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蔦重AtoZ
G=豪華本『青楼美人合姿鏡』で出版業に本格参入
デビュー作『一目千本(ひとめせんぼん)』刊行の2年後、蔦重は自ら企画・構成した『青楼美人合姿鏡(せいろうじびんあわせすがたかがみ)』を耕書堂(こうしょどう)から出版しました。
絵師は当時の人気を二分していた勝川春章(かつかわしゅんしょう)と北尾重政(きたおしげまさ)の共作で、彫師(ほりし)や摺師(すりし)を一流のスタッフを起用。現在も高級和紙として知られる美濃紙(みのがみ)を使用した3冊組の豪華本でした。
「家田屋」の花魁はお外でまったり
作品の舞台は吉原。大河ドラマ「べらぼう」でも描かれていたように、妓楼ごとに分かれた見開きには、花魁(おいらん)や若手の新造(しんぞう)、少女の禿(かむろ)たちの日常が色鮮やかに描かれています。
最終ページの奥付には絵師の北尾重政と勝川春章のほか、共同版元として蔦屋重三郎のほかに山崎金兵衛(やまざききんべえ)の名が記されています。
これは、駆け出しの蔦重が出版の手続きを容易にするため、山崎金兵衛に許しを得て名だけ借りたという巧妙な手口。実際には蔦重がすべての編集を受け持ちました。
3冊組の豪華本は、春夏、秋冬と季節の情景で別れた2冊と、花魁たちが詠(よ)んだ発句(ほっく)を掲載した員外の巻末で構成。費用は掲載した妓楼や花魁から得ており、これほど贅沢なつくりの絵本はかつてないものでした。
これにより、版元である蔦重の名が知られるきっかけとなり、吉原のイメージアップにもつながったそうです。
「松葉屋」の花魁、五代目瀬川の姿も!
最初のページには最高ランクの花魁・五代目瀬川(せがわ)を擁する「松葉屋」の様子が描かれている。大河ドラマ「べらぼう」では、瀬川へのはなむけとして、初めて瀬川を描いた絵だったことが明かされていて、切ない物語を盛り上げた。