麦わら手、馬の目、三彩……長く使い続けたい定番のうつわ。「瀬戸本業窯」陶工・水野雄介さん

先人の思いをつなぎ民藝の“今”を伝える
“せともの”といえば、やきものの代名詞であるように、愛知県瀬戸(せと)市は、古くから陶器の生産地として知られる場所。
しかし、昭和の高度成長期には、瀬戸の多くの窯元が機械化・工業化により、手作業のものづくりから離れていったといいます。
瀬戸本業窯(せとほんぎょうがま)がそうした状況の中でも手仕事を守り続けたのは、六代水野半次郎(みずのはんじろう)さんが民藝と出合い、瀬戸の伝統的なものづくりを大切にしたからでした。
六代半次郎さんの孫である八代後継(はちだいこうけい)の水野雄介(みずのゆうすけ)さんが教えてくれます。
「第二次世界大戦後、生活用具がやきものや漆器からプラスチックなどの工業製品へと変化していくなかで、祖父は柳宗悦(やなぎむねよし)先生や濱田庄司(はまだしょうじ)先生、バーナード・リーチ先生といった民藝運動の方々に出会い、大きな励みになりました。
祖父が大切にした民藝の思想は、瀬戸本業窯がいつも立ち返る原点となり、私の父の七代半次郎も、時代の変化にのまれることなく、手仕事を続けてきました」(水野さん、以下同)
「柳宗悦さんや濱田庄司さんたちと祖父との出会いは大きな励みとなり、今につながっています」(水野さん)

2022年、瀬戸本業窯は六代半次郎さんが蒐集(しゅうしゅう)した瀬戸のやきものや日本各地の工芸品を展示する「瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム『瀬戸民藝館』」を開館しました。
先代の思いを次世代へとつなぐ場所をつくるために、情熱の限り尽力した水野さん。
「実は今、やきものの原料である粘土が全国的に枯渇してきています。
自然の土には限りがある。いつまで国内の土でつくることができるのか――。民藝の未来、仕事や社会のあり方など考えることがたくさんあります。
SNSなどによって、全国各地のつくり手さんや配り手さんたちとつながることができる時代にあって、僕たちの世代は、自分だけがよければいいということではなく、みんなで現状や環境を共有し、一緒に考えていこうという意識をもつようになってきていると思います」
土、木、草花、水……自然の素材でつくられる民藝の品々、それに関わる人々。
どれほど貴重でかけがえのないものが守り続けてこられたのか、あらためて気づかされる、水野さんの“101年目の民藝”の言葉です。
手仕事のせとものができるまで




●瀬戸本業窯
公式サイト:https://seto-hongyo.jp/


瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム「瀬戸民藝館」は、瀬戸本業窯と民藝の美意識が詰まった空間。六代水野半次郎と柳宗悦や河井寛次郎(かわいかんじろう)たちとの交流を感じることができる。
瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム「瀬戸民藝館」
住所:愛知県瀬戸市東洞町17
営業時間:10時〜16時(最終受付)
休み:月曜〜水曜(祝日は営業)、不定休あり
公式サイト:https://www.setomingeikan-museum.jp/

「瀬戸民藝館」にある「薬膳茶 SoybeanFlour」では瀬戸本業窯のうつわでいただくランチが人気。右は季節の野菜をのせた馬の目皿(うまのめざら)。
薬膳茶 SoybeanFlour
営業日時:土・日曜11時〜16時
休み:月~金曜、不定休あり
公式サイト:https://soybeanflour.official.ec/

