Craftsmanship

2026.06.21

日本全国を取材して、旅して、出合った! 和樂スタッフの「推し民藝」【北海道・東北・関東】

47都道府県にはそれぞれ、真摯(しんし)につくられる日常の道具類や郷土玩具などが今もたくさん受け継がれています。仕事柄さまざまな土地を訪れる機会や、つくり手に会うことも多い和樂スタッフが、その地で魅了され、今も愛用している品々を4回に分けてご紹介します。まずは、北海道、東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)、関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川)の14都道県の「推し民藝」をご紹介します!

【北海道】

アイヌ刺しゅうのブックカバー

先住民族アイヌの人々が、衣服や身の回りの品々に施してきた伝統文様による刺しゅう。魔除けなどの意味をもつ。

「札幌の地下街で開催されていたイベントのショップで見つけて購入。シンプルだけれど力強い文様が素敵」(高橋)

【青森】

こぎん刺しの針山

津軽地方の伝統的な刺し子。麻布に綿糸で幾何学(きかがく)文様などを刺す。こぎん刺しゅうとも。

「赤いりんごと伝統的な図案による、両面使える針山。いただきもので、私の好みを熟知していると感激! 刺し子の品は自分でも挑戦できる民藝だと思うのでつくってみたいです」(小竹)

【岩手】

南部鉄器(なんぶてっき)いろいろ

盛岡(もりおか)市、奥州(おうしゅう)市を中心に生産される鉄器。起源は17世紀初頭に遡(さかのぼ)る。国の伝統的工芸品に指定。

左:「『釜定(かまさだ)』の鉄瓶を愛用中。丈夫で形が美しい。水もおいしい! 買った当時は1年待ちでしたが、待ってでも手に入れた甲斐がありました」(藤田)
左から2番目:「我が家のすき焼き鍋としてなくてはならないのが『釜定』の組鍋(くみなべ)。大中小と重ねて収納できます。美しく、使いやすく、洗いやすくて長もち。北欧に住んだこともある3代目のデザインだと聞いています」(福田)
3番目:「『釜定』の栓抜き。デザインが素晴らしいので壁にかけて飾っています」(鈴木)
4番目:「陶器の豚じゃない蚊やり器を探していたときに見つけたのが『OIGEN(及源鋳造)』の手まり蚊やり。床に置いた景色がものすごくいい!」(小竹)

【宮城】

こけし

県内の湯治場(とうじば)で、木地師が椀や盆を制作する傍ら、湯治客の土産物としてつくったのが始まりというこけし。東北地方にある11系統の伝統こけしのうち、5系統が宮城県にルーツをもつ。

「東北民藝の象徴ともいえるこけし。地方ごとにお顔やおきものの柄に特徴があります。これはどちらも宮城県白石(しろいし)市の弥治郎(やじろう)系こけし。太いほうは中に小さなこけしも入っていて、 鎌田孝志(かまたたかし)さんという工人(こうじん =こけしをつくる人のこと)さんの作。スリムなこけしの工人は佐藤美奈雄(さとうみなお)さんです」(高橋)

【秋田】

大館(おおだて)曲げわっぱの弁当箱

天然の殺菌作用や吸湿性に優れた秋田杉を使った曲げもの。江戸時代に下級武士の貧困を解消するため、大館城主によって製作が推奨された。

「大館市に古くから伝わる曲げわっぱの技法を伝える『柴田慶信商店(しばたよしのぶしょうてん)』で購入。お弁当箱だけでもデザインが数種類ありますが、これはオーソドックスな形。山歩きをするときなどに使っています」(高橋)

樺細工(かばざいく)の茶筒

仙北市角館(せんぼくしかくのだて)を中心に伝わる伝統的な木工芸。素材は樺ではなく、湿気を嫌い乾燥を防ぐ特性をもつ山桜の皮を使用する。

「20代のころ初めて角館へ旅行したときに購入しました。今も茶葉を入れて使っています。よく手で触るため、胴の部分が輝いてきて、愛着が増してきました」(高橋)

【山形】

かんじき

木の枝や蔓(つる)などを曲げて円形にして爪をつけた、深雪に足を踏み込まないように靴の下に結び付ける道具。

「雪深い土地ならではの竹のかんじきは、東北各地の金物屋さんで見かけます。現代のスノーシューのほうが歩きやすいのかもしれませんが、小型で持ち歩きしやすいのがいいと思い、山形に住んでいたときに購入。使わないまま東京に戻ってきたので、棚に飾っています」(高橋)

【福島】

ヒロロ細工のバッグ

雪深い奥会津(おくあいづ)地方に伝わる編み細工。ヒロロとは、山野に自生するミヤマカンスゲのこと。刈り取った青葉を湯通ししてから天日で干し、細かく裂いて手のひらで綯(な)って縄状にしたものを編む。しなやかで弾力があり、使い込むほどに味わいが増す。

「奥会津では山葡萄(やまぶどう)やあけびの蔓のバッグなど、植物系の編み籠が昔からつくられています。奥会津を旅したときに地元のつくり手さんたちの展示会に遭遇し、ひと目惚れして譲っていただきました。蔓のバッグより軽やかに使えます」(高橋)

【茨城】

結城紬(ゆうきつむぎ)のきもの

結城市を中心とする鬼怒川(きぬがわ)沿いの地域で生産される絹織物。真綿から手紡ぎした糸で織り、地質(じしつ)は堅牢(けんろう)で、絣(かすり)や縞(しま)を主柄とする。重要無形文化財。

