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Craftsmanship

2024.02.06

「食べ物が美味しそうに見える」二十四節気のうつわを求めて。 【一生愛せる「うつわ」と出合う・その6】村田森(2)

「古いものの写しの腕は抜群。料理を生かすうつわをつくる」と話題の陶芸家・村田さんは近年、二十四節気(にじゅうしせっき)きをテーマにした作品づくりに取り組んでいます。 立春、雨水(うすい)、啓蟄(けいちつ)、春分…と1年を24等分した二十四節気に注目した理由は…。 山深い京都・雲ケ畑(くもがはた)で、自分と向き合いながら作陶を続ける村田さんの元を訪れ、そのうつわの魅力に迫りました。

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人と深くつながる造形、それが「うつわ」だった


全国の名だたるギャラリーで個展を開いていた村田森さんが、スパッとその活動をやめてしまったのは2016年のこと。

「追われるような毎日だったんです。これでは自分を見失うのでは、と不安でした」という村田さん。
そんな苦悩する村田さんの相談に、真剣にのってくれたのが、現代美術家の村上隆さんです。

「プロの料理人から〝欲しい〟と渇望されるようなうつわを目ざしたい」と考えていた村田さんは、作品の販売形態を見直し、村上さんとともに「となりの村田」という、みずからのうつわを売る専門店をオープンさせようとしていたまさにそのとき、大腸に癌(がん)を発見。ステージ3、リンパ節にも少し転移していました。

「漠然と、まだ先があると思って生きていました。でも違ったんです。時間というものは〝有限〟だと。もっとたくさんのうつわをつくりたい、残したいと思いました」

副作用の強い抗癌剤治療を経て、ようやく2020年に、村田さんは店の運営を始めることになったのです。村田さんは、病を得て、何にも増してうつわへの愛情が深くなっていきました。
そして2021年から、新たなテーマに挑むことに。村田さんは二十四節気のそれぞれの節気に合わせて、計392点もの作品づくりに取りかかることにしたのです。

左/自宅は古民家を改装したもの。その一角には、村田さんのやきものの狛犬(こまいぬ)が鎮座している。右/絵付けは好きな作業だという。村田さんの味のある描線は唯一無二で、ファンが多い。

「二十四節気は、日本の食文化に根づいています。ひとつの節気は約2週間。そのぐらいの周期で、食材は濃(こま)やかに変化しているんです。二十四節気を深掘りし、もっとうつわと食材が溶け合うように、季節を表現できないかを考えました」

村田さんの二十四節気のうつわは雄弁です。さまざまな技法、形、色彩で、季節の豊かさを表現します。そんな村田さんがうつわづくりで大切にしていることは「食べ物が美味しそうに見える」こと。

「日本だけですよね、うつわを手にして食べるのは。その重さや肌触りも含めて〝心地よい、美味しそう〟と感じてもらえるようなものをつくりたいんです」。
つくり手の情熱や世界観が、使い手に直に伝わる工芸、それがうつわという存在です。

「二十四節気を意識すると、
日ごとに咲き変わる山野の草花が
さらに愛おしくなりました」(村田さん)

左/土揉みは、粘土のなかの気泡を取り除いて、土を均一にするための作業。右/自宅の一室には、二十四節気のうつわをはじめとしたさまざまなサンプルが、ギャラリーのように並ぶ。

「身体は食べたものでつくられる。癌でそれを体感しました。食事の質、うつわの重要性に思い至るようになった」と村田さん。治療中は愛犬のアントンにも慰められたという。

村田 森 むらた しん
1970年京都生まれ。1993年に京都精華大学陶芸科を、翌年に同研究科を卒業。荒木義隆氏に師事後に独立。2003年に京都・雲ケ畑に築窯し、年間10回以上個展を開いてきた人気作家でありながら、2016年に新作の発表を停止。2020年に、現代美術家の村上隆氏とともに陶芸専門店「となりの村田」(https://tonarinomurata.com/)を立ち上げ、二十四節気をテーマにした392点のうつわの受注生産を始める。

撮影/篠原宏明、小池紀行 構成/植田伊津子、後藤淳美(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。

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和樂web編集部

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