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金沢の名料亭「日本料理 銭屋」で極上の加能ガニを食す!
金沢・近江町市場のカニが美味しい理由
観光名所としての色も年々強くなってきた近江町市場ですが、しっかり物を買っている人を見れば地元の方。食のプロたちは午前中早くにさーっと買い物をして、観光客がのんびり市場へ繰り出す前には姿を消します。「観光客しかいない」なんて声も聞きますが、まさか。江戸時代から続く歴史のある市場ですもの、底力が違うんです。
近江町市場といえば鮮魚。数ある店の中でも「カニとうなぎの専門店」があるのをご存じですか? その中でもおすすめが今回ご紹介するお店です。専門店の強みは店にある釡でゆでたカニを売っていること。深夜もしくは早朝のセリで落としたカニをゆでて、9時ごろには店頭に並ぶというわけです。鮮度よし、味よし、すべてに目が行き届いているので任せて安心。もし近江町市場から持ち帰りたいなら、店には午前中に行きましょう。いいものはやっぱり早い者勝ちです!
おすすめの店1
近江町市場の老舗カニ専門店「川木商店」
「味も値段もとびきり! それでも、損はさせない自信があります」
近江町市場のメインストリート、「鮮魚通り」にある店といえば風格ただよう大型店が並びます。その中で「カニとうなぎ」に絞った商いを40年以上続けている川木(かわき)商店。
店頭に並ぶ石川県産のカニの価格は、率直に言って高め。その理由は、特定の漁場でとれるカニとその質にこだわるから。いいカニがとれない日に備えて生簀(いけす)を持ち、毎日販売できるように努めています。
「よいものはよい、安いものには理由はある。それが価格に反映されています」と責任者・木戸裕二(きどゆうじ)さん。「それでもうちの味がいいってお客様がついてくださっているのでね。カニの美味しさってゆで加減にあるんです。そこには自信あります」と木戸さん。ゆで上がったカニは、繊維がふわっとして味わいは清らか。こんな繊細な味わい、どうやって引き出すのでしょうか? 答えはもちろん「秘密」でした…。
価格に見合うだけの味はあるので、あとは財布と相談を。県外産を含めれば低価格のものもあり、予算に応じて良品をすすめてくれる姿勢もさすがは専門店です。
「川木商店」の扱うカニ
1、県内のある港に揚がるカニにこだわる。
2、幅広い予算に対応するカニを各県からとりそろえる。
3、独自のゆで加減で味をつくる。
店舗情報
「川木商店(かわきしょうてん)」
住所:石川県金沢市青草町88 近江町いちば館1F
電話:076-231-5982
営業時間:9時~16時
休み:年始・お盆休
※取り寄せる際は、電話で相談を。目安は加能ガニ1杯8,000円〜50,000円、香箱ガニ1杯1,800円〜5,000円(価格は時期や天候によって変わります)。
おすすめの店2
家族経営の小さな専門店「みやむら」
「なるべく多くの人に届くよう低価格でたくさん売ります」
カニ専門店を営む祖父から独立して、近江町市場に店を構えること20年弱。「みやむら」は宮村宏志さんと長男の則光さん、義理の息子となる池田信一さんの3人が中心となって「カニとうなぎ」を専門に営んでいます。
未明に宏志さんがセリで仕入れてきたカニをスタッフ総出できれいに洗い上げ、釜ゆでに入ります。生簀(いけす)をもたないこの店は「毎日売り切れ終い」のため、価格も手が出しやすい設定です。「昔は浜ゆでって言いましたけど、カニはゆで上がりがいちばん美味しい。それに勝るものはない」と宏志さん。カニの旨みを引き出す塩加減にこだわるこの「みやむら」のゆで上がりは、味が強いのが特徴。
石川県の漁期中は県産のカニがほとんど店頭を占めます。山積みになった中から自分で選ぶ楽しさもありますが、予算や人数を伝えて選んでもらうのが安心。持ち帰りの地元客には食べやすく包丁で切り分けるなどのサービスも、小さな店のよさです。
「みやむら」の扱うカニ
1、その日買い付けたカニは当日売り切る(生簀をもたない)。
2、重量感があり、脚の関節がしっかりしたもの。
3、ゆでる前に徹底掃除。カニビル(黒い粒)が付いてない。
店舗情報
「みやむら」
住所:石川県金沢市青草町88 近江町いちば館1F
電話:076-224-3867
営業時間:9時~17時(11月・12 月の日曜・祝日は14時まで)
休み:日曜・祝日(11月・12月は無休)
※取り寄せる際は電話で相談を。加能ガニ1杯10,000円〜、香箱ガニ1杯1,000円〜(価格は時期や天候によって変わります)。
※本記事は雑誌『和樂(2022年2・3月号)』の転載です。お出かけの際には最新情報をご確認ください。
撮影/石井宏明 構成/藤田 優