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2019.09.18

【次回のファミリー向けプログラムは9月24日10時受付開始】子供たちのミュージアムデビューに人気の「Museum Start あいうえの」とは?

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2019年3月16日(土)・17日(日)、東京・上野恩賜公園内にある東京都美術館に次々とやって来る小学校1年生~高校3年生までの子供たちとその保護者。お目当ては、子供のミュージアムデビューを応援する「Museum Start あいうえの(以下、あいうえの)」が開催するプログラム「あいうえの日和」でした。

2日間で計4回開催されたプログラムには122組244名のファミリーが参加。子供たちに人気の「あいうえの」とは? 「あいうえの日和」体験レポートと共にお届けします。

上野地区の9つのミュージアムがデビューを応援してくれる!

アーティスト日比野克彦さんデザインのオリジナルバッジ

「あいうえの」とは、上野恩賜公園内にある9つの美術館や博物館などが連携して、子供たちのミュージアム・デビューを応援するプロジェクトの名称です。「ミュージアムでの特別な体験をすべてのこどもたちに届けたい。」という思いで始まったプロジェクトは、上野公園にある美術館や博物館を舞台に、貴重な展示物や文化財に関心を持ち、日常では得られない多様な世界に出会う場が与えられています。

運営チームは、東京都美術館の学芸員と東京藝術大学の大学教員、教育学専門家などで構成。そこに各ミュージアムの専門家と子供たちのパートナーとなる“アート・コミュニケータ(とびラー)”が加わり「あいうえの」の学びの場をデザインしています。

プログラムは大きく分けて3つ。「ファミリー向けプログラム」「学校向けプログラム」そして児童養護施設や経済的に困難な状況にある子供、または障害のある子供を含む多様な子供たちを支えるNPO団体などと連携した「ダイバーシティ・プログラム」があります。

どのプログラムも子供たちの参加は無料。全ての子供がミュージアムに来ることができるよう、ミュージアムへのさまざまな入り口が用意されています。(保護者の入館料・観覧料は各施設の案内ページ参照)

ファミリーで参加できる「あいうえの」とは?

3つのプログラムの中で、個人単位で申し込めるのが「ファミリー向けプログラム」です。今回参加した「あいうえの日和」は、45分間で「あいうえの」をマスターできるというプログラム。ミュージアムでの体験をさらに楽しくしてくれるスターター・キット「ミュージアム・スタート・パック」の活用方法やオリジナルバッジの集め方などを伝授してくれる、ミュージアム初心者のためのプログラムです。

ちなみに、2019年度はプログラムが新しくなったそう。新たなプログラムにも注目です! (ファミリー向けページ公式サイト

「あいうえの」に参加する方法

「あいうえの」のプログラムに参加するには、実施日の約1~2か月前からスタートする事前予約が必要です。

まずは「あいうえの」公式サイトにアクセス。

参加したいプログラムの日程をチェックして、サイト上に用意された申込み専用フォームから子供と保護者のペア1組で申し込みをします。プログラムによっては、対象学年が限定されることもあるので注意してくださいね。

応募者多数の場合は抽選になるため、申し込みを済ませた後は祈るのみ! 申し込み締め切り後、約1週間ほどで申し込み者全員に抽選結果のメールが届けられます。

【体験レポート】「あいうえの日和」に子供と一緒に行ってきました!

プログラム実施会場は東京都美術館


上野駅から会場の東京都美術館までは、「あいうえの」の舞台にもなるたくさんのミュージアムを通り過ぎていきます。上野の森美術館や東京文化会館、世界文化遺産に登録されている国立西洋美術館、噴水の向こうには東京国立博物館を眺めながらスターバックスや遊具のある公園を通り過ぎると、いよいよ東京都美術館に到着です。

東京都美術館の目的の会場に到着するまでも、野外彫刻や模型、パンフレットなど子供たちの気を引くたくさんの誘惑はありますが、ここはグッとガマン! 案内に従って、会場へと進みます。

ミュージアム・スタート・パックを受け取る

画像提供:Museum Start あいうえの

受付に到着して名前を告げると、子供たちには「ミュージアム・スタート・パック」がプレゼント。保護者には子供とのミュージアム体験が倍楽しくなるコツなどが書かれた「ミュージアム・ハンドブック」が配られました。

画像提供:Museum Start あいうえの

席に着くやいなや、パックの中身を取り出す子供たち。あちこちで冊子を広げ「この建物さっきあったよ! 」「ココ行きたい! 」と、さっそく親子の会話が始まります。

アート・コミュニケータ、その名は“とびラー”

