Craftsmanship

2026.07.12

民藝の現場を訪ねました!【1】軽やかで美しい型染が生まれる「染色工房 幟屋」(広島)

昔ながらの産地で伝統技術を守り続けることも、産地にこだわることなく“個”としてものづくりを行うことも、どちらも“101年目の民藝”のつくり手さんのあり方です。まずは広島で、自由に軽やかに、そして健やかに型染を手がける「染色工房 幟屋」の染色家・石北有美さんの工房から!

日常をカラフルに彩る型染の色とかたち。「染色工房 幟屋」染色家・石北有美さん

全国の民藝の品々を描いた風呂敷のデザインを見せてくれる石北さん。

グラフィカルなデザインを表現する染色の手仕事

花や葉っぱ、小鳥や魚などが描かれた大胆なデザインとビビッドな色。
「染色工房 幟屋(せんしょくこうぼう のぼりや)」の石北有美(いしきたゆみ)さんの型染(かたぞめ)の布を見ると、「わぁ!」と心が躍ります。
石北さんが手がけるタペストリーや手ぬぐいを、全国の民藝店やギャラリー、ミュージアムショップで見かけたことがある人も少なくないのではないでしょうか。

「染色をはじめたのは、女子美術大学に入学してからです。卒業後は故郷に戻ってグラフィックデザイナーとして働いていたのですが、20年ほど前から染色の制作をはじめました。
公募展の『国展』や『日本民藝館展』に出品して入選すると、民藝を扱うショップやギャラリーの方々から『個展をしませんか?』とお声がけいただくようになりました」(石北さん、以下同)

染色の仕事をはじめたときは、バッグなどの小物を手がけることが多かったそうですが、民藝と関わるようになると、少しずつ制作するものが変わっていったのだといいます。

「民藝にまつわる仕事が増えてきて、暮らしの中で使うものを多く手がけるようになりました」(石北さん)

ポップな色とデザインの布はテーブルセンターやのれんとして。ときおり帯を制作することも。

「沖縄のやちむんや大分の小鹿田焼(おんたやき)など民藝のうつわを食卓に取り入れることが増えて、民藝のうつわに合う布はどのようなものなのかを考えるようになりました。
テーブルセンターやのれんなど、暮らしの中でインテリアを豊かにしてくれるものの制作が、自然と増えてきました」

そう笑顔で語る石北さんのイメージそのもののようなカラフルな布は、まさに民藝の美意識といえる、気負いのない健やかさを感じさせます。
デザインを考え、型紙をつくり、染色、仕立てまでを手仕事で行う石北さん。
パソコンでデザインすれば、インクジェットで染色できるテキスタイルが主流の現代において、型染の布にこだわるのはなぜ?

「型紙を使ったり、糊を使ったり、手仕事でつくられたもののほうが味わいがあるし、愛着が湧くのではないかと思って。
私が女子美の学生だったときは、大学院で柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)先生が教えていらっしゃいました。
若いころに民藝の思想に出合われた柚木先生も、グラフィカルな色とかたちで時代の最先端の表現をされました。
私も型染という技法を大切にしながら、新しいものを目ざしていきたいです」

左/バナナの葉のモチーフを和紙に型染して、香川県の丸亀(まるがめ)でうちわに仕上げられる、石北さんの型染のうちわ。「銀座たくみ」(http://ginza-takumi.co.jp/)に毎年夏に並ぶほか、全国の民藝店で人気。右/民藝店やミュージアムショップに並ぶ手ぬぐい。

工房での型染作業を拝見!

左/築170年ほどの古民家が石北さんの工房。染料(せんりょう)を刷毛(はけ)で刷り込んで染めていく「色挿(いろさ)し」の作業。右/型紙を使って布地の上に防染糊(ぼうせんのり)を置いて、模様を染める。

左/型紙を手で彫っていく細かな作業。中・右/金魚のデザインのうちわを制作。石北さんの息子の一海(かずみ)さんが色付けを担当する。

左/石北さんの兄である秀尚(ひでなお)さんも共に作業を行う。中/さまざまな大きさと種類の刷毛が並ぶ。右/「のれんをつくっていたら、“幟屋さん”と言われたので、屋号にしました(笑)」(石北さん、以下同)

左/顔料(がんりょう)や染料で布を染める。赤、青、黄、黒などの顔料を調合して色をつくり、布にどのように染まるか、試し染めするのも大切な仕事。右/「同じように型を置いて、同じように染めても、微妙な色の違いやにじみがあって、ひとつとして同じものができないのが面白いです」

左/小鹿田焼のピッチャーに入れているのは、細い竹の棒の両端に針が付いた「伸子(しんし)」という道具。壁に貼った色見本は学生時代につくったもの。右/竹の伸子を付けて、生地のシワをのばす。

●染色工房 幟屋

2026年夏は、阪急うめだ本店(大阪)のポップアップショップの後、日本橋髙島屋(東京)で開催される民藝展(8月26日〜9月7日)のショップで作品が並ぶ予定。
公式サイト:https://noboriya.net/

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
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和樂web編集部


撮影/尾嶝 太 構成/高橋亜弥子、古里典子(和樂)
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