Craftsmanship

2024.09.25

情報にとらわれず、ただ美しいと思えるものを。民藝の原点を今も守る名店【民藝の息づく街を訪ねて・盛岡編その2】

民藝の息づく街を訪ねるシリーズ盛岡編、第2回は、今も民藝の原点を守り続ける名店「光原社」です。

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盛岡の「光原社」が今の時代でもなお名店であり続ける理由

左/中庭には、鉄のオブジェや大皿など、国内外の装飾があしらわれている。楽しいしつらえに囲まれながら、ひと休み。右/「光原社」向かいの「モーリオ」に並ぶのは、東北の民藝が中心。素朴な風合いにホッとする、会津のくるみ手提かご(参考商品)

店内に並んでいるのは、長くおつきあいのある作家や工房の作品が中心ですが、そのセレクト基準は、「どんな時代でも、いいものと思えるもの」。
それはつまり、産地や歴史、つくり手の名前にこだわらず、使いやすくて奇をてらわないデザインであるということ。また、日用品として使える価格であることです。

作家や工房が有名になり、一流ブランド化してしまうのは現代の民藝における矛盾ですが、名声や情報にとらわれず、素直に美しいと感じ、つくり手の姿勢に共感するものを選ぶ――。
それはまさに、民藝の原点ではないでしょうか。

また、柳宗悦の言葉にもある「健康で美しいもの」であることも、大事にしている点。つまり、作家や職人が作品をつくり続けていく中で、ムダが削ぎ落とされ、必然的に出てくる美しさ。
その清々しさを「健康」と呼ぶならば、民藝のあり方を守り続け、つくり手の思いを届けている「光原社」こそが、「健康で美しい店」と、いえるのかもしれません。

作家の思いが詰まったうつわに普段の生活が満たされて

左/秋田で作陶する中嶋健一の灰釉切立(きったち)鉢(参考商品)。店内のディスプレイには、随所に季節を感じさせる工夫があしらわれている。右/岩手の作家・小田中耕一の型染のれん(雨ニモマケズ 参考商品)は、宮澤賢治と深く関わる「光原社」における、象徴的な商品。

近ごろは、家にいる時間が長くなった人も多いと思います。そういった生活の中で、たとえば鉄瓶で湯を沸かしてみたら、いつものコーヒーが、さらにおいしく感じられて――。
民藝を通して、今まで気づかなかった小さな楽しみに、気づくことができそうです。

世の中の、たくさんのものが便利になっている時代において、「光原社」が提案するのは、少しだけ手間をかけることで愛着が生まれる、暮らしの道具たち。
そういったものを使っていくと、ゆっくり考える時間が増え、やがてそれが喜びに変わるのです。心に余裕が生まれたとき、素朴な美しさに気づいていただきたい――。
そう願って「光原社」は、今日も店を開けているのです。

中/「光原社」から通りを挟んであるのが別館の「モーリオ」。盛岡をはじめとする東北民藝や食品なども販売している。右/中庭にある喫茶室「可否館(こーひーかん)」は、取材時は休業中だったが、営業を再開。ていねいに淹れるオリジナルブレンドにファンも多い。

【店舗情報】光原社

こうげんしゃ
住所:岩手県盛岡市材木町2-18 
電話:019-622-2894
営業時間:10時~18時(冬期~17時30分)
休み;毎月15日(土・日曜、祝日の場合は翌平日休) 
※「モーリオ」「可否館」も同じ。

撮影/篠原宏明 構成/湯口かおり
※本記事は雑誌『和樂(2021~2022年12・1月号)』の転載です。
※表示価格はすべて税込価格です。掲載商品には1点ものや数量が限られているものがあり、取材時期から時間がたっていることから、在庫がない場合もあります。そのため、掲載商品の在庫がないもの、価格変更の可能性があるものは、「参考商品」と表記しています。※営業時間や休みなどが変更になっている場合があります。お出かけの前に最新情報を確認してください。

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和樂web編集部

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