東京ミッドタウンにあるサントリー美術館。モダンな雰囲気の中に木を用いた伝統の技を感じさせる館内ほか、サントリー美術館の魅力、今後の展覧会のスケジュールについてご紹介します。
サントリー美術館とは?
1961年、東京・丸の内に開館。1975年には赤坂見附に移転、そして2007年3月30日に現在の東京ミッドタウンへ移転しました。建築を手掛けたのは隈研吾(くまけんご)。目ざしたのは「都市の居間」として居心地の良い美術館だそうで、木や和紙などが使われ、訪れる人を自然とリラックスさせながら、展覧会鑑賞へと導きます。
展示室は3階と4階の2層にわかれ、3階には天井高9.3mの吹き抜け空間があり、その構成を生かした展示構成も見どころ。
豪華絢爛! 所蔵作品の見どころ
サントリー美術館のコレクションは、設立当初の「生活の中の美」を基本テーマとし、絵画、陶磁、漆工、染織など日本の古美術から東西のガラスまで、国宝1件、重要文化財15件、重要美術品21件を含む約3,000件に及びます。
代表的な所蔵作品が、上の「南蛮屏風」です。桃山時代、南蛮人と呼ばれた異国の人々は、当時の日本人にとって非常に珍しく、その様子を題材にしたいわゆる「南蛮屏風」がいくつも描かれました。中でも、サントリー美術館が所蔵する本作は、右隻に南蛮船の入港、左隻に異国の情景を描いた、「南蛮屏風」のパターンの原型になったとされ、「南蛮屏風」のひとつの金字塔として知られています。
また、細かな人物描写や色鮮やかな配色なども見もので、南蛮人が船の上で日本風の盤双六で遊んでいる様子や、不思議な衣装をまとった女性たちの姿など、当時の様子をうかがい知ることができます。
もうひとつ、サントリー美術館で有名なのが、国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」です。鎌倉幕府の執権・北条時政の娘で源頼朝の妻である北条政子が愛用したと伝えられ、華麗で格調高い名品です。浮線綾螺鈿蒔絵手箱について、くわしくはこちらをご覧ください。
港区・六本木であっと驚くアート鑑賞を
六本木へ移転後は、「美を結ぶ。美をひらく。」を新しくミュージアムメッセージに加えました。これは、古きものと新しきもの、など、自由に大胆に結ぶことで人と美に新しい関係をひらいていきたいという思いがこめられているそうです。
そんなサントリー美術館の展覧会の切り口は今までになかった! と思える斬新なものが多く、見たことがある作品でも、「こんな見方ができるんだ」という新鮮な驚きに溢れています。そこで、過去直近一年から、今後2019年11月まで行われる展覧会をご紹介します。
2018年9月から2019年6月までに行われた特別展示
1. 2018年9月19日〜11月11日 「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」
100件あまりの貴重な仏教美術の名作が展示された展覧会のレポートはこちら
2. 2018年11月28日〜2019年1月20日 「扇の国、日本」
尾上右近さんが訪ねた展覧会の様子はこちら
3. 2019年2月6日〜3月31日 「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」
川鍋暁斎の知られざる人間性がわかる展覧会レポートはこちら
4. 2019年4月27日〜6月2日 「サントリー芸術財団50周年 nendo × Suntory Museum of Art information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」
5. 2019年6月26日(水)~2019年8月18日(日) サントリー芸術財団50周年 遊びの流儀 遊楽図の系譜
双六(すごろく)やかるた、舞踊やファッションなどの「遊び」に着目し、人々の暮らしと「遊び」のかかわりを紐解く展覧会のレポートはこちら
意外な掘り出し物揃いの展覧会?!サントリー美術館「遊びの流儀 遊楽図の系譜」【みどころ解説】
2019年9月から2019年11月までの特別展示
2019年11月までの特別展をご紹介します。なお、2019年11月11日から2020年5月中旬まで、改修工事のため休館予定です。
サントリー芸術財団50周年 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶
開催期間:2019年9月4日(水)~11月10日(日)
