この浮世絵には、現在の銀座一丁目付近が描かれています。
右側の看板に焼き芋屋を表す「〇焼き」と「十三里」の文字が見えますね。
「〇焼き」は焼き芋を丸ごと焼く「まる焼き」のことなんだそうです。江戸の人々は切り焼きよりもまる焼きが好みだったようですね。
では「十三里」とはいったい何を表しているのでしょうか?
正解は
「焼きいもが焼き栗の味を上回るほどおいしい」という意味を表しています!
どういうこと???ですよね!
「栗(九里)より(四里)うまい十三里」つまり「九里+四里=十三里」という洒落なのです!
これが江戸っ子にうけて評判となり、焼きいも屋はますます繁盛します。
なお、「十三里」には、江戸時代のサツマイモの名産地であった川越まで、江戸・日本橋から13里(=約52㎞)あったからだという説もあります。
その川越藩領(現在の埼玉県)は下総(しもうさ)の馬加村(まくわりむら/現在の千葉市花見川区幕張付近)とあわせて江戸の焼きいも用サツマイモの二大生産地でした。供給力はほぼ互角でしたが、味にうるさい江戸っ子の好みは川越産のサツマイモ!
川越藩が位置する武蔵野台地は、関東ローム層と言われるサツマイモの栽培に適した土壌で、落葉で作った堆肥を利用することで甘みが強く、味も香りも抜群のサツマイモを生産することができたのです。
現在も川越はさつまいもを使ったスイーツが有名ですね!
焼き芋の歴史についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
栗よりうまい十三里の意味とは?江戸時代のブームと歴史
アイキャッチ画像:歌川広重「名所江戸百景 びくにはし雪中」 国立国会図書館デジタルコレクション