画像提供:Museum Start あいうえの

時間になり、いよいよプログラムがスタート。この日、子供たちの活動をサポートしてくれた司会の山﨑日希さん(東京藝術大学 美術学部特任助手 Museum Start あいうえのプログラム・オフィサー)、そして「とびラー」のみなさんの紹介がありました。

ここで、「あいうえの」には欠かせないとびラーについて。

この日のとびラーは、5名。とびラーとは、東京都美術館と東京藝術大学の連携事業「とびらプロジェクト(公式サイト)」に所属するアート・コミュニケータのことをいいます。上野公園内の楽しみ方をたくさん知っていて、子供たちが安心してミュージアムを楽しめるよう寄り添ってくれる活動のパートナーでもあります。

画像提供:Museum Start あいうえの

会社員や教員、学生、専業主婦や退職後の方など、年代も性別も違う多様な人々で構成されているとびラーは、とびらプロジェクトで「基礎講座」や「実践講座」といった学びの場を持ち「あいうえの」プログラムでプレイヤーとして活動をします。学ぶ͡ことや実践することに主体的に取り組むとびラーとの出会いは、子供たちの活動をさらに充実したものにしてくれそうです。

プログラム中のとびラーからの声かけは「これはなに? 」「ここが良いね」と、子供たちを認めてくれたり気づきを引き出す言葉が多く、まさに寄り添ってくれる言葉がけ。これから子供と一緒にミュージアムめぐりをするときの参考に、よ~く聞いてみてくださいね。

ミュージアム・スタート・パックを持ってミュージアム・デビュー

ミュージアムでの体験を楽しくしてくれるミュージアム・スタート・パック

では当日のレポートに戻ります。

とびラー紹介の次は、上野にある9つのミュージアムを紹介する映像を視聴しました。子供たちは興味津々に見入って、どのミュージアムに行くかを考えている様子。

そして映像終了後、みんなで一緒にあいうえのバッグの中身を取り出し、ひとつずつ確認しました。

“ビビハドトカダブック”は9つのミュージアムのガイドブック

ミュージアムをめぐる冒険に持っていく「あいうえのバッグ」の中には緑の「キラキラ特製バインダー」その中には「ビビハドトカダブック」と「冒険ノート」が入っています。なんとも不思議なビビハドトカダブックの名前については、プログラムの当日をお楽しみに!

そのビビハドトカダブックには、上野公園の地図や9つのミュージアムについて掲載されています。各施設の鑑賞ポイントや見どころがまとめられた冒険のヒントのほか、9つのオリジナルバッジについて書かれています。

このオリジナルバッジとは「ミュージアム・スタート・パック」を持って上野公園内の9つのミュージアムに出かけ、それぞれの施設のビビットポイントを探して呪文を唱えることで集めることができるというバッジ。知らないミュージアムにも行ってみたくなる楽しい仕掛けになっていて、子供たちはワクワクしながらどのバッジをもらいに行こうかと話していました。

貼ったり、描いたりと記録を残す“冒険ノート”

青いノートはミュージアムをめぐるときに使う冒険ノートです。チケットを貼ったり、ガイドブックの切り抜きを貼ったりと、子供たちが思い思いに自由に使うことができます。

司会の山﨑さんからは、ミュージアム・スタート・パックの説明のあと、ミュージアムを楽しむコツがたくさん伝授されました。

例えば「あいうえの」公式サイトの「お出かけサポート」に用意されている「ミュージアム・カレンダー」は必ずチェックしておきたいページです。

9つのミュージアムで何がおこなわれているのかがわかるカレンダーで、行きたいミュージアムに絞った検索や、お出かけする日にちでの検索が可能。楽しそうな展覧会やイベントを見つけて、下調べ万全でお出かけしてみてくださいね。

そして、山﨑さんのお話しの中でも印象的だったのが、「初めて行った公園の中を探検するように、ミュージアムの中も探検してみてください。」という言葉。「その中で気になるものがあれば立ち止まって、新たな発見や不思議に思ったことなどをメモしておけば、あとで見返すこともでき、それが学びや思い出につながっていきます。」公園を探検するようにワクワクした気持ちでミュージアムを訪れることが大切なんですね。

実際に冒険ノートを使ってレクチャー

写真提供:Museum Start あいうえの

この日、東京都美術館で開催中の展覧会「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド(以下、「奇想の系譜展」)」に展示されている作品が、会場の壁やホワイトボードにはずらりとアートカードが貼られていました。アートカードとは、美術館などに展示されている作品が印刷されたカードのこと。楽しく遊びながら美術鑑賞への関心を高める教材として用意されたものです。このアートカードを使って、美術館での冒険ノートの使い方がレクチャーされました。

