)
川越さんぽの気分も上がる、アートトレインの記事はこちら:https://intojapanwaraku.com/travel
◆池袋・川越アートトレイン公式webサイト:https://kawagoe-express.jp/
JR・東武東上線「川越駅」から
【東武バス】
1番乗り場 「喜多町」で下車 徒歩5分、7番乗り場 「川越氷川神社」で下車 徒歩0分
7月6日(土)~9月8日(日)内の土日祝日には「東武バス 縁結び風鈴臨時バス」が運行予定(ただしお盆期間中の8月13日(火)~16日(金)は、平日も運行)
【小江戸巡回バス】
氷川神社前 徒歩0分
8月3日~25日の土日祝日には「小江戸巡回バス 縁むすび風鈴臨時バス」が運行予定
【西武ハイヤー】
期間中の全日、本川越駅~川越氷川神社区間を定額料金800円で運行
西武新宿線「本川越駅」から
東武バス 5番乗り場 「喜多町」で下車 徒歩5分、「川越氷川神社」で下車 徒歩0分、小江戸巡回バス 「氷川神社前」 徒歩0分
期間限定のバス・タクシー
小江戸巡回バス公式サイト:http://www.new-wing.co.jp/
縁むすび風鈴 臨時バス(期間中の土曜・日曜・祝日運行予定)
縁むすび風鈴 臨時バス(期間中の土曜・日曜・祝日、およびお盆)
西武ハイヤー:期間中の全日、本川越駅~川越氷川神社区間を定額料金800円で運行
自動車
関越自動車道 川越I.C.から約20分
※結婚式優先のため、駐車場は大変込み合いご利用できない場合があります。公共機関での訪問をおすすめします。