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2025.08.14

なぜ鎌倉の大仏は外にいるの? 25円の五重塔&幻の茶碗も! 【びっくり! 国宝事件簿 その1】

昭和25(1950)年制定の文化財保護法で定められた国宝。75年の歴史を経て、国宝にまつわるさまざまな背景がわかってきました。そこで、「国宝事件簿」前編では、旧石器時代から鎌倉時代までの国宝の数奇な物語をご紹介します!

国宝事件簿1
明治時代になって、激安で売られた国宝があった!?

→興福寺五重塔が当時、25円で落札されたという噂が

天平(てんぴょう)2(730)年、光明(こうみょう)皇后の発願(ほつがん)で建立された奈良市の興福寺五重塔。
以後、5回の焼失、再建を繰り返してきた塔は、明治元(1868)年の「神仏分離令」の発布とともに始まった、仏教を排斥(はいせき)し仏像や仏具などを処分する「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」運動に遭い、存亡の危機を迎えます。
そんな折、興福寺五重塔が25円で落札されたという噂が(!)。
買い主は塔の金具の再利用を目論んでいたとされますが、結局、計画は破綻(はたん)したとか…。
金額を含めてこの噂の真相は明らかではないのですが、古くから奈良のシンボル的存在であった五重塔に対して、当時の人々がどれほど心配していたのかをうかがい知ることができる〝事件〟でした。

興福寺五重塔は現在、明治時代以来120年ぶりの大規模な保存修理工事中。覆屋(おおいや)に囲われていて残念ながら見られません。

国宝事件簿2
外国製で、もう日本にしか残ってない国宝があるとか…

→中国伝来の茶碗「曜変天目」は世界中で、日本にある3点だけ!

室町時代に盛んになった茶の湯で、最高峰の茶碗とされたのが、12~13世紀の中国・南宋(なんそう)時代、福建省(ふっけんしょう)の建窯(けんよう)で焼かれた「曜変天目(ようへんてんもく)」。
窯変(ようへん)によって黒釉(こくゆう)に現れた多彩な斑文が特徴で、やがて「曜変」と書かれるようになりました。
「曜変天目」は世界中に3点しかなく、東京の静嘉堂文庫美術館、大阪の藤田美術館、京都の大徳寺塔頭(だいとくじたっちゅう)龍光院(りょうおこういん)が所蔵。3点とも国宝です。
これらの茶碗は、鎌倉時代初期に中国へ留学した禅僧が土産として持ち帰り、以後も大切にされてきたもの。
中国には今現在、「曜変天目」の完品はひとつも残っていない状態で、日本にある3点は世界的にも大変貴重なものなのです。

国宝事件簿3
鎌倉の大仏はどうしてアウトドアに?

→最初は大仏殿があったのに、天災で失われて…

「鎌倉の大仏さん」と呼ばれて親しまれている、高徳院(こうとくいん)の銅造阿弥陀如来坐像(どうぞうあみだにょらいざぞう)。
造立が開始されたのは鎌倉時代の建長4(1252)年で、完成当初は金箔で覆われていたとか。
屋外に鎮座する〝露坐(ろざ)〟の大仏さんも最初は、大きな大仏殿の中に安置されていました。
しかし、鎌倉幕府が滅亡した後に、この地を相次いで襲った台風や大地震によって大仏殿は損壊。室町時代の明応7(1498)年ごろには〝露坐〟となり、以後、大仏殿が再建されることはなく、現在に至ります。
境内には今も大仏殿の礎石が残っており、その規模の大きさがしのばれます

鎌倉の大仏は像高約11.3m、重量約121t。奈良・東大寺の大仏とともに、東西を代表する大仏。青空に映える姿は露坐ならでは。

国宝事件簿4
貴重な国宝が所在不明になっていた!?

→刀剣2件が確認できなかったが、無事解決!

文化庁公式サイトの「所在不明になっている国指定文化財(美術工芸品)」には、140件以上が列記されています。
なんとそこに、国宝2件が含まれていたことがあったのです(!)。
いずれも個人蔵の刀剣で、一方は所有者の没後、もう一方は所有者の転居後、所在不明になったとか…。
しかし、2件とも所有者の連絡により無事解決。実は、国宝や重要文化財の所有者は転居の際、届け出の義務があるのですが、うっかり忘れていたようです。

国宝事件簿5
いちばん古い時代の国宝は「縄文のビーナス」?

→旧石器時代の「北海道白滝遺跡群出土品」に更新されました!

平成7(1995)年、縄文時代の遺跡の出土品で初めて国宝に指定されたのが、長野県茅野市(ちのし)米沢の棚畑(たなばたけ)遺跡で発掘された「土偶(どぐう)」(縄文のビーナス)。
今から約5000~4000年前のものです。
この土偶が長らく最古の国宝の名をほしいままにしていたのですが、令和5(2023)年に北海道白滝遺跡群出土品(しらたきいせきぐんしゅつどひん)が国宝に指定されると、最古の記録も大幅に更新されます。
旧石器時代のもので、今から約3万~1万5000年前。マンモスの生息時期が約1万年前までなので、気が遠くなるほど昔々の国宝です。

イラスト/田渕周平 構成/山本 毅、後藤淳美(本誌) 
※本記事は雑誌『和樂(2025年6・7月号)』の再編集による転載です。

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和樂web編集部

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