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Craft
2020.01.16

本当に似合う「めがねの選び方」5つのルールをプロが徹底解説!メガネの歴史も紹介

この記事を書いた人

めがね男子なんてジャンルがあるように、薄くてややぼんやりしたお顔もめがねひとつでがらりと印象が変わるものです。ファッションアイテムであり医療器具でもあるめがねは、顔の印象を左右して目の健康を保つ大事なアイテムなのに、なんとなく値段や雰囲気だけで選びがち。そこで“人生にもビジネスにも効くめがね選び”の達人、藤 裕美(とう ひろみ)さんに似合うめがねを見つけるヒントを教えていただきました。

こだわりの9つのブランドを扱う「tö」。舞台美術を手掛けるスタッフとともに店主自らが壁を塗った店は、アンティーク家具をめがね棚に見立てたメインフロアと自然光がそそぐフロアにわかれている。気に入った一本をじっくりと選んで欲しいと、藤さん。

室町時代に渡来し、江戸時代に国内生産がはじまっためがね

ちょっと歴史をおさらいしますと、めがねが日本に入ってきたのは室町時代のころ。イエズス会によってもたらされ、時の権力者たちへの献上品とされたことが多くの史料に残されています。現存する最古のものは、室町幕府十二代将軍の足利義晴の遺品だそう。以来、西洋から輸入していためがねですが、江戸時代には日本でつくられるようになり、文化・文政のころには、いくつかのめがね店が江戸で商っていました。ガイドブックのはしりでもある、文政7(1824)年に出版の『江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)』には、7軒のお店が紹介されています。当時はかなり高価だったようで、庶民には手の届かない高級品でした。

現在、日本の眼鏡(フレーム・レンズ)市場規模は、3210億円(2018年調査/GfKジャパン調べ)だそう。プチプラSPA店から高級ブランド店まで、さまざまなめがね店があるなか、東京は世田谷・桜新町にこだわりの店「tö」がオープンしました。店主は、めがね店の責任者を務めた後に渡欧して、ドイツのアイウェアブランドで製法から学び、帰国後はめがねスタイリストとして活躍する藤裕美さん。国内外で多くの人のめがね選びをしてきた経験から『あなたの眼鏡選びはここが間違っている』などの書籍の出版をしています。

オブジェのようにさまざまなデザインのめがねを並べたフロア。ギャラリー展示なども予定しているそう。

めがね嫌いはもったいない、似合うめがねはいいことばかり

似合わない、苦手というひとたちに、「誰にでも似合うめがねがあります」と藤さんは言い続けています。しかし、そもそも似合うめがねってどういうもの?今かけているものは似合っているの?そんな私の疑問に、藤さんはこう答えてくれました。「かけることにより、本人に何かしらのプラスの変化をもたらすめがねのこと。イメージがよくなったり、自分に自信がもてたり、人から名前を覚えてもらえるようになったり、仕事の効率があがったり、そんないい変化をもたらしてくれるものと私は定義づけています」。

アンティーク家具の引き出しをあけると、藤さんが選び抜いたセンスのいいアイテムがずらり。

そして似合う一本を見つけるためには、誰かがかけているから、有名なブランドだからという理由ではなく、自分をどう見せたいのかで選んで欲しいと言います。「自身で探せない場合は販売員の知恵を借りてください。どんなシーンで使いたいのか、“デキる人”なのか“かわいい人”なのか、どんなイメージに見せたいのかを伝えましょう。“モテるため”ももちろんありです」と藤さん。多くの男性諸氏から「モテめがね」選びで感謝されてきた藤さん。「どの層にモテたいかでも選び方は変わってくるので、そのへんも細かくお伝えくださいね」と笑います。

藤さんの愛用ブランドはドイツの「ヘアリヒト」。すべてをハンドメイドで手掛ける木製のめがね。軽いうえにフィット感もよく、経年変化を楽しめるのが魅力。木製なのに木製ということよりも、ミニマムなデザインに目がいく逸品!店主のお気に入りだけに、店ではかなりの数を揃えている。

「丸顔だからこの形しか似合わない」と顔型とのバランスだけを重要視する人がいますが、その選び方は間違っているそう。「もちろん顔との相性は大事。めがねは幅が1ミリ、角度が1度でも違うと似合い方が変わってしまう繊細なもの。だから丸顔だからこれはダメということはありません。かけてみてピンとこなければ色や素材を変えてみるだけで似合うことも多いですよ」

