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2019.09.13

驚異の腕前を持つアーティスト・田村大さんの「進化」の秘密とは?!【ロングインタビュー後編】[アート]

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アーティストとしてカリカチュアの世界で頂点に立つ

―そこから独立されるまで、似顔絵の専門会社には何年くらい在籍されたのですか?

田村:7年ですね。

―結構いらっしゃったのですね。お仕事はかなり多忙を極められたとお聞きしました。

田村:忙しかったですね。浅草にある店舗は、浅草寺へ来る初詣客で賑わう元旦が一番キツくて。お店に1日だけで300人くらい来るのでフル稼働で対応します。家族連れやカップル、外国人など色々なお客さんと喋りながら臨機応変に対応し、5~6分で色までつけて、基本は1人10分で仕上げる…その作業をエンドレスに朝から晩までぶっ通しでこなして、66人描きました。最後は意識がもうろうとしていましたね(笑)

―それはキツいですね?!それにしても、今もお話してて感じるのですが、田村さんはインタビューで淀みなく受け答えされますよね。何でも整然と回答されるのでトーク力が凄いなと…。一般的なイメージでは、アーティストって気難しくて感覚的な話し方をする人が多い印象だったので、とてもびっくりしています。

田村:そうですね。前職での経験がトーク力向上に活かされていると思います。それに大好きなんですよ僕。こういうの。でも、描きながらしゃべるっていうのは訓練が必要でした。慣れないうちは集中しちゃうと途端に喋れなくなったり、トークに集中すると今度は絵がヘタになっちゃったりしてしまいますから。

-お客さんの性格などを考えながら、上手く特徴を掴むように描くには何か秘訣みたいなものがあるんでしょうか?

田村:例えば、カップルで来た時、無理やり連れられてきたりして片方が乗り気じゃないときもよくあります。カリカチュアって、特に店先にディスプレイしているサンプルには特徴的な絵を置いているので、ある意味怖いもの見たさというか、ジェットコースターに乗るような感覚で来店する人も多いんです。そうすると、終始目を合わせてくれない方なども多いです。ムスッとしたまま表情を変えずに座られてしまうと、どうしても特徴を掴みづらくなってしまい、良い似顔絵にならないんです。だから、たった10分でもよいので、なんとか心を開いてもらうことに非常に気を使いましたね。

-お客さんに心を開いてもらうことがカギなんですね?

田村:そうです。お客さんの心が開いてくると、その人の顔だけではわからない、クセや仕草、微妙な顔の特徴などがパッと見える時があるんですよね。笑う時こっちだけ目尻が上がるなとか。そういうところを会話でどうにか引き出して、いかに似顔絵へと落とし込めるかということを心がけていました。また、似顔絵って本人よりも周りの人に「似てる」って言わせることが凄く大事なんです。なぜなら、描かれた本人は自分の顔を鏡でしかみていないから、細かい特徴までは自分自身でわかっていないことが多いんです。だけど、周りの人から似てるって言われると、納得してもらいやすいんですよね。だから、とにかく周囲がわかるその人のその人らしさっていうのを、僕がこうですよって答えとして出してあげるのが大事なんです。そうすると、だんだんと気に入ってくれて、飾って毎日似顔絵を見るうちに、あ、なんか嬉しいなっていう愛着が湧いてくることもあると思うんです。

-なるほど!似顔絵を描く時の意外なポイントがあるわけですね。ただ顔を似せて描くだけじゃだめなんですね。

田村:そうです。思い出にもなるものなので、決して中世の肖像画みたいに美化したりもしません。子供の歯が抜けていたらそれをそのまま描いてあげたほうが、あとで作品を見返した時に、あの時歯が抜けてたよねって想い出が蘇りますから。そういう1枚を描こうって心がけていました。

-そして前職在籍時に似顔絵の世界大会にチャレンジして、2016年には見事総合優勝されたのですよね?

