Travel
2022.05.23

エッ?ハートやアルファベットも?子どもと一緒に始める「ファミリー盆栽」って何?

この記事を書いた人
この記事に合いの手する人

この記事に合いの手する人

うどんが有名な香川県は全国的にも有名な盆栽の産地でもあります。

し、知らなかった~!

盆栽とは鉢に植えた樹木で自然を表現するために美しく仕立てたもの。普通の鉢植えとは違い広大な自然を小さな鉢の中で再現する芸術品です。

盆栽と聞くと「波平さんが大事にしていた・・・」などこれまでは男性の趣味というイメージがありました。しかし近年、もっと盆栽を身近に、幅広い層に楽しんでもらおうという取り組みが行われています。先人の努力によって現代に伝わり、香川県が世界に誇る「BONSAI」。「盆栽の郷」として知られる香川県高松市鬼無町。5代目園主の父・花澤登人さんと娘の美智子さんが営む150年の歴史を持つ「花澤明春園」(はなざわみょうしゅんえん)では伝統を大切に受け継ぎながら、新しい価値観を創造し、新たな魅力を発信しています。オリジナルで考案したハートやアルファベットの盆栽がSNSを通じても注目を集めている花澤美智子さんに盆栽の魅力と可能性について聞きました。

“継がなくていい”と言われたことも。でもいつしか父と同じ道に

―― 生まれた時から盆栽が身近にある環境ですよね?
花澤さん:それはそうですが私が幼い頃は誤って壊してしまわぬように「子どもは触るな!」的な雰囲気はなんとなく感じていました(笑)。何より中学・高校とハンドボールに夢中で、朝から晩までハンドボール一色の生活でした。大学も自ずとハンドボールが続けられる環境が整った関西の大学に進学しました。

―― 盆栽の世界に入ったのは何か理由があったからですか?
花澤さん:怪我をしてそれまでのように本格的にハンドボールが続けられなくなったことは大きかったと思います。一旦は就職したのですが訳あって地元に戻りました。でもまだまだ盆栽をやろうとは思っていなくて。

――なかなかに手強い(笑)
花澤さん:でしょう?ただ自然の流れで気になってきてこちらに戻って1年後の24歳くらいから手伝うようになりました。

―― 最初はどんなことからですか?
花澤さん:父が盆栽、母が山野草を手がけているのですが、それぞれの持ち場があって、両親の指示のもと、毎日の水やりとかあるものを管理していくような形ですね。

―― お父さんとは仕事場では師弟関係ですね
花澤さん:“継がなくていいよ”と言われたこともありました。でも自分的には頭のどこかに”いずれは”という気持ちもあったと思います。今のような盆栽と器、山野草も扱いながら体験教室も行っている花澤明春園のスタイルを築いたのは父なんですね。盆栽に関しては質問をすれば教えてくれますし、父が行っているワークショップの手伝いで同行することも多く、そこからも学ぶことは多かったですね。

ある日突然「曲げてみたい」と思った

―― ご自身のオリジナルの盆栽に挑戦してみようと思われたきっかけについて教えてください。
花澤さん:盆栽を始めて間もない頃に“曲げてみたい”と思ったんですよ

―― え??盆栽をですか?
花澤さん:そうなんです。枝を曲げてみたいと。それで父に「苗が欲しいんだけど」と相談したら2000本の苗を仕入れてきて・・・・・・

―― に!2000本ですか??
花澤さん:ビックリでしょう?正直「どうしよ??」と思いましたが、どうすればいいか自分なりに考えて、わからないことがあればその都度、父に教えてもらったり、自分で調べたりしながら試行錯誤しました。でも2000本ありますからね(笑)。枝は曲げてから形として定着するまで1~2年かかるんです。

―― インスタグラムで話題になったハート形だと完成まではどのくらいかかりますか?
花澤さん:苗から育てて5年くらいですね。ちなみに盆栽の枝を曲げられるのは冬だけなんですよ。冬は寒さに耐えて休んでいる状態なので枝を曲げても大丈夫なんです。全ての作業は植物の成長に合せて行います。

ハートやアルファベットの盆栽は1個4500円~

―― 知らなかった!一朝一夕にはできない根気のいる作業ですね。
花澤さん:でもインスタグラムで話題になって「こういう形はできませんか?」など問合せもいただけるようになって、喜んでもらえるならと励みになりました。

―― ハートだけでなく星、数字、アルファベットなど種類も豊富ですね。
花澤さん:結婚や誕生日を記念した数字や名前などのオーダーもあります。

―― 結婚記念のプレゼントにも喜ばれそうですね。ぐっと盆栽が身近に感じられますね。お父さんの登人さんは「ファミリー盆栽」という提案をされているそうですが、具体的にどのようなことなのでしょうか?
花澤さん:これまで盆栽というとどうしても高価で大人の趣味というイメージでとらえられがちでしたが、これからはもっと気楽に家族で盆栽を育てるというスタイルがあってもいいのではという考え方です。盆栽を通じて家族でいろいろな体験をすることで家族の会話や時間も増えますし、植物を育てるという経験はお子さんの成長過程においてもかけがえのない思い出になると思っています。

ハート形の盆栽、ほしい! 今まで遠い存在だった盆栽が急に身近に♡

新しい試みオリーブの盆栽、その名も「コリーブ」

―― 新しい試みもあるとか?
花澤さん:オリーブを盆栽にした“コリーブ”を作っています。香川に足を運んでくれた方に喜んでもらえて、記念になるものをと考えました。

―― やはり実際に足を運んでもらいたいという気持ちが強い?
花澤さん:どの盆栽も1つとして同じ物はないので、できることなら数多くの盆栽の中からじっくり見てお気に入りを選んでもらえたらなと思います。国内でもこれだけの数が揃うのは珍しいと思うのですが、父が日本中から集めた器もあるので、苗と器それぞれお気に入りを選んで自分だけの盆栽を手にしてもらえたら嬉しいですね。園内には珍しい山野草もあるのでぜひゆっくりと見て楽しんでもらえたらと思います。盆栽は長い年月をかけて手をかけながら育てていくもの。植え替えなども含め長いお付き合いができればと思っています。

見た目も可愛いハートや星、数字やアルファベットなど親しみやすいおしゃれな盆栽を通じて伝統を繋いでいく花澤さん。日本文化を継承しながらも多彩な楽しみ方を提案しています。お気に入りの盆栽を探しに香川を旅してみませんか?

花澤明春園

香川県高松市鬼無町鬼無748-3
電話:087-881-2847
営業時間:9:00~16:00
定休日:不定休
駐車場:8台
HP: 花澤明春園HP
Instagram:花澤明春園Instagram

書いた人

せとうちに暮らすカエル好きライター。取材先に向かう山道で迷いイノシシに遭遇した経験あり。京都国立博物館トラりんの強火おたく。ジャニヲタ。No J No Life。HP:https://ww-kitamura.com/ Twitter:@yukkisetouchi

この記事に合いの手する人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。