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飾り扇子から檜扇まで、扇子のあらゆる注文に応えます! 「大西常商店」
冠(かんむり)、烏帽子(えぼし)、扇子(せんす)のつくり手は、現代でも「京の三職」と呼ばれ、1000年を超えて継承されてきた仕事です。
扇子の始まりは、平安初期に筆記用具として利用されていた木簡(もっかん)を重ねて綴じた「檜扇(ひおうぎ)」といわれています。次に竹と紙の「紙扇(かみせん)」がつくられ、宮廷、能、舞踊、茶、香などの用途に応じ、多様な京扇子が生まれました。
「手描きの飾り扇子は、絵のオーダーが可能です。ベースとなる地紙(じがみ)も、色引(いろびき)や金引(きんびき)、銀引(ぎんびき)にできます。季節ごとに掛物を変化させるように、飾り扇子も飾り替えたら、心にうるおいが生まれますね」
とびきりの笑顔で解説してくれたのは、大西常商店4代目の大西里枝(おおにしりえ)さん。
京文化に欠かせぬ扇子には、大きな魅力が詰まっている
京都で数少ない手描き職人のひとり、高島孝風(たかしまこうふう)さんも「『自宅から見える四季折々の風景を描いてほしい』とか、愛犬や愛猫、お気に入りの草花を、というご依頼があったり…。歌舞伎の連獅子(れんじし)の絵のご注文は難しかったですね」と言い、制作では柄の配置に気を配るとも。「扇子を開いていくときに、ドラマティックに見えるような構成を考えます。京の感性では余白の取り方も大切なんです」と話します。
クラシックな飾り扇子と同様に、日常使いしやすいセミオーダーの無地扇子も人気があります。大西常商店は今年創業111年。昨年代替わりをし、里枝さんに完全に経営が任されるようになりました。「ぜひ京都らしい美しい手仕事をお手元に!」と熱い想いにあふれる老舗です。
「大西常商店」店舗情報
読み方:おおにしつねしょうてん
住所:京都市下京区本燈籠町23
電話:075-351-1156
営業時間:10 時~18時
休み:4月~8月は無休、9月~3月は日曜・祝日
公式サイト:https://www.ohnishitune.com/
※本記事は雑誌『和樂(2024年4・5月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込で、価格や営業時間などは変更される場合があります。お出かけの前にご確認ください。
構成/植田伊津子 撮影/伊藤 信