パリでの800時間超の制作期間を経て、遂に日本へ
フランス人現代アーティストのグザヴィエ ヴェイヤンがデザインを手掛け、1939年に創業したメティエダールのアトリエ「モンテックス」が刺繍を施したというこの引き幕。
巨大なファブリックをすっぽりと覆い尽くすドラマティックな色彩と、横25.4メートル・縦5.3メートルの壮大なスケールに誰もが目を奪われます。
抽象的なモチーフを描くのは、直径12cmにレーザーカットされた約20色のオーガンジー。なんとおよそ8,900枚もの数がピクセルアートのように組み合わさり、エクリュカラーの布地に敷き詰められています。
初代尾上眞秀の名、そして舞台上手側にあしらわれた音羽屋の家紋である重ね扇に抱き柏も、チャコールグレーのシルクオーガンジーで形作られたもの。
これらの縁取りにはコーネリーミシンを用いたチェーンステッチを施しているといい、モンテックスならではの伝統的かつ繊細な刺繍技法が隅々まで取り入れられていることがうかがえます。
構想は、2人のクリエイターのコラボレーションから生まれた
祝幕のデザインはグザヴィエ ヴェイヤンと、日本とフランスをルーツとし、モンテックスのアーティスティック・ディレクターとして活躍するアスカ ヤマシタの協働によって誕生しました。
アスカ ヤマシタはグザヴィエ ヴェイヤンに敬意を表すとともに、「モンテックスのサヴォアフェールを紹介することができ、そして同じフランス人と日本人の血を引く眞秀のキャリアの第一歩を見守りながら、自分のルーツと再会できることを嬉しく思っています」と今回のコラボレーションについて語っています。
制作者情報
アスカ ヤマシタ
19歳の時、モンテックスのアトリエに入り、当時カール ラガ ーフェルドがアーティスティック・ディレクターを務めていたクロエのために、ギリシャをモチーフにしたコレクションのドレスを描くことからキャリアをスタートしました。
その後、デザインアトリエのマネージャーを経て、2017年9月よりアトリエ モンテックスのアーティスティック・ディレクターを務めています。
グザヴィエ ヴェイヤン
1963年生まれ、パリ在住。1980年代後半より立体作品、ペインティング、インスタレーション、パフォーマンス、映像、写真など、多様な媒体を用いて、古典主義と高度なテクノロジーに触発された作品群を制作。
ヴェルサイユ宮殿での「Veilhan Versailles」(2009年)、「Architectones」シリーズ(2012-2014年)、ヴェネツィア・ビエンナーレにおけるフランス館での「Studio Venezia」(2017年)を好例に、ヴェイヤンの作品は我々の知覚に一石を投じるとともに、鑑賞者が“役者”へと昇華する空間を創出します。
アトリエ モンテックス
1939年に創業したフランスの刺繍工房。2011年にファッションのクリエイションを支えるメティエダールのアトリエとしてシャネルの傘下に加わり、現在はパリにある「le19M」に拠点を置いています。