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Craftsmanship

2024.06.03

作品の魅力を引き出し、空間そのものをコーディネートする。「井上光雅堂」の京表具【手仕事の京都・お誂え編1】

世の中には多くの商品があふれているけれど、「わが家にぴったりなもの」「本当にお気に入りのもの」を探し出すのは難しい! 

たとえば、とある骨董市で手ごろな値段の浮世絵を1枚見つけ、「どう飾ったらいい?」「どんな額を合わせたらいい?」「掛物(かけもの)に仕立てる?」と、インテリアショップや専門店に足を運んでみても、あれこれ迷ってしまうことがあります。

「だれかに相談したい」――そんなときに頼りになるのが、京都の専門店かもしれません。京都は歴史の街。この街では、天皇・貴族たちの生活や、祇園祭といった祭事に伴って、さまざまな道具の特注品がつくられてきました。

どの分野にしても「お誂(あつら)え」をはじめ、既製品にちょっとだけ手を加える「セミオーダー」のモノづくりが、生活のなかに息づいているのです。

特に京都の職人たちは、日本の中でも別格の存在。多種多様な「お誂え」に対応できる和の専門店のうち、まずは京表具の「井上光雅堂(いのうえこうがどう)」を訪ねてみましょう。

京表具の伝統を踏まえた掛物や表装パネルを仕立てます! 「井上光雅堂」

京都の寺院やホテル、いろいろな展覧会で「掛物だけど、現代的な軽やかさを感じる」「これは昔の屛風(びょうぶ)や襖(ふすま)をつくり替えているんだ!」という作品に出合ったら、その多くは井上光雅堂の3代目、井上雅博(いのうえまさひろ)さんの仕事です。

左/表装の裏打ちには、奈良産の宇陀紙(うだがみ)を使用。右/工房の壁一面には専用の刷毛(はけ)が。

井上さんの祖父は、京都国立博物館の所蔵品の表装(ひょうそう)を修理する、表具師のひとりでした。表装とは、絵画や書の作品を和紙や布を使って、掛物、経巻(きょうかん)、書画帖(しょがちょう)、額、屛風、襖などに仕立てること。
「僕は古いものの修復といった伝統的な仕事とともに、現代アーティストとも仕事をしていて。新進の日本画家である品川亮(しながわりょう)さん、フォトグラファーの須藤和也(すどうかずや)さん、京繡(きょうぬい)の長艸敏明(ながくさとしあき)先生などさまざまなジャンルの方、また店舗やホテルからオーダーを受けて、今の空間にふさわしい表装を手がけているのです」と井上さんは語ります。

左/掛物に仕立てるために、長艸敏明さんの京繡作品に裂地(きれじ)を合わせているところ。右/「葵HOTEL KYOTO」の客室を飾る、柳に鷺図(さぎず)の屛風パネルは鈴木華邨(すずきかそん)筆。こちらも井上さんの手によるもの。アンティークの屛風や衝立(ついたて)をパネルにする場合は200,000円〜。

空間にふさわしい佇まいへと作品を仕上げていく表装力

実は、数年前に行った個展のタイトルに「スペース・マウンティング(空間表装)」と名付けました。井上さん自身、表具の仕事は、空間に「はまる(マウント)」ものを仕立てることだ、と意識していたからです。

左/浮世絵の額縁のマットには、シックなベージュの布マットを使用。こうした細やかな配慮が作品を際立てていく。額装は50,000円〜。右/井上さんが表装を手がけた浮世絵が「葵HOTEL KYOTO」の空間に溶け込んでいる。安珍(あんちん)・清姫(きよひめ)をテーマにした歌川国芳(うたがわくによし)の作品という。

だから依頼を受けたら「その作品を飾る場所について、よく話を聞きますね」。古い屛風を解体し、新しいパネルや現代的な額装(がくそう)にして命を吹き込む――これまでの京表具(きょうひょうぐ)をベースに、「作品の魅力を引き出し、空間そのものをコーディネートする」という姿勢は、表装の明るい未来を感じさせてくれるものでした。

左/「掛物の場合は、完成後に反ったりしないように、じっくり乾燥させます」と井上雅博さん。裏打ちしたら1か月半から2か月、乾燥させます。中/地元のラジオでDJもやっている井上さん。難題もお任せあれ! 右/「井上光雅堂」の外観。

一棟貸しの宿「葵南禅寺別邸(あおいなんぜんじべってい)閑雲庵(かんうんあん)」の壁面を飾るのは、京表具の井上光雅堂が手がけた美しい日本美術の作品。現代空間に合うように古い屛風をパネル仕立てにしている。

「井上光雅堂」店舗情報

読み方:いのうえこうがどう
住所:京都市伏見区深草瓦町79-2
電話:075-641-3865
営業時間:9時~18時
休み:日曜・祝日
公式サイト:https://kogado.jp/

※本記事は雑誌『和樂(2024年4・5月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込で、価格や営業時間などは変更される場合があります。お出かけの前にご確認ください。
構成/植田伊津子 撮影/伊藤 信

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和樂web編集部

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