Culture
2019.12.13

ザ・ギース高佐一慈さんに聞く!大喜利に隠された「日常をおもしろがるヒント」とは

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突然ですが、以下の問題にボケて答えてください。
「渋滞の先頭でなにが起こっている?」
あなたならどう答えますか?

3連休の最終日に車で大渋滞に巻き込まれたときのこと。結婚10年目を控えた我が夫婦、さすがに会話が続きません。つまり、暇で仕方がない!そんなとき、あるお笑い芸人のYouTubeチャンネルを思い出しました。

それは、コントユニット〈ザ・ギース〉の高佐一慈さんが送る〈タカサ大喜利倶楽部〉という番組。

「暇だから大喜利しよう!」という妻の突然すぎる提案にも関わらず、夫はノリノリで名解答。それから渋滞を抜けるまで、しばらくお題を出し合い退屈な時間を楽しく過ごしました。

「つまらない時間をこんなにハッピーに過ごすことができるなんて!」と、気づいたら大喜利のトリコになってしまったのです。

「もしかして、大喜利には日常を楽しむヒントが隠されているのでは?」

そんな疑問をぶつけに、自身の大喜利チャンネルの編集まで行うほど大喜利を愛してやまない芸人、ザ・ギースの高佐さんへお話をうかがいました!

老若男女から愛される「大喜利」の魅力

大喜利は、もともと「大切」という表記で歌舞伎興行の最終幕最後の場面に付ける1幕を起源としています。それが縁起をかついで、客も喜び演者も利を得るという意味で、今の「大喜利」に置き換えられました。

〈笑点〉を始め、現在では〈IPPONグランプリ〉など、いわゆる「大喜利」を題材にしたテレビ番組は、今でも老若男女から愛されるお笑いジャンルの定番です。与えられたお題に対して、おもしろさを競争し合う芸人の回答は、こちら側の想像の上をいくものばかり。

高佐:「勉強の問題って答えがひとつじゃないですか。例えば『江戸幕府の第5代将軍で、生類憐れみの令を出したのは誰だ?』という問題の答えは「徳川綱吉」だけが正解。だけど、大喜利の場合、それ以外が全部正解になるんです。そこがおもしろいなって。間違った答えから、いろいろ想像が膨らんでいくのも楽しいですね。自分自身、もともと想像するのが好きだからっていうのもあります」

いつもの日常を大喜利で乗り切れ!想像力を鍛えて、興味のない場を楽しくやり過ごすコツ

高佐:「『大喜利』というと、「◯◯とは?」って聞かれて、普通の人ならビクッとしますけど、実は日常会話の中にも大喜利のネタは潜んでいるんですよ。『エレベーターから誰が出てきたらおもしろい?』なんて、お題を振るのも会話のひとつになりますしね」

普段は喫茶店でノートに大喜利を書いて勉強しているそう

「大喜利って、芸人が芸を競うためだけではなく、フツーの人のふつうの暮らしのなかでも楽しめるものなんだ…!」と、冒頭に挙げた筆者の体験談からも分かっていただけるかと思います。

高佐:「日常生活の中で、『今こうだったらおもしろいのにな』と思うことが沢山あると思うんですよ。例えば、会社の飲み会でずっと真面目なつまらない話が続いている間、ふと引いてみた時に『こうだったら』って勝手に想像を膨らませて楽しんでいたら、なんとなくその場に居られるじゃないですか。まぁ、もう話聞いてないですけど(笑)」

マンネリカップルも大喜利で仲良くなる?

長く一緒にいるからこそ、なんでもない日常を楽しみたい。それはマンネリ化したカップルや夫婦の願いでもあります。そんなときにも使える、大喜利という魔法。

今年の9月に結婚したばかりの高佐さん。奥さまとは長いお付き合いの上でのご結婚だったそうです。

高佐:「付き合いが長いと、それほど話題もなくなってくるじゃないですか。で、ゲームをやるんですよ。今ハマっているのが、『まだ名前のついてないものに名前つけていこう』っていうのをやってて。自分の住む街で、よく行くコンビニの店員さんを私服姿で見かけることってありますよね。『あれに名前つけようよ』ってお題を決めて、僕がいろいろ回答を出していくんですよ。でも、奥さんはあんまりピンときてなくて。『なんか出してよ』って言ったら、ひとこと『放牧、じゃない?』って。自分以上に奥さんの回答がおもしろくて、その日は悔しくて眠れなくて(笑)。そういう感じでやってたら、あっという間に時間がすぎますね。あとは、街で見かけたお店のCMソングを勝手に作るとか」

なんて素敵なご夫婦!大喜利には、普通の毎日を楽しむコツまであるなんて。実は、わが家も似たようなことをよくやるので、なんだかホッとしました…あれ、コレ普通じゃないですか?