5本ルールに正しいかけ方で試着をしまくって質のいいものを

藤さん流めがね選びに欠かせないポイントをいくつか教えてもらいました。

1 正しいフィッティングを覚えて

「意外に適当な位置でかけているひとが多い。大体、日本人はちょっと下げ気味でかけるクセがあります。まずは正しい位置(以下のイラスト)を覚えてください」

レンズの位置の中心に黒目がくるようにかけること。上下幅の大きいレンズは真ん中よりやや上に。

まつ毛があたるギリギリぐらいにレンズがくるように。

2 目とフレームのバランスを意識する

「基本は黒目がレンズ左右幅の真ん中にくるデザインをおすすめしています。『顔を小さく見せたい』と顔幅までレンズがあるフレームを選ぶひとがいますが、黒目がレンズの中心に寄って結果的にバランスが悪くなります。医療器具としてもレンズの端は厚みが出てくるために、歪んでみえるので気をつけたいですね」

3 おすすめ5本からはじめてみる

「自分で選ぶのが難しい場合やいろいろなデザインを試したい場合は、スタッフに希望を伝えて『私に似合うおすすめ5本』を提案してもらいましょう。5本かける間に、このタイプで色違いや素材違いを、というように好みが定まってくるもの。すべてが今イチならば、『他の店員さんの意見も聞きたい』と正直に」

「家用に無難な一本を」とやってきたお客さまにも、さまざまなイメージのものを提案すると言う藤さん。「かけているうちに意外なデザインが似合うことがわかったりも。プロに提案してもらうことは大事です」

4 試着をしたら必ず全身鏡でチェックする

「試着のたびにプロに正しい位置にフィッティングしてもらってください。また顔だけを見るのではなく全身鏡でバランスをチェック。横からの姿でリムの太さやテンプルデザインなども細かく確認を。スマホで撮影して、最後にすべてを比較するのもおすすめです」

5 大人は質のいいものを選ぼう

「めがねに関しては値段と品質は比例しています。一見同じように見えても、細部のデザインやきめ細かな磨きなど、圧倒的に品質が違います。目安としてはフレームだけで3万円以上のもの。かけていると緩んでくるため再フィッティングする必要がありますが、メンテナンスはほとんどの店が無料です。メンテナンス込みだと考えると、高すぎることはないはず。素材によりますがフレームがいいものであればサングラスとしても楽しめます」

未来の自分を幸せにするめがね選び

各国の事情に詳しい藤さんに、日本製めがねの特徴や良さについて尋ねてみると「品質や細やかなこだわりなどは、日本のものづくりのすばらしいところ。他の国と比べても抜きんでています。店でも扱っている『MASUNAGA since 1905(マスナガ シンス 1905)』は、フレームのデザインや磨きがとてもきれい。シンプルなデザインが多いのですが、シンプルなだけに質のよさが伝わってきます」と藤さん。

シンプルなデザインにくわえて、フレームやリムなどの磨きなど職人の丁寧な仕事が随所にみられる「MASUNAGA since 1905(マスナガ シンス 1905)」。

基本的には似合うものを選んで欲しいと前置きしながら、「ファッションと同じようにめがねも流行デザインがあります。ただ日本は独自の流行があり、世界の流行と比較すると2、3年ぐらいは差があるように感じています。今の世界的な流行は、上下幅の広めなデザインです。これから選ぶならば上下幅が細めより広めのデザインをおすすめします」とアドバイスも。

「選ぶうえで迷ったら、かけたときに『ワクワクするか』、『幸せな気分になれるか』、『ファッションや髪型をより楽しめるか』などを考えて欲しい。毎日身につけるものは、自分の未来に少なからず影響します。だからこそ幸せな未来を感じる一本を選んでください」

毎日身につけるものが未来を変えていく。藤さんの言葉の数々に、未来の“幸せな自分”を想像できるめがねを探しにいきたくなってきました。

扉を閉じると、アンティーク家具屋にしか見えない「tö」。はじめて訪ねてもどこか懐かしい気分に。

店舗情報
tö(トォー)
東京都世田谷区新町2-6-21-1F
03-6670-4499
営業時間 10:30-20:30
休日 水・木
https://to-o.co/

参考文献
『あなたの眼鏡選びはここが間違っている 人生にもビジネスにも聞く眼鏡の見つけ方教えます』(講談社)・『めがねを買いに』(WAVE出版)/どちらも藤 裕美著

書いた人

和樂江戸部部長(部員数ゼロ?)。江戸な老舗と道具で現代とつなぐ「江戸な日用品」(平凡社)を出版したことがきっかけとなり、老舗や職人、東京の手仕事や道具や菓子などを追求中。相撲、寄席、和菓子、酒場がご贔屓。茶道初心者。著書の台湾版が出たため台湾に留学をしたものの、中国語で江戸愛を語るにはまだ遠い。