田村:そうですね。会社から選抜された代表として、2013年、2015年と2016年に挑戦しました。まず2013年に初出場で第10位になって、2015年にもう一度挑戦して総合4位までランクアップしました。でも、やっぱり1位じゃなかったのは悔しくて。そこから1年間修練を積みながら、どうしたら大会で勝てるのか戦略を考え続けましたね。そこで考えたのが、前回のインタビューでもお話した通り、デジタル主流の流れに逆張りして、パフォーマンスがわかりやすく他の参加者にも伝わる「コピック」の活用だったんですね。その戦略も上手くハマって、2016年は見事1位になれました。

独立後はInstagramで顧客開拓!良い作品を作るだけでなく「気づいてもらう」工夫

―似顔絵の世界大会でも優勝され、満を持して独立されたのは2018年の1月でしたよね。今はNBAのお仕事など非常に充実していらっしゃるかと思いますが、どのようにして仕事を広げていったのですか?

田村:お仕事は、SNS経由からも沢山頂いているんです。まず2016年にカリカチュアの世界大会で優勝してからInstagramのアカウントを初めて開設しました。そこから毎日コツコツと作品を投稿しています。

―えっ?!たった2年ちょっとでもうあれだけのフォロワー数がいらっしゃるんですね?!

田村:NBAのバスケットボール選手の似顔絵を載せるようになってから急激に増えました。最初は、自分の作品を発信するためにカリカチュアなどを載せていたんですが、ふと我に返った時、カリカチュアが好きな人って、どれくらい世の中にいるんだろうと思ったんですね。それで調べてみたら、僕よりもっと先人のカリカチュアを手掛けている絵師さんのフォロワーを見たら、2万人しかいなくて。

-市場調査をされたんですね。

田村:そうです。一方で、バスケが好きな人って世界中にどれくらいいるんだろうと思って、試しにNBAの公式アカウントのフォロワー数を見たら3000万人を超えていたんですよ。まさに桁違い(笑)だとしたら、バスケ好きを取り込んだほうがフォロワーが増えるなと思って。それで、幅広くカリカチュアをやるんじゃなくて、まずは一番得意なバスケットボールに絞って絵を描いていこうと。方針を変えてターゲットを絞ったら、狙いが当たったようで、今はどんどんフォロワーが増えていっているんです。なんだかこの人凄いんじゃないかと思ってフォローしてくれるみたいで。今はバスケが好きな人、絵が好きな人の両方がフォローしてくれているという好循環が続いている状況ですね。

-まさに冷静な読みが当たったのですね。そこから、楽天の仕事なども手掛けられるようになったのですね?

田村:そうなんです。今、NBAについては楽天株式会社が日本での独占放映権を持っていて、全部を取り仕切っているんです。フォロワーは増えた、じゃあ次のステップとして、NBAと仕事をするにはどうしたらいいのか考えた時に、やっぱり楽天とオフィシャルにつながらないことには話が進まないなと思ったんです。勝手にバスケの絵を描いているうちは、全然ダメだなと思って。それで、三木谷さんに照準を合わせました。

-いきなり経営トップに営業されたんですか?!

田村:いえいえ(笑)そうではなくて、まずはInstagramを通じて繋がれないかなと探ってみたんです。三木谷さんのアカウントを見てみたら、ちょうど誕生日が近づいていたんです。大企業の社長って組織が大きすぎて皆お祝いできないんじゃないかって考えました。だったら僕が絵を活かして勝手にお祝いしたら喜んでくれるんじゃないかと思って、NBAコミッショナーのアダム・シルバーさんと三木谷さんがツーショットでいる場面をお祝いとして描いてタグ付けしてみたら、なんと三木谷さんがフォローしてくれて。それがきっかけで、楽天社内のNBA担当部署に三木谷さんがつないでくれたんです。そこから楽天のお仕事がスタートしました。

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-すごいサクセスストーリーですよね?!「イラスト」と「Instagram」を組み合わせてご自身の武器を完全に活かしきったアプローチですよね?!

田村:そうですね。実は、今進行中のアート系のお仕事もインスタ経由で進んでいるんです。

書いた人

サラリーマン生活に疲れ、40歳で突如会社を退職。日々の始末書提出で鍛えた長文作成能力を活かし、ブログ一本で生活をしてみようと思い立って3年。主夫業をこなす傍ら、美術館・博物館の面白さにハマり、子供と共に全国の展覧会に出没しては10000字オーバーの長文まとめ記事を嬉々として書き散らしている。