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盛岡の「光原社」が今の時代でもなお名店であり続ける理由
店内に並んでいるのは、長くおつきあいのある作家や工房の作品が中心ですが、そのセレクト基準は、「どんな時代でも、いいものと思えるもの」。
それはつまり、産地や歴史、つくり手の名前にこだわらず、使いやすくて奇をてらわないデザインであるということ。また、日用品として使える価格であることです。
作家や工房が有名になり、一流ブランド化してしまうのは現代の民藝における矛盾ですが、名声や情報にとらわれず、素直に美しいと感じ、つくり手の姿勢に共感するものを選ぶ――。
それはまさに、民藝の原点ではないでしょうか。
また、柳宗悦の言葉にもある「健康で美しいもの」であることも、大事にしている点。つまり、作家や職人が作品をつくり続けていく中で、ムダが削ぎ落とされ、必然的に出てくる美しさ。
その清々しさを「健康」と呼ぶならば、民藝のあり方を守り続け、つくり手の思いを届けている「光原社」こそが、「健康で美しい店」と、いえるのかもしれません。
作家の思いが詰まったうつわに普段の生活が満たされて
近ごろは、家にいる時間が長くなった人も多いと思います。そういった生活の中で、たとえば鉄瓶で湯を沸かしてみたら、いつものコーヒーが、さらにおいしく感じられて――。
民藝を通して、今まで気づかなかった小さな楽しみに、気づくことができそうです。
世の中の、たくさんのものが便利になっている時代において、「光原社」が提案するのは、少しだけ手間をかけることで愛着が生まれる、暮らしの道具たち。
そういったものを使っていくと、ゆっくり考える時間が増え、やがてそれが喜びに変わるのです。心に余裕が生まれたとき、素朴な美しさに気づいていただきたい――。
そう願って「光原社」は、今日も店を開けているのです。
【店舗情報】光原社
こうげんしゃ
住所:岩手県盛岡市材木町2-18
電話:019-622-2894
営業時間:10時~18時(冬期~17時30分)
休み;毎月15日(土・日曜、祝日の場合は翌平日休)
※「モーリオ」「可否館」も同じ。
撮影/篠原宏明 構成/湯口かおり
※本記事は雑誌『和樂(2021~2022年12・1月号)』の転載です。
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