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読み物
Culture
2019.11.04

超重厚RPG「Kenshi」はなぜヒットした?騎士VS武士の集団戦闘が目の前に!

この記事を書いた人

日本文化はコンピューターゲームに対しても多大な影響を与えている。

その中でも、武士と忍者は鉄板の存在だ。

日本刀を手にして戦うゲームキャラは、数え切れないほど存在する。どんなものでも一刀両断し、背を向けず勇敢に戦う武士のイメージは創作物の主要キャラには最適だ。

そんな中、ファンタジーの要素を取り込みつつも武士本来の「剛直さ」や「荒々しさ」を全面に押し出したゲームが人気を呼んでいる。

それは『Kenshi』というタイトルだ。

広大な世界でひとりきり

「剣士」もしくは「拳士」と漢字で書くことができるこのKenshi、全世界が1枚のマップで構成されたオープンワールドRPGである。

RPGといえば、ドラゴンクエストかファイナルファンタジーを連想する人が多いだろう。だが、従来のRPGはどこか不自然でもある。まったくの冒険初心者のレベルに合わせて、周囲のモンスターまでもがそれ相応の強さに設定されている。

世の中、そんなに甘くはないはずだ。自分が強かろうが弱かろうが、襲ってくるモンスターのレベルに関わりはない。

Kenshiの世界は残酷だ。全くの初期状態の主人公に対して、数人がかりでも勝てないようなモンスターが容赦なくやって来る。強盗や奴隷狩りもそこらじゅうをうろついている。だから運次第でゲーム開始間もなく死んでしまうこともある。

ふと、主人公は行き倒れがいることに気がついた。恐らくモンスターに襲われたのだろう。行き倒れに近づくと「所持品を漁る」という選択肢が出てくる。可哀想だが、自分だって裸一貫で金もない。ここは他人の装備品を盗んで金に換えるしかないではないか。

そうやって死体漁りをしていくと、それがバレて袋叩きにされることも。最初のうちは太刀打ちできないが、戦っているうちに戦闘スキルが上昇していく。半殺しの目に遭っても、「打たれ強さ」という能力値が上がり主人公が強くなる。

騎士と武士が大乱闘

モンスターから剥いだ肉を焼いて食べ、道行く人の装備品を盗んでいくうち、この世界は善悪では語れないほど複雑で混沌としていることが分かってくる。

世界の半分ほどは宗教国家ホーリーネーション或いは都市連合の支配下で、この両国は紛争を続けている。ホーリーネーションは騎士、都市連合は傭兵である武士を繰り出して戦っているのだ。

ホーリーネーションと都市連合の国境が接する地域に行けば、騎士VS武士の集団戦闘を間近で見ることができる。

刀、薙刀、長巻などを装備した武士団は、個人の戦闘力は高いが基本は少数編成。一方でホーリーネーションの騎士団は数で押しまくる。そこは死屍累々の地獄だ。主人公がホーリーネーションにつくか都市連合につくかは、本人の判断に委ねられる。もちろん、死体漁りに徹しても構わない。

そして、この世界にも忍者が存在する。忍者はその行動が多種多様で、追いはぎをする奴らもいれば男尊女卑社会のホーリーネーションに抵抗するくノ一もいる。このゲームには「隠密」や「暗殺」の能力値も用意され、それを徹底的に上げればホーリーネーションの皇帝を人知れず殺害したり、拉致することも可能だ。

イギリスの青年がゲームを製作

Kenshiをやり込んでいくうちに、戦国時代とはこのような雰囲気だったのではと考えてしまう。

最初は頼れる者が一切なく、にもかかわらず過酷な運命が襲いかかる。だが、そこから本当に信頼できる仲間を集めて自分たちだけの都市を作り、一大勢力の長として君臨するのだ。

もっとも、このゲームに「果たさなければならない目的」はない。どの勢力につくか、または一度加勢した勢力を裏切るかということすら自由だ。

豊臣秀吉になるか明智光秀になるかは、己の才覚次第。

Kenshiは大手メーカーが制作したゲームではない。イギリスの青年クリス・ハントが、警備員のアルバイトをしながら10年がかりで商業化したものである。最初はすべて自分ひとりで作り上げた。

単にインディーメーカーと言ってしまえばそれまでだが、その努力は常人には計り知れない。

武士と忍者が登場する海外製ゲームは、時として重厚さよりもケレン味のほうが強くなってしまう。しかし、Kenshiはファンタジー要素を土台にしつつも「容赦ない乱世」を見事に描写している。

Kenshiは現在、ゲーム配信プラットフォームSteamで配信中だ。

【参考】
Kenshi-Steam

書いた人

ノンフィクションライター、グラップリング選手、刀剣評論家。各メディアでテクノロジー、ガジェット、ライフハック、ナイフ評論、スタートアップビジネス等の記事を手がける。