「ディオール」は今年5月、最新ハイジュエリーコレクションを発表。その第1章「ディオラマ」の、絵画を思わせる詩情豊かな世界が、比類なきサヴォアフェールによって夢のように表現されました。愛らしい動物たちが、私たちを宝石の森へと誘います。
宝石の輝きに彩られた「トワル ドゥ ジュイ」の世界
「ディオール ファイン ジュエリー」クリエイティブ ディレクターのヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌは、宝飾界で20年以上にわたり注目され続ける稀代のジュエリーデザイナーです。彼女の想像を超える斬新なクリエイションは、いつも私たちを驚かせ、魅了してきました。
そのハイジュエリーコレクションの多くは、これまでメゾンの創設者であるクリスチャン・ディオールの人生とクチュールの作品が着想源でした。しかし、今年5月に発表されたハイジュエリーコレクション『ディオラマ&ディオリガミ』では、彼が愛した世界をさらに探究し、独創的なデザインへと昇華させています。
その第1章『ディオラマ』は、フランスのアール・ド・ヴィーヴル(暮らしの美学)の伝統を象徴するファブリック「トワル ドゥ ジュイ」からインスピレーションを得ています。この織物は18世紀のフランスで生まれ、動植物や人を意匠化したロココ調の模様が、室内装飾用の生地として人気を博しました。なかでも田園風景のデザインは、王妃マリー・アントワネットが好んだことで知られています。
そして、「トワル ドゥ ジュイ」はメゾンとのゆかりも深く、〝ディオール〟初のブティックの装飾にも用いられました。ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌは、その素朴な世界を「トワル ドゥ ジュイ」に倣い、ほぼ単色で表現。創設者の愛したミリー・ラ・フォレの森を散策し、そこに暮らす動物たちを美しい景色とともにミニチュア化し、ジオラマのようなハイジュエリーをつくり上げたのです。
鮮麗な宝石の森で遊ぶ仔鹿やキツネ。木の上にはふくろうが現れ、湖には白鳥が舞い降ります。動物たちの愛らしい姿は、様々な宝飾技巧を駆使することで表現されました。そのなかでも注目すべきは、宝石に彫刻を施す「グリプティック」と金属に彩色する「ラッカー」の職人技でしょう。そのほかにも樹皮をリアルに再現する金工技、多彩な石留めの技巧も使われました。その詩情豊かな美しさは、私たちをクリスチャン・ディオールが生涯愛した豊かな森へと誘います。
白鳥が舞い降りる冬の湖を繊細な色彩と細工で描いて
ジオラマのように立体的でドラマティックな景色
桜色から真紅に変化する艶やかな森の色彩を纏って
物語の挿絵を思わせるブレスレットの詩的な意匠
夜の森で戯れる白狐たちの愛らしくも神秘的な姿
彫金とジェムセッティングの職人技が生む幻想の世界
動植物に生命を吹き込んだグリプティック、彫金、ラッカー、エナメルの技法
本コレクションでは、動植物の生き生きとした姿を表現するために様々な宝飾技巧が用いられました。なかでも動物のモチーフには、グリプティック(宝石を彫刻する技巧)や金細工の伝統技が細部に使われています。形づくられたモチーフはラッカーやロンドボス(金属像の表面に施すエナメル技法)によってリアルに彩色され、まさに生命を得たかのように…。また、花のモチーフには宝石のカットに合わせて多彩なセッティング技術が駆使されました。このコレクションにおいては、宝石を留める爪さえもデザインの大切な一部になっているのです。
お問い合わせ先/クリスチャン ディオール 0120・02・1947
撮影/小野祐次 コーディネート/鈴木春恵
※文中のPTはプラチナ、YGはイエローゴールド、PGはピンクゴールド、MOPはマザーオブパール、ctはカラットを表します
※価格表記はすべて税込み価格です
※本記事は『和樂』2024年10,11月号別冊付録の転載です
※価格は2024年9月1日時点のものです
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