Craftsmanship

2026.06.24

和樂スタッフの「推し民藝」第3回【近畿・中国】を取材して、旅して、出合った!

47都道府県にはそれぞれ、真摯(しんし)につくられる日常の道具類や郷土玩具などが今もたくさん受け継がれています。仕事柄さまざまな土地を訪れる機会や、つくり手に会うことも多い和樂スタッフが、その地で魅了され、今も愛用している品々を4回に分けてご紹介します。3回目は、近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)と、中国(鳥取、島根、岡山、広島、山口)の計11府県の「推し民藝」です!

【滋賀】

信楽焼(しがらきやき)の茶碗

日本六古窯(にほんろっこよう)のひとつに数えられる、甲賀(こうが)市信楽町を中心に生産されるやきもの。火鉢や壺、炊飯鍋といった生活雑器の“飾り気のない力強さ”が柳宗悦(やなぎむねよし)らに高く評価された。写真は陶芸作家、篠原希(しのはらのぞむ)の作。

「民藝は本来、無名性を大前提として成立していたが、現代においてほぼすべての手仕事は作家性と切り離すことができない。そうした矛盾を抱えつつ、作家による茶碗を探し歩くなかで、ふと民藝性を感じる瞬間がある。かつて琵琶湖の底であった信楽の土。その土がもつ力だけを感じ取るために作陶される篠原希の茶碗には、かつて民藝の柱であった風土性──すなわち土地そのものの力が作為を超えて立ち現れている。彼がつくるものは、無名性を失った時代においても、なお民藝が成立しうることを示している」(高木)

【京都】

『清課堂(せいかどう)』の錫の片口

江戸後期の天保9(1838)年創業。錫(すず)や銀製品の『清課堂』の型と技は、神社仏閣の荘厳(しょうごん)品や宮中の御用品だけでなく日用雑器にも生きている。

「ちょうどいい重さと、手のひらで包み込むように持つやさしい形がたまらん! 日本酒がまろやかな味になります」(田中)

二見光宇馬(ふたみこうま)の陶仏

小さな陶製の仏像を制作する陶芸家・二見光宇馬。華美な装飾がなく、土の質感や、ユーモラスで穏やかな表情を湛(たた)える。

「アンティークショップ『昴(こう)ーKYOTO』で出合った4cmほどの仏さま。柔和でおおらかな佇まいに、暮らしに寄りそってくれるような静かな温かさと運命を感じました」(遠藤)

【大阪】

今宮戎(いまみやえびす)神社の福笹(ふくざさ)

1月9日~11日に行われる恵比須さまの祭、十日戎(とおかえびす)に欠かせないもの。無料で授与される笹に郷土玩具など有料の吉兆(縁起物の飾り)を付け、商売繁盛を祈願する。

「大阪の新年行事のひとつ、今宮戎神社の十日戎。素敵な福娘さんたちが、笹に縁起物の飾りを付けてくれます。一度にたくさん飾るのではなく、毎年少しずつ飾りを増やしていきました」(高橋)

【兵庫】

豊岡杞柳(とよおかきりゅう)細工の行李(こうり)

しなやかでささくれず、軽量で通気性のいいコリヤナギなどの素材を活かして製作。白から飴色への経年変化は“育つ美しさ”として高く評価されている。

画像提供/豊岡市

「昭和の家庭の押し入れには行李があったもの。豊岡市に伝わる杞柳細工は行李のほか、旅行鞄や飯行李(めしごおり =お弁当箱)なども素敵です。いつか使ってみたいもののひとつ」(小竹)

【奈良】

赤膚焼(あかはだやき)の茶碗

奈良市五条町(ごじょうちょう)で生産されるやきもの。名称は五条山の別名赤膚山に由来。赤みがかった乳白色の素地に、物語などに取材した素朴な奈良絵(ならえ)を描くことが多い。

「『赤膚焼香柏窯(こうはくがま)の尾西楽斎(おにしらくさい)の抹茶碗。絵柄が好きで購入。鹿や寺社など奈良の風物が描かれていてかわいい。点(た)てやすいので日常的に使っています」(田中)

【和歌山】

棕櫚(しゅろ)たわし

水に強く腐りにくい特性をもつ棕櫚の樹皮は、箒(ほうき)やたわし、縄などの素材に最適。棕櫚のたわしは、木のまな板やテフロン加工の鍋などを傷つけず、汚れをしