芸術の秋。各地の美術館や博物館では様々な企画展示が行われています。
国宝、文化財と聞くと、「何となく、ハードルが高そう…。」「大事にしまわれていて、なかなか見ることができないものでは? 」と思っていませんか?
実は、身近にも文化財があります!
ちょっと近寄りがたいイメージの文化財に親しんでもらう企画が「東京文化財ウィーク」。この記事では、「東京文化財ウィーク2019」のイベントの中から、東京都立中央図書館で行われている企画展示「木子文庫に見る御大礼」をご紹介します。
図書館では、所蔵資料を活用した様々なイベントを行っており、この企画展示もその一つです。展示を見て、「もっと知りたい! 」と思った方は、図書館の資料を使って調べることができますよ。
「東京文化財ウィーク」とは?
「東京文化財ウィーク」とは、東京都教育委員会が11月3日の「文化の日」を中心に、都内全域の文化財の公開や文化財に関わる様々な企画事業を実施することで、多くの人々に文化財に触れる機会を提供するものです。
「東京文化財ウィーク2019」は、令和元(2019)年10月26日(土)から11月4日(月)までの10日間。
目黒区の「旧前田家本邸洋館」や、東京都で唯一の木造建築物の国宝である東村山市・正福寺地蔵堂などの特別公開が行われるほか、文化財めぐり、特別展、講座・講演会など、様々なイベントが行われます。
なお、公開日やイベント実施日、料金等は施設やイベントにより異なりますので、ホームページ等でご確認ください。
東京文化財ウィーク2019参加企画展「木子文庫に見る御大礼」
「御大礼(ごたいれい)」とは、天皇の即位にともなう一連の儀式の総称です。
東京都立中央図書館で行われる企画展「木子文庫に見る御大礼」では、明治天皇・大正天皇の御大礼に焦点を当て、内裏の大工であった木子(きこ)家に伝わる資料を収集した「木子文庫」の資料を中心に、御大礼の様子を紹介しています。
重要文化財に指定された資料を見ることができる貴重な機会。しかも、無料!
展示資料解説とポストカードがもらえるほか、イヤホンガイドも無料で利用できます。さらに、アンケートに回答すると、特製ボールペンがもらえますよ!
会場内には、御大礼、京都御所などの関連資料のコーナーもあります。
第1章 木子清敬の功績-明治天皇の御大礼と明治宮殿-
第1章では、木子清敬(きこきよよし:1845-1907)の功績から、明治4(1871)年の大嘗祭(だいじょうさい)と明治宮殿に関する資料を紹介されています。
木子清敬は、明治天皇の大嘗祭における作事や明治宮殿などの皇室・政府関係の建築物の設計に携わった人物です。江戸時代の京都で、大工として天皇家や近衛家の営繕に携わっていた木子家を継ぎ、幕末まで御所建築を手がけていました。
慶応4(1868)年、明治天皇は京都御所で即位礼を行いました。
明治天皇は、明治2(1869)年3月、伊勢の神宮に親拝してから東京へ移り、以後、事実上東京が新しい首都となりました。
これに伴い、天皇の即位に関する儀式の1つである大嘗祭が東京で行われることとなります。
木子清敬は、大嘗祭のための建物の建築を命じられ、京都から東京へ移ってきます。
旧江戸城である皇居・吹上御苑に大嘗宮(だいじょうきゅう)が造営され、明治4(1871)年11月、大嘗祭が行われました。
天皇の代始め儀式として行われる大嘗祭は京都御所で実施されていましたが、明治の大嘗祭は、皇居の吹上御苑に大嘗祭は皇居の吹上御所に大嘗宮が造営され、ここで行われました。
第2章 木子幸三郎と御大礼-大正天皇の即位と東京誌料-
第2章では、木子幸三郎(きここうざぶろう:1874-1941)の携わった大正天皇の御大礼、大嘗祭と、特別文庫室が所蔵する東京誌料について紹介しています。
木子幸三郎は、清敬の次男で、東宮御所(現・迎賓館赤坂離宮)をはじめ、天皇家・宮家関係の建物の設計に携わった人物です。明治40(1907)年に宮内省内匠寮(たくみりょう)技師に任ぜられ、明治天皇と昭憲皇太后(しょうけんこうたいごう)の大喪と御陵造営、大正天皇の御大礼に伴う諸儀式会場の設営に携わりました。
大正天皇の「即位礼」は、大正4(1915)年11月10日、京都御所の紫宸殿(ししんでん)で行われました。
京都御所・春興殿(しゅんこうでん)は、大正天皇の即位礼にあわせて、大正4(1915)年に賢所(かしこどころ、内侍所(ないしどころ)ともいう)のあった場所に造営された建物です。三種の神器の一つの「八咫鏡(やたのかがみ)」を東京の皇居からこの建物に移し、「賢所大前(かしこどころおおまえ)の儀」が行われました。
春興殿は、現在も京都御所内に現存しています。
「大正天皇御大礼即位式扇面図(たいしょうてんのう ごたいれい そくいしき せんめんず)」には、即位礼紫宸殿の儀の様子と高御座(たかみくら)が描かれています。紫宸殿の前には、左近の桜と右近の橘、南庭には列立する参役者の姿や旗が見えます。
東京誌料とは?
大正天皇の即位礼に際し、当時の東京府および東京市に金一封が下賜されました。
東京市では、その使途について市議会で協議した結果、江戸開府以来明治に至るまでの東京市研究に価値ある様々な資料を当時の市立日比谷図書館で収集することとなりました。
これにより収集された資料は、現在、「東京誌料」として、東京都立中央図書館特別文庫室の中核をなすコレクションとなっています。
「東京誌料」には、物語・草双紙・人情本などの文学書類、長禄年代(1450年代)から大正・昭和に至るまでの地図類、武艦、錦絵、双六類を中心に、地誌、歴史、風俗、伝記、美術、音曲、演劇、娯楽、法制、産業、経済等、あらゆる分野の東京に関する郷土資料があります。江戸城造営の大棟梁の職にあった甲良(こうら)家の「江戸城造営関係資料」646点は、昭和62(1987)年に国の重要文化財に指定されています。
第二会場(多目的ホール)
江戸城での将軍宣下(せんげ)をテーマに、重要文化財「江戸城造営関係資料」や錦絵を複製資料でご紹介しています。
何といっても圧巻なのは、床に広げられた「江戸城御本丸表中奥御殿向並御やぐら御多門共惣地絵図(万延度)(えどじょう ごほんまる おもて なかおく ごてんむき ならびに おやぐら おたもん とも そうじえず まんえんど)」の複製資料! 万延元(1860)年に再建した際の江戸城本丸御殿表・中奥の65分の1の平面図です。
靴を脱いで、図面の上に立って、どこにどんな部屋があったのか、探してみるのも楽しいのではないでしょうか?
江戸城天守閣を背景としたフォトスポットもあります。
江戸城天守閣は外観5層、内部は穴倉を含めて6階、地上からの高さは58.64mで、天守閣の中では最大のものでした。しかし、明暦の大火(1657年)で焼失。その後、再建されることはありませんでした。
東京都立中央図書館特別文庫室とは?
東京都立中央図書館の5階にある特別文庫室では、江戸時代後期から明治時代中期の資料を中心に、約243,000点(冊)を所蔵しています(マイクロフィルムなどの複製資料を除く)。
特別文庫室の資料は、東京誌料のほか、第二次世界大戦中に東京都が民間の学者や蔵書家から買い上げ、疎開させることによって戦災を免れた戦時特別買上図書、寄託・寄贈資料など、計15の文庫で構成されています。和書、漢籍、絵図、地図、錦絵、建築図面、書簡、拓本、書画、写真など多岐にわたり、特別文庫室でしか存在が確認できない資料も数多く含まれています。
利用方法等の詳細は、ホームページでご確認ください。
東京都立図書館ホームページ内にある「TOKYOアーカイブ」と「江戸・東京デジタルミュージアム」で、特別文庫室所蔵資料の画像が公開されています。
図書館のイベントに参加してみませんか?
図書館では企画展示や講演会などのイベントを行っています。ほとんどが無料なので、人気のイベントはあっという間に定員に達してしまうことも!
企画展示は、テーマに合わせて図書館の司書が厳選した本が並んでいるので、「こんな本が図書館にあったの!?」という出会いがあるかもしれません。
図書館のイベント、チェックしないと損ですよ!
企画展示基本情報
企画展示名:東京文化財ウィーク2019参加企画展「木子文庫に見る御大礼」
会場:東京都立中央図書館 4階企画展示室(第一会場)・多目的ホール(第二会場)
会期:2019年10月26日(土)~11月10日 ※ 11月7日(木)は休館日
時間:午前10時から午後5時30分まで(11月1、5、6、8日は午後8時45分まで)
東京都立図書館ホームページ
天皇家に伝わる秘宝「三種の神器」って?
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