毎年この時期になると目にするのが、宝塚音楽学校受験のニュース。
以前は校舎の前に合格者が掲示され、一斉に歓喜の声が上がるシーンが印象的でしたが、コロナ禍をきっかけに完全にwebでの発表に切り替わり、時代の流れによる変化を感じます。
宝塚OGの私も、当然ながら宝塚音楽学校を受験しているのですが、それももう22年前! 随分と昔の話になりますが、今回は宝塚音楽学校の受験について振り返ってみたいと思います。
受験スクールに飛び込んだ、16歳の夏
幼い頃からクラシックバレエを習っていたものの、宝塚に出会ったのは中学2年生、宝塚音楽学校の受験を志したのは高校1年生の時でした。高1の夏休みに受験スクールの夏期講習を受講すると、すぐに入会を勧められ、あれよあれよと、その年に受験することに!
それから音楽学校に合格するまでの7ヶ月間、その受験スクールに通いました。
そこで目にしたのは、それまで通っていた、地元のバレエスクールや、共学の高校とは全く異なる雰囲気と緊張感。
「みんな本気で宝塚に入るために必死なんだ!」と、スイッチが入りました。
学校ではのほほんと過ごしているのに、受験スクールに行く時は全く別の女の子になって戦場に行くような感覚。
当然ですよね。学校の友達よりも5年くらい早く“就職試験“を受けようとしているのですから。

私にとって他の受験生と違ったのは、双子の妹と一緒にレッスンに通えたこと。互いに心強い存在でした。
ごくたまにレッスンの後、緊張から解放された私と妹で、アイスを半分ずつ食べるのが最高のご褒美だったのを覚えています。
人生で初めて、極限まで緊張した日
年が明け、受験が近づくと、レッスンをしても練習しても気持ちがソワソワ。居ても立ってもいられず、受験日までのカレンダーを手作りして1日が終わるごとに×印をつけてはカウントダウンする日々。
ついには「宝塚に入れなかったら私の人生には意味がない!!」と泣きじゃくって母を困らせてしまいました……。
命をかけて産んで育ててくれた母親にそんなことを言うなんて、今思うと本当に申し訳ないですよね。当時16歳とはいえ、視野が狭かったです。

いよいよ受験日が来て受験会場に行くと、本科生(音楽学校の一年先輩にあたる方々)が声をかけてくださったり、控室がとても賑やかで驚いた記憶があります。その控室でひとり黙々とウォーミングアップしていたら、隣の子に脚が盛大にぶつかってしまい、平謝り。やっぱり視野が狭い(笑)!
「いいよいいよ〜! 怪我してないし大丈夫だよ!」とおおらかに許してくれたその子は、のちに同期になり組配属も同じに。とても仲良しになりました。この時のことは、“運命のパンシェ※事件”と呼んでいます。
試験では、バレエを踊りながら「緊張で顔って震えるんだ……」と思ったことを22年経った今でも忘れられません。
あんなにも緊張したのは人生で最初で最後では?と思います。
合格発表でも、緊張とパニックで自分の番号をなかなか見つけ出せず。同じく合格をした妹と母が先に喜んでいて、私の番号をやっと見つけた時にはみんなの喜びの波がおさまっていました。最後まで視野が狭い16歳の蘭乃はなでした……。
いま、受験生を教える立場として
2023年から、宝塚受験サポートクラス『jeunesse』の講師を担当しています。宝塚時代から尊敬している先輩・瀬奈じゅんさんが教室を立ち上げる際にお誘いくださり、二つ返事で参加しました。

後列列左から/千田真司さん、羽咲まなさん、玲実くれあさん
前列左から/舞城のどかさん、瀬奈じゅんさん、蘭乃はな
女性陣は、全員宝塚OGです
瀬奈さんが「宝塚受験に携わる以上、“宝塚音楽学校に合格する”という目標はもちろんあるけれど、どの生徒にとっても、その先の“宝塚受験後の人生”へとつながるレッスンにしていきたい」と語った言葉に、私を含む講師陣は深く心を打たれました。
私が瀬奈さんとよく議題にするのは、<多様性>という言葉が浸透している現代の価値観の中で、宝塚音楽学校に合格する=宝塚歌劇団の人材ニーズに応えるということは、とても難しい、ということ。
人材を育てる前提として、<ありのままのあなたで良い>という考え方も大切にしたいけれど、それに相反して宝塚OGとして<タカラジェンヌに求められること>をあまりにも深く理解している……。生徒本人の魅力を失わず個性を尊重しながら、タカラジェンヌに近づくにはどうアドバイスしたらいいか、ということを常に話し合っています。
受験生、そして“16歳の私”に伝えたいこと
本音で言えば、全員が願うとおりに宝塚音楽学校に合格してほしい。けれど、40人という合格枠を思えばそうはいきません。その中で、私が生徒一人一人に伝えていることがあります。それは……
「あなたは最高に魅力的な女の子である」ということ。
いま現在、宝塚に入りたいと思っている子にとっては「そんなこと関係ないから宝塚に入りたい!」と思うかもしれません。きっと“16歳の蘭乃はな”もそう言うと思います(笑)
ですからこれは<言葉の種まき>として、生徒に伝えています。
宝塚に入ったとしても、入らなかったとしても、「あなたは最高に魅力的な女の子である」という言葉を、ふとした瞬間に思い出してほしい。知らず知らずのうちにこの言葉が芽を出して育ち、なにかに悩んだり傷ついたりした時は、きっと心の支えになるから。
これは、受験生みんなに届けたい言葉でもあり、“16歳の蘭乃はな”に届けたい言葉でもあるのです。
花のみち※にも桜が咲きはじめました。今年はどんなドラマが待っているのでしょうか。
受験生の皆さん、そして読者の皆様に、美しい春が訪れますように。