茶の湯のための、新しい日本のやきものが創造された桃山時代は力強い形姿・色彩・意匠をもつ「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」がもてはやされました。本展では、当時の美術工芸との比較も試みながら、そのおおらかで個性的な造形的魅力の秘密に迫ります。
サントリー美術館をもっと楽しむ3つのポイント
加賀麩のお食事でほっこり
美術館へ行った際にぜひ立ち寄りたいのが併設されているshop×cafe(ショップバイカフェ)。
カフェは慶応元年創業の、金沢の「加賀麩 不室屋」がプロデュース。お麩料理を現代的にアレンジし、その美味しさを存分に楽しめる、数量限定のふやき御汁弁当や、お麩を使ったあんみつなど、お昼でも、喫茶でも魅力的なメニューが豊富に揃っています。
ワークショップなどイベントが充実
サントリー美術館では、美術をもっと楽しめる企画が盛りだくさん。こどもから大人まで楽しめる初心者向けスライドレクチャー「フレンドリートーク」や、簡単な体験を交えながら楽しく学ぶ、初心者向け体験型ミニレクチャー「はじめてひらく 美のとびら」など、美術初心者も楽しめる企画を展覧会開催中に実施しています。
点茶席で茶の湯に触れる
もうひとつの楽しみが、美術館6階にある茶室「玄鳥庵」で点茶(お抹茶とお菓子)をいただけること(開催日は限定)。
「玄鳥庵」は1961年、丸の内にサントリー美術館が開館したときに設けられ、裏千家第十四代淡々斎宗匠により命名されました。設立当初の部材を用いながらモダンに設計された茶室でいただく点茶は日本文化を心静かに味わえます。
サントリー美術館の利用案内
住所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
入場料金:常設展はなく、企画展のみ。料金は展覧会ホームページをご確認ください。
開館時間:10:00〜18:00 (ただし金・土は20:00まで開館)
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※11:00までは入館方法が異なります。詳しくは公式サイトでご確認ください。
休館日:火曜日・展示替期間・年末年始
サントリー美術館へのアクセス
■都営地下鉄大江戸線:六本木駅出口8より直結
■東京メトロ日比谷線:六本木駅より地下通路にて直結
■東京メトロ千代田線:乃木坂駅 徒歩約3分
■都営バス(渋谷発):都01「六本木駅前」下車 徒歩約2分
■ちぃばす(赤坂ルート/田町ルート):「六本木七丁目」「檜町公園」下車 徒歩約1分
東京ミッドタウン・六本木ヒルズ周辺にある美術館まとめ
最後に、サントリー美術館近隣にある美術館を紹介します。
■21_21 DESIGN SIGHT:http://www.2121designsight.jp/
2019年7月19日(金)〜11月4日(月・祝)まで、「虫展 デザインのお手本」展を開催。
■東京ミッドタウン・デザインハブ:https://designhub.jp/
デザインのプロモーション・職能・研究教育という3つの異なる役割を担う機関が連携し、デザインによって 「人」「ビジネス」「知識」 を結びつけ、展覧会やセミナーの開催、出版などで情報をする施設。
■FUJIFILM SQUARE:http://fujifilmsquare.jp/
写真展・写真やカメラの歴史を学べる写真歴史博物館があります。
■国立新美術館:http://www.nact.jp/information/introduce/
2019年6月12日(水)~9月2日(月)まで「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」展を開催。
■森美術館:https://www.mori.art.museum/jp/
2019年6月20日(木)~10月27日(日)まで「塩田千春展:魂がふるえる」展を開催。
■森アーツセンターギャラリー:https://macg.roppongihills.com/jp/index.html
2019年7月5日(金)~9月8(日)まで「進撃の巨人展FINAL」展を開催。
参考:サントリー美術館公式サイトhttps://www.suntory.co.jp/sma/
※この記事で紹介している作品は美術館の所蔵作品ですが、必ずしも常時展示されているものではありません。
-2016年和樂8・9月号『ニッポンの名画50原寸探訪!』を再編集-
※緊急事態宣言の期間中など、美術館は臨時休館となる場合があります。詳細・最新情報は、美術館のHPをご確認ください。