「30年近く前に購入したきもの。手紡ぎ、手くびり、地機織(じばたおり)という厳格な規格の本場結城紬ではありませんが、当時の私には十分高価! だからというわけではないけれど、いちばん着ているので体にしっくりなじむようになりました」(小竹)

【栃木】

益子焼(ましこやき)のうつわ

益子町で産する陶器。嘉永(かえい)6(1853)年ごろから一帯で日用雑器を焼いていたが、大正末期に濱田庄司(はまだしょうじ)が窯を開いて独自の作風で製作を始め、益子は陶器の郷として知られることに。

「ヨーロッパの文様を思わせる柄に一目惚れ。民藝でもよく用いられる装飾技法、いっちんによるものです。照りのいい飴色で程よい深さもあり、果物やおひたしなどを控えめに盛りつけると映えます。2枚欲しかったけれど、その店での最後の1枚でした」(福持)

【群馬】

高崎(たかさき)だるま

江戸時代発祥の、高崎市で生産される縁起物のだるま。眉毛が鶴、ひげが亀の形を模しているのが特徴。

「少林山達磨寺(しょうりんざんだるまじ)9代目和尚が飢饉で苦しんでいた農村の人たちにつくり方を伝授したのが高崎のだるまのはじまり。100年続く『深谷(ふかや)だるま』で絵付け体験をしたときのもので、顔の模様を描いて開運招福と家内安全の願いと自分の姓を入れました」(高橋)

【埼玉】

江戸木目込人形(えどきめこみにんぎょう)の招き猫

江戸時代中期に京都で発祥し、江戸で独自の発展を遂げた伝統的な人形。桐の粉などを固めたボディに溝を彫り、そこに布地の端を木目込んで(押し込んで)衣裳を着せる技法が特徴的。

「雛人形などで幼少期から親しみのある民藝。これは、かつて和樂が川越の『柿沼人形(かきぬまにんぎょう)』とコラボしてつくった招き猫です。タータンチェックが斬新ですが、木目込む生地によってこんなに表情が変わるのかと、自由度の高さを実感しました」(湯口)

小川和紙のカレンダー

比企郡小川町(ひきぐんおがわまち)や秩父(ちちぶ)郡東秩父村で生産される和紙。かつて柳宗悦(やなぎむねよし)らが、未晒(みざら)しの楮(こうぞ)の色合いや、原料を叩いて繊維をほぐす伝統製法を守るよう助言。重要無形文化財。

「埼玉伝統工芸会館で出合った小川和紙。強くて丈夫、毛羽立ちにくいのが特徴だそう。優しい触り心地と、控えめな光沢が美しい」(田中)

【千葉】

張子細工(はりこざいく)

鴨川(かもがわ)市にある日蓮聖人(にちれんしょうにん)降誕の地といわれる誕生寺(たんじょうじ)。ここで古くから親しまれている郷土玩具が、鮮やかな朱色が目を引く「願満(がんまん)の鯛(たい)」という縁起物の張子細工。柳宗悦など民藝運動の指導者たちは、こういった“信仰から生まれた郷土玩具”にも深い関心を寄せた。

「誕生日に旅行先で通りかかったのがまさかの誕生寺。そしてこの願満の鯛と出合い、これはきっとすごい幸運が…と確信しました。元気で明るく天真爛漫な感じが好きです」(鈴木)

【東京】

江戸箒(えどほうき)

実用性と美しさを備えた江戸職人の技が光る道具。質の高いホウキモロコシを使い、根元を麻糸や竹でしっかり編み込んで機能を追求。

左:「10年以上箒を使って辿り着いたのが『白木屋傳兵衛』の江戸箒。穂先の角度や柄(え)の長さが絶妙です。国産草が◎」(藤田)
右:「洋服の塵(ちり)を掃(はら)ったりする『白木屋傳兵衛(しろきやでんべえ)』の小箒。テーブル上の屑もよく掃(は)けて全然へたれません!」(古里)

【神奈川】

鎌倉彫(かまくらぼり)の盆

中国から伝わった手間のかかる漆芸の技法を、木彫りしてから漆を塗ることで簡便化した鎌倉彫。大仏師(だいぶっし)・運慶(うんけい)の孫にあたる康円(こうえん)に始まるといわれる。茶道具として珍重されたのち、江戸時代に盆や手箱など庶民の生活用品として広まった。

「半年ほど前に文様が気に入って古道具屋で購入した、鎌倉彫の老舗のものと思われる丸盆。毎日せっせと使っているので、経年変化が楽しみです」(小竹)

●和樂スタッフ(と周辺の人々)紹介
遠藤智子(絶賛和樂web進行中!)/國藤直子(美容女将)/小坂眞吾(落語命)/小竹智子(スポーツ観戦狂)/後藤淳美(大のバレエ&犬好き)/鈴木智恵(ヘンテコマニア)/高木史郎(究極の職人気質)/高橋亜弥子(北へ南へ、渡り鳥人生)/田中美保(在・鎌倉)/新居典子(歌舞伎番長)/福田葉子(薩摩おごじょ)/福持名保美(休日は劇場通い)/藤田優(ミニマム生活の食いしん坊)/古里典子(愛嬌のある品が好き)/山本毅(二拠点生活の料理上手)/湯口かおり(ファッション畑から出張中)/吉川純(152cmのおしゃれさん)

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※紹介している商品は一部を除き私物です。一点ものや現在は入手できない品もあります。
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和樂web編集部


撮影/小池紀行・池田 敦(CASK) 構成/小竹智子
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