「なんだか良いな」「本物を見てみたいな」など、気になる作品を1枚選び、どこが気になるか、その理由などを冒険ノートに書き出します。

写真提供:Museum Start あいうえの

「このノートにメモしてきてね」のひとことで、子供たちだけで作品へと向かいます。子供たちは真剣そのもの! どの作品にしようかグルグルと歩きまわりなかなか決められない子、さっと決めてすぐにノート作りに取り掛かる子など個性が出る作業でもあったので、見守るお母さんお父さんたちもニコニコとその様子を楽しんでいました。

お母さんやお父さんのところに戻ると「なんでこれにしたの? 」「これ、なんていう題名? 」と、子供たちが選んだ作品についてお話がどんどんと広がります。そして作業がスタート。

写真提供:Museum Start あいうえの

「“いい人”ってタイトルに入っているけど、いい人には見えないこわさだった! 」「すごくこまかい! 」など切り抜きを貼った絵の横に文章にして感想を書く子、ひたすら作品の前で模写をする子、パンフレットを切り抜いてノートいっぱいにとにかく貼る子など、子供によって書き方はそれぞれ。

写真提供:Museum Start あいうえの

とびラーは子供たちの隣で、作業のアドバイスをしつつ、本物の動物と絵の中の動物との違いを聞いたり、この感想すごく良いね! とほめてくれたり、また子供たちの方から出てくる意見や質問を楽しんでいるようでもありました。

そして、みんながあちらこちらで楽しそうに作業をしていると、早くも時間が来てしまい、「あいうえの」でのノート作りは終了となりました。しかし、どの子もまだまだ作業をしたい様子。

実は、この気持ちこそが今日の大成功を表しています!

子供たちがもうちょっと見てみたいとか、もっと作業をしていたいと思うこの気持ちこそ、ミュージアムへのモチベーションを上げることやアートに興味を持つ動機付けになっていて、これこそが「Museum Start あいうえの」の目的だったのです。

写真提供:Museum Start あいうえの

この後、あいうえのメンバーの特典などについて話がありこの日のプログラムは終了しました。

「あいうえの」プログラムに参加し、ミュージアム・スタート・パックを持っているメンバーとそのファミリーは「あいうえのメンバー」に仲間入り。この日がみんなの“ミュージアム・スタート”の日です!

これから始まるミュージアム体験がそれぞれ充実したものになると良いですね。

メンバーだけの特典、リピーター応援プログラム

「あいうえの」プログラムに参加したメンバーだけが利用できる特典として

・冒険ノートをWeb上で見せ合い、学びをみんなとシェアできる

・上野恩賜公園内にあるミュージアムのとっておき情報などが配信される、メンバー限定ニュースレター「あいうえの通信」を受け取ることができる

・新たな冒険のヒントや情報を手に入れることのできる、メンバー限定の特別なプログラムに参加することができる

など、継続してミュージアムを楽しむための多彩なサポートが用意されています。

筆者の子供たちも、この日初めて描いた冒険ノートをさっそく投稿。投稿にはとびラーさんやあいうえのスタッフさんからのコメントがもらえるとあって、子供たちは楽しみに待っています。

また、公式サイトでは投稿された作品を閲覧することができます。同じ学年のメンバーや同じミュージアムで描いた冒険ノートを見て「同い年なのに、こんなに上手い! 」「こんなに細かく描いてるね。」と感心したり刺激されたり。

同じ絵を見た多くの仲間の表現方法が、さまざまであることに驚き、感心して、そういう見方もあるんだと大きな学びになったようです。

「あいうえの」プログラムを終えて子供と実際に美術館と図書館へ出かけてみました

ジュニアガイドや子供向けの案内は初心者の大人にもわかりやすい!

「あいうえの日和」終了後、すぐに東京都美術館内のビビットポイントで呪文を唱えてバッジをもらい、プログラムの中で伊藤若冲と歌川国芳の作品に注目した筆者の子供たちは「本物が見たい! 」とそのまま東京都美術館の展覧会「奇想の系譜展」へ向かいました。

プログラムの中で「奇想とは“びっくりするような”、“奇妙な”という意味があります。」と聞いた子供たちは、表情や格好が面白い絵を探しながら次から次へと見て歩きます。

ときどき気になる作品の前で立ち止まっては、冒険ノートに模写やメモを取り「何種類もの赤があるね。」と色の話をしながらじっくりと作品を見たり「怖い顔もいるけど、かわいい顔もいる! 」と動物の表情について話したり。

また「こんなに大きな絵、どうやって描いたんだろう? 」と近づいてみたり離れてみたり、興味のある作品をさまざまな角度から見ているのは、作品をじっくり見る機会を与えてくれる冒険ノートの効果がさっそく出ていると感じました。

展覧会を鑑賞後、お昼ご飯はキッズメニューもある東京都美術館内の「RESTAURANT MUSE(レストラン ミューズ)」へ。ランチを食べながら午後に行くミュージアムをどこにするかを話し合い「国際子ども図書館」に決定しました。

そして上野公園内をゆっくり散歩しながら、国際子ども図書館に到着です。

さっそくビビットポイントで2つ目のバッジをもらい、児童書の部屋へ

子供はさっそく「奇想の系譜展」で本物を見てきたばかりの歌川国芳の作品を本の表紙に見つけて大興奮! 今までは手に取ったことのない遊び絵の本だったので「あいうえの」プログラムに参加したことで、子供たちの興味が広がり嬉しくなりました。

また、国際子ども図書館は建物も見ごたえのある場所でもあるので、絵本を楽しんだあとは入り口でもらった「レンガ棟を探検してみよう! 」の案内を持って、建物内を探検しました。それぞれの部屋にある見どころを探し出して、ここでも気になるところは冒険ノートにメモ!

筆者も子供と一緒に歴史ある建物を楽しむことができ、親子ともにミュージアムを満喫してこの日は終了。1日に2つのミュージアムをまわることができました。

ポイントは5つ! 子供と大人が一緒にミュージアムを楽しむ方法

子供の体験は、大人のちょっとしたサポートでさらに楽しい体験になると「あいうえの」は提唱しています。あらためて、子供と大人が一緒にミュージアムを楽しむ5つのコツをご紹介します。

ステップ1:出かける前がとても大切!「ビビハドトカダブック」や「ミュージアム・カレンダー」を使ってどんなミュージアムか、今はどんな展覧会が開かれているかなどの情報を子供と一緒に見てからお出かけする。

ステップ2:当日はとにかくミュージアムを楽しむ。「素敵だな」「面白いな」と思う作品を見つけて、お話したり、メモを取る。ひとつでもお気に入りを見つけられれば大成功! ビビットポイントでひみつの呪文を唱えてオリジナルバッジをもらう。

ステップ3:冒険ノートにチケットを貼る、作品を真似して描く、撮った写真を貼るなど思い思いにその日のことを記録する。思ったことや気づいたことを書き留めておいて、親子で一日を振り返ればその日の思い出がより深まる

ステップ4:冒険ノートはウェブサイトで世界に発信! メンバーに自分の良いと思ったものを知らせることで、みんなの冒険ノートを見ることもできて学びにもなる。

ステップ5:あいうえのメンバー向けのニュースレターを受け取り、メンバー限定のリピータープログラムに参加するなど、何度もミュージアムに足を運ぶ。

実際に「Museum Start あいうえの」に参加したことで、子供たちのミュージアムやアートへの興味がグンと高まったのを実感しました。また、子供だけでなく、筆者自身も「次の週末はどこで何があるのかな? 」とミュージアムカレンダーを頻繁にチェックするようになるなど、すっかり親子そろってミュージアムにハマることに。

結局、プログラムに参加した翌週末にも子供と一緒に国立西洋美術館へ出かけました。もちろんバッジは一番にもらい、冒険ノートには睡蓮やエッフェル塔の絵を模写し、考える人の隣で同じポーズをきめて「これは相当つらい体勢だ! 」と初めて銅像の気持ちを考えたようです。

9つのミュージアムが一か所に集まる上野公園の、恵まれた環境を最大限に生かしたプロジェクト「Museum Start あいうえの」。

子供にも大人にも、大きな学びを与えてくれるミュージアムへの第一歩を体験してみませんか?

 

【Museum Start あいうえの概要】

Museum Start あいうえの運営チーム(東京都美術館×東京藝術大学)

公式サイト

主催:東京都、東京都美術館、アーツカウンシル東京、東京藝術大学

共催:上野の森美術館、恩賜上野動物園、国立科学博物館、国立国会図書館国際子ども図書館、国立西洋美術館、東京国立博物館、東京文化会館(五十音順)

撮影/木村一実

※本記事の内容は2019年5月4日現在の情報です

書いた人

関西と中部の両文化が入り乱れる伊賀地方の出身。1年間の放浪生活を送ったオーストラリアで良き日本を再認識。広く浅い知識を頼りに活動中。子のためなら鬼にでもなると2人の男児を溺愛するも、その子どもから鬼と呼ばれている。好きなものは道具、模様、コーヒー、プリン、深夜ラジオ。