先生まで協力!難関進学校で自作大喜利テストをクラスメイトに解いてもらう

高佐さんが大喜利にハマったのは、ダウンタウン・松本人志さんの〈一人ごっつ〉がきっかけ。ハマるスピードに加速がついたのは、バッファロー吾郎さん主催のお笑いイベント〈ダイナマイト関西〉が大きく影響しているそうです。

高佐:「僕、勉強が好きなんですよ。問題が出されて答える、っていうテストの形式が好きだったんですね。大喜利も同じフォーマットだから、ハマったんだと思います。」

大喜利へのあふれる衝動から、高校3年生の時にお笑い好きの友人を集めて演芸研究会を作ります。

高佐:「『〈一人ごっつ〉みたいなのがやりたい!自分で作ってまわりに解いてもらおう』と思ったのがきっかけで、自作の大喜利テストを作りました」


当時作っていた自作大喜利テスト

高佐:「僕が通っていたのは進学校で、『お笑いなんてダメ!』という雰囲気だったんですね。でも、お笑いが好きな先生に顧問になってもらって活動していました。他の先生にバレないように、『追試』という体を装って、研究会のメンバーから友達や後輩まで教室にかき集めて、模試のように解いてもらって」

いい意味で、だいぶ振り切れてます

なんて素晴らしい先生!生徒のやりたいことを肯定する先生の姿にジーンとしちゃいました…!現在の高佐さんにまで通じる大喜利への愛は、顧問の先生のおかげでもあるのではないでしょうか。

高佐:「お題を自分で考えて、模範解答を自信満々に廊下に張り出して。今考えても恥ずかしくてしょうがないですね(笑)」

「やばいですよ、本当に」とつぶやく高佐さん

当時の自作大喜利テストは、今でも大切に保管しているそう。このテストの内容は、高佐さんがゲスト出演するYouTubeチャンネル〈宇野常寛のオールフリー高田馬場〉内で観られますよ!

「LINEグループ退出問題」まで笑いに変える

2018年5月から放送されている〈タカサ大喜利倶楽部〉は、ベーシックな大喜利から、「こんなことまで大喜利に?」と驚くような、新しい観点から笑いの幅広さを楽しめるYouTubeチャンネルです。

例えば「LINEグループ退出大喜利」の回では、気が乗らない誘いLINEをどうやってやんわりと断り、スムーズに退出するかを競う大喜利。

高佐:「あの回は、僕もLINEグループを退出するのが苦手だったので企画しました。ゲストの皆さんの回答を見て勉強になりましたね」

日常のちょっとしたイヤなことも、視点を変えれば笑いに変えられるんだ!と筆者が個人的に気づかされた回でした。

他にも全編日本語禁止の「英語大喜利」や「エピソードトーク大喜利」など、大喜利の新しいフォーマットをストイックに探し続ける番組の動向に、いち視聴者として目が離せません。

12月の更新では、難易度が高いテレビゲームをプレイしながら大喜利をする回も。

左からダブルブッキング川元さん・高佐さん・ラブレターズ塚本さん


高佐:「ゲーム中に全く関係ないお題がポンポン出て、答えながらゲームを進めていくっていう大喜利ですね。僕はひとつのことに集中すると他のことが見えなくなるタイプなので、全然答えられなくて!大喜利を通じて、僕ってそうだったんだって気付かされたこともありましたね」

簡単に名回答を出すコツ、ありませんか?

日常会話にも大喜利スキルを取り入れたら、「この人おもしろい」って思ってもらえそう!高佐さん、大喜利でいい感じの回答が出せるコツ、教えてもらえませんか?

高佐:「基本は、なにか別のものに置き換えることですね。『月へ行く人にアドバイスするとしたら?』というお題があったとして、『月』を全く別のものに置き換えて想像します。例えば『月へ行く人』を『居酒屋へ行く人』に変換して、どんなアドバイスを送るのかをイメージするといいですよ」

なんとわかりやすい!これなら一般人の私でも真似できそうです!

高佐:「今はネットでいろんな参考資料が見られるんですよ。ただ、笑いにつながるテクニックはあるけど、それよりも僕はその人自身の個性が出てる回答が見たいですね」

…簡単に近道しようとしてスミマセンでした。「大喜利力を磨く」とは、個性を磨くことなのかもしれません。

大喜利力を磨いて、日常を楽しもう

〈タカサ大喜利倶楽部〉は、お笑いや大喜利が好きな人だけではなく、日常生活を楽しむヒントをくれる番組。その番組の始まりは、製作を担うプロデューサーの「高佐くんが本当におもしろいと思ったことをやろうよ」という一言から始まったそうです。

番組の魅力は、高佐さんの大喜利に対する深い愛情があるからこそ生まれているのだと実感しました。

もうすぐ年末年始。〈タカサ大喜利倶楽部〉で日常を大喜利で楽しむコツを見つけてみませんか?

〈タカサ大喜利倶楽部〉毎週火曜の22時に最新回が公開
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCEiaZDHQZyso1YcLqp08Q8Q
公式Twitter:https://twitter.com/takasaclub

ザ・ギース 公式サイト:https://thegeese.jp
ザ・ギース 高佐 公式Twitter:https://twitter.com/geesetakasa

ザ・ギース 次回の単独ライブ
2020年4月14日(火)〜19日(日) 下北沢 ザ・スズナリで開催
チケット販売情報は公式サイトまで

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浅草育ちの街歩きエッセイスト。『いつかなくなる まちの風景を記す』をコンセプトに、年間500軒の店巡りで好きな店を語るWebマガジン〈かもめと街〉の執筆を中心に活動。喫茶店などレトロなものに惹かれる。消えゆくタイルを集めた写真集『まちのタイル』を自主製作で販売。散歩好きなのに地図が読めない方向オンチ。 ■Webマガジン〈かもめと街〉https://www.kamometomachi.com ■写真集『まちのタイル』https://kamometomachi.booth.pm/items/3904655