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Fashion&きもの

2025.11.03

イタリア発「ヴァレクストラ」CEOインタビュー|共鳴する日本の美意識とタイムレスなデザイン哲学

1937年、エンジニアだったジョヴァンニ・フォンタナがミラノで創業した「VALEXTRA(ヴァレクストラ)」は、シンプルな美を追求するデザイン哲学と、職人たちの精緻な手仕事によって生み出されるバッグが魅力のブランドです。

この秋加わった新モデル「センソ」と「サブライム」は、卓越した素材へのこだわりをさらに進化させ、より柔らかでしなやかな構造を実現したバッグ。日常使いしやすいサイズで展開されます。 時を超えて愛される、気品と存在感を放つ凛とした佇まい。イタリアと日本の美意識をつなぐ、静かな革新の思想について、来日したグザヴィエ・ルゥジョー(Xavier Rougeaux)CEO(最高経営責任者)に語っていただきました。

「タイムレス」を支えるのは、機能性と美しさの融合

——ヴァレクストラのレザーアイテムの最大の魅力は「タイムレスであること」だと思います。新しいソフトレザーに宿る「タイムレス」なポイントを教えてください。

グザヴィエ・ルゥジョーCEO(以下ルゥジョー) 私はヴァレクストラを「卓越性のブランド」であると同時に、「機能性と美しさの融合」を体現するブランドだと考えています。単に美しいものをつくるためではなく、機能性を備えた「アクセサリー」としての意味を持たせたいのです。つまり、特別な場だけでなく、日常のあらゆる場面で男女問わず持てるバッグをデザインすることが大切だと考えています。

今日の時代において「デイリー」とは、少し控えめでカジュアル、かつ「完璧」なものを意味します。かつては男性にはブリーフケースが好まれた時代もありましたが、今ではスタイルが大きく変わっています。ヴァレクストラもその変化を反映させる必要がありました。

柔らかく、しなやかに。新モデル「Senso」「Sublime」

ルゥジョー そのために、採り入れたのがソフトレザーです。形やボリュームに自然な意味を持たせるには、しなやかさが不可欠だからです。そこで私たちが開発したのが、滑らかで美しいカーフレザーです。自然な処理を施しつつも耐久性があり、私自身、試作品を1年以上愛用していますが、今でも非常に美しい状態を保っています。むしろ使い込むほどに味わいが増していく。だからこのレザーには「Sublime(サブライム)」という名前を付けました。完成までに1年半を要しましたが、使えば使うほど魅力が増す革を目指した結果です。

また、スエード素材にも挑戦しています。同じく新作の「Senso(センソ)」で大切にしたのは「触感」です。「アクセサリー」のデザインとしては、見る人の五感のうち最初に訴えるのは「視覚」ですが、革製品においては「触感」が非常に重要になります。ヴァレクストラのセンソスエードのしっとりとした感触は、ユーザーに対して親密さと官能的な体験を与えてくれます。

この秋から「Senso」と「Sublime」は展開しており、すでに多くのご支持をいただいています。お客様の中には、ヴァレクストラからまさにこうしたものを期待していた方も多かったようです。

日本の美意識と響き合う、静けさと調和のデザイン哲学

——ヴァレクストラには、和装にマッチするアイテムも多くあります。また、日本での販売やPRにも積極的に注力されています。日本文化についてどのように捉えていますか?

ルゥジョー ヴァレクストラの創業者はクリエイティブディレクターではなく、デザイナーであり「エンジニア」でした。彼が生み出したプロダクトには、「純粋さ」「シンプルさ」への探求があり、私たちはプロダクトを訴求する際、「あなたを飾るもの」ではなく、「あなたの個性を引き立てるもの」と伝えています。華美ではなく、静かに品格を宿す——それが私たちの価値観です。この「静けさ」と「調和」という考え方は、きっと日本の哲学にも通じるものではないでしょうか。

また、色彩への感性も共通しているように思います。ヴァレクストラにおける「色」は非常に繊細で、微妙なトーンの違いに私たちは非常にこだわっています。たとえば「ベージュ」でも7つのベースカラーを持っていますが、それらを明確に見分け、それぞれの個性に最も合うものを選び取るお客様は、世界でも日本に特筆して多いように感じます。色のわずかな「揺らぎ」を感じ取る豊かな感性を、日本のお客様の多くがお持ちだと感じます。

さらに、クラフツマンシップと品質へのリスペクト、伝統を守りながら革新する姿勢にも共通点があります。創業者のジョヴァンニ・フォンタナは「完璧」を追求する中で、革製品のコバに光沢を求めました。わずかな欠点も隠せない加工方法をあえて追求したことで、職人たちのものづくりは常に緊張感に満ちています。実際、ヴァレクストラのプロダクトを日本の多くのお客様に楽しんでいただけているのは、こうした私たちの「完璧を求める美意識」に共感していただいているからだと考えています。

2026年春夏シーズンの新モデル「イジィデ エディター」

伝統と革新、静けさと躍動。日本文化からのインスピレーション

——和装をされたこともあるそうですが、これまでどのようなインスピレーションを日本文化から得ましたか。

ルゥジョー 日本の都市の雰囲気、伝統工芸、芸術すべてが刺激的ですが、フランス出身の私としては、やはり日本食に大きなインスピレーションを受けていると思います。フランス料理が多くの素材を組み合わせて新しい味を創るのに対し、日本では一つの素材の味を極めることに最高の贅沢を求めます。新鮮な魚や野菜、素材そのものの自然な味を引き出すこと。そこにある「簡素の中の洗練」は、日本を訪れて料理を口にするたびにいつも驚かされます。

その一方で、和装と現代ポップカルチャーが融合したイベントなども非常に面白いと感じました。伝統と革新、静けさと躍動。いずれも相反する要素が生み出す「緊張感」こそが日本における文化の創造の源ではないかと感じました。また、個人的なことを言えば、私は漫画が大好きで、日本文学や映画にも大いに影響を受けています。特に日本の映画の美しさ、構成の緻密さ——どれも私の感性に響くものばかりです。

2026年春夏シーズンの新モデル「イジィデ ティン」

「時間に耐えるブランド」であり続けるために

——就任から約5年を迎え、CEOとしてこれからどのようなチャレンジを考えていますか。

ルゥジョー 私はまだヴァレクストラでやるべきことの「始まり」のフェーズにいると思っています。現代では流行の移り変わりの速さばかりに目が向きがちですが、私は「時間に耐えるブランド」であることを最も重視しています。次の世代まで続く価値を育てること——それが使命だと思っています。

そのうえで、具体的に取り組むべき事柄を挙げるとすれば、男性への訴求でしょうか。これからは男性にもヴァレクストラを愛していただけるように拡張していきたいと思います。
また、今後はレザーグッズの枠を超えて、「ライフスタイル」全体へとアイテムを広げていく構想もあります。すでにいくつか発表していますが、トラベル向けアイテムなど、より生活に寄り添う製品をさらに展開していきます。来年には新しいラゲッジラインも登場予定です。まだまだ挑戦は続きます。

【グザヴィエ・ルゥジョー】
ヴァレクストラ最高経営責任者(CEO)。ラグジュアリーのプレタポルテ、シューズウェア、アクセサリー分野において20年以上にわたり国際的なリーダーシップを発揮し、2021年にヴァレクストラのCEOに就任。ミラノに根ざした同ブランドのレガシーをさらに高め、「美を構築する」という理念を力強く推進している。
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和樂web編集部

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