全国個性派美術館への旅、今回ご紹介するのは富山県水墨美術館です。
平屋造りの和風建築美術館で、日本美術を心ゆくまで堪能する
日本を代表する画家のひとり、下保昭が描いた作品100点の寄贈を受けたことをきっかけに誕生した「富山県水墨美術館」。現在は、近代以降の水墨画を中心に富岡鉄斎、竹内栖鳳、横山大観などの作品や工芸作品約650点を所蔵しています。
建物は、瓦屋根が印象的な平屋で、館内には約100mまっすぐに延びた廊下があるのも大きな特徴。廊下の窓からは、秋田県の角館からやってきたという樹齢50年を超える紅しだれ桜が単木で佇む姿が。その後方には、神通川沿いの土手に植わった桜がずらり、遠方には立山連峰を一望する見事な景観が広がっています。美術館奥には、数寄屋建築の第一人者として知られる中村外二が最晩年に手がけた茶室があり、企画展に合った和菓子が提供されるなど、訪れた人に開放されています。貴重な数寄屋建築を目的に美術館を訪れる人も多いのだとか。
横山大観「雨後之山」1941年 富山県水墨美術館蔵
所蔵品のなかから20点ほどを展示する常設展を行うほか、企画展は年に7回ほど開催。2018年3月25日までは「生誕140年尾竹竹坡展」を行っていました。今ではその名を知る人も少なくなってしまった尾竹竹坡。兄、弟ともに日本画家で尾竹三兄弟としても注目を集めましたが、特に竹坡は、文展で最高賞を受賞した全盛期には横山大観のライバルとして目され、その人気は大観をしのぐほどだったとか。ところが文展に落選をしてからは、画風を一変。上品な歴史画からロシアの前衛絵画の傾向を取り入れた作品を描くようになります。
尾竹竹坡「太陽の熱」1920年 宮城県美術館蔵
そのころの代表作とも言える3部作「月の潤い」「太陽の熱」「星の冷え」も。自信家で直情的な性格から岡倉天心と対立したり、突如代議士選挙に立候補したりと破天荒エピソードには事欠かない竹坡。同一人物が描いたとは思えない画風の変遷も見どころです。初の回顧展には多くの人が訪れました。
歌川国芳「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」1847年〜48年
2018年4月6日〜5月13日までは、巡回展の「江戸の遊び絵づくし」を開催。江戸の絵師が手がけた約160点の遊び絵を一挙に公開します。ユーモアたっぷりのポップカルチャーを堪能できる機会です。
鑑賞を終えたら、茶室でゆったり和菓子をいただくのもおすすめ。建築や作品、美術館全体で和の美を味わい尽くしてください。