〝あんこ〟名店東西11店の中から、第2弾は東京・日本橋の名店「ときわ木の最中」をご紹介します。
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ときわ木の「最中」東京
最中はあんこ菓子の中でも日もちがするもの、と一般的に考えられていて、実際、そのように仕立てて販売する店も多いなか、「ときわ木(ぎ)」は別。茶席用にこしらえる上生菓子と同様、「当日のうちに、遅くても翌日まで」と言葉が添えられます。
というのも、最中のために用意されたつぶしあんは、甘みが控えめ。初めて口にする人には拍子抜けするぐらいです。あんのベースは、蜜炊きした大粒の小豆。「粒がつぶれないように専用の金網にぴったり詰めてゆでる昔ながらのやり方です。その小豆をあんに仕上げるときに、小豆がところどころつぶれる。その加減が風味にもなるので、腕の見せどころです」と3代目の森宗一郎(もりそういちろう)さん。
そうして代々伝わるつぶしあんは、香ばしく焼かれたごく薄い皮でそっと挟まれます。みずみずしいあんは空気に触れる部分が多く、皮も薄いので保護にはなりません。
当然、風味は逃げやすいのですが考案した初代はそれを承知の上だったのか・・・。あんを炊くのに3日かかるのだから、つくるほうも食べる側にとっても、はかない。江戸好みが根づく日本橋にある店らしい、粋な味です。
明治43(1910)年創業の小さな上生菓子店。その日販売するお菓子は3段の重箱に詰められて、客はそれを見て注文する古式な商いを続けています。進物用の掛け紙には店名にちなんだ松の手刷り版画があしらわれるのも、創業時からの伝統です。
皮の風合いを大切に、あんは注文が入ってから詰めます
店舗情報
ときわ木
住所:東京都中央区日本橋1-15-4
電話:03-3271-9180
営業時間:9時30分~17時30分
休み:水曜・土曜・日曜・祝日休
撮影/石井宏明 構成/藤田 優、後藤淳美(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2019-2020年12・1月号)』の転載です。