三井記念美術館 ~8/30
特別展「京都・真如堂の名宝」
私が担当します
三井記念美術館 学芸課長 海老澤(えびさわ)るりは さん

専門は日本彫刻史。特別展「バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰」、特別展「円空仏」などを担当。
真如堂に焦点を当てた展覧会は初! 貴重な仏像、絵画、経典などが一堂に(海老澤さん)
真如堂は京都の洛東、送り火で知られる大文字山(だいもんじやま)の麓(ふもと)にある隠れ寺。
創建は平安時代という天台宗の古刹で、正式名称は「鈴聲山(れいしょうざん)真正極楽寺(しんしょうごくらくじ)」。「正真正銘の極楽の霊地」の意味が込められており、本堂「真如堂」が通称となっています。
「比叡山(ひえいざん)の戒算上人(かいざんしょうにん)によって開かれたのが永観(えいかん)2(984)年。
応仁の乱によって伽藍(がらん)が焼失、その後も移転や火災を繰り返して、現在の地で再興されたのは江戸時代のことです。
場所を転々とするなかで失われてしまったものも多いのですが、本尊の阿弥陀如来立像(あみだにょらいりゅうぞう)は、比叡山の高僧・慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)の自刻と伝わり、開創以来大切に守られてきました。
年に一度だけ開帳される秘仏で、今回のお出ましはありませんが、比叡山修行僧の本尊となることを首を振って拒否し、『それでは京に出て、すべての人々、特に女性をお救いください』と円仁がお願いすると、三度うなずいたという伝説をもつ『うなずきの弥陀(みだ)』です。
さらに、その後しばらく比叡山でまつられていたところ、戒算上人の夢枕に立ち『急いで京に下山させるべし』と告げられたとか。想いの強い、行動力のある仏さまだと感じ入りました」(海老澤さん、以下同)
今回は、真如堂創建期にあたる「10世紀後半から11世紀初頭の仏像」にも着目。この時期に比叡山と都で制作された作例を紹介します。
「平安時代前期の重厚な作風から穏やかな和様(わよう)へ移行する時期で、両方の特徴が見られます。
京都・因幡堂平等寺(いなばどうびょうどうじ)の重要文化財『薬師(やくし)如来立像』は、展覧会へのご出陳はほとんどない、個人的にぜひご覧いただきたい仏像です。
こちらも、因幡の海の中から引き揚げられ、その後京都まで飛んでいらっしゃったという伝説をおもちです」
江戸時代には三井家の祖・三井高利(みついたかとし)夫妻が檀家(だんか)となり、真如堂は三井家の菩提寺(ぼだいじ)に。深い関わりは今日まで受け継がれています。
「三井家ゆかりの絵画などもご紹介します。どうぞお楽しみに」
Curator’s Eye|鎌倉時代の特徴ある阿弥陀如来立像です
見逃せない! ともに寺外初公開!

「真如堂には、その本尊にちなんで、阿弥陀如来に関する作例が数多く見られます。山内寺院の法輪院(ほうりんいん)に伝来する『阿弥陀如来立像』は、近年の調査で像内から「院蓮(いんれん)」の名と制作年を記した墨書銘(ぼくしょめい)が発見され、院派仏師(いんぱぶっし)の作と判明。真如堂山内の喜運院(きうんいん)に伝わる『阿弥陀如来立像』は、真如堂本尊との構造的な共通点も指摘されています」
Curator’s Eye|運慶の切なる願いが込められた国宝写経
行末には確かに「運慶」の文字が!

「戦火で焼失した南都復興を祈念し、仏師・運慶(うんけい)が願主となって一門で法華経(ほけきょう)を書写した通称『運慶願経(がんきょう)』です。現存する7巻のうち6巻を真如堂が所蔵しています。歴史的な資料としても非常に重要で、人々の想いがありありと伝わってきます」
Curator’s Eye|エピソード満載の真如堂の縁起を伝承
ご本尊が京の町に下りてきた!

「真如堂創建の由来や寺の変遷が描かれた三巻本の絵巻。大永(だいえい)4(1524)年の制作時からほぼ完全な状態で大切に伝えられており、重要な絵巻であったことがよくわかります。画面も色鮮やか、絵と詞書(ことばがき)の展開も非常に巧みで、見飽きることがありません。画像で紹介しているのは、本尊の阿弥陀如来立像が真如堂に入った場面です」
Curator’s Eye|閻魔の前の安倍晴明を不動明王が助けた!?
死なせるの、ちょっと待った!

「真如堂本尊の脇侍(わきじ)の不動明王は、陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)の自邸にまつられていたものといわれています。晴明が不慮の死にあい、閻魔大王の前に引き出された際、不動明王が飛来して命乞いをしたのだそう。蘇生した晴明は85歳まで生きたとか」
楽しい撮影スポットも!

ミュージアムショップ前には、ぬいぐるみやアクリルスタンドを置いて記念写真が撮れるミニチュア撮影スポットを設置。三井本館や、重厚な展示室内が背景ボードになっていて、思った以上に奥行きのあるリアルなスナップに! オススメです。
三井記念美術館 DATA(和樂提携美術館)
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7F
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで。
休館日:月曜日、展示替え期間、臨時休館日、年末年始
公式サイト:https://www.mitsui-museum.jp/
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【和樂 提携美術館】
山形「土門拳写真美術館」、茨城「笠間日動美術館」「徳川ミュージアム」、群馬「原美術館 ARC」、千葉「千葉市美術館」、東京「永青文庫」「太田記念美術館」「菊池寛実記念 智美術館 ※2026年秋(予定)まで展示室修繕のため休館」「五島美術館」「サントリー美術館」「泉屋博古館東京」「東京ステーションギャラリー」「パナソニック汐留美術館」「三井記念美術館」「三菱一号館美術館」「森美術館」「山種美術館」、神奈川「岡田美術館」「川崎浮世絵ギャラリー ~斎藤文夫コレクション~」「ポーラ美術館」、長野「軽井沢千住博美術館」「サンリツ服部美術館」「日本浮世絵博物館」、静岡「MOA美術館」、京都「泉屋博古館」「福田美術館」「細見美術館」、奈良「松伯美術館」「大和文華館」、和歌山「高野山霊宝館」、兵庫「芦屋市立美術博物館」、島根「足立美術館」(都道府県別・五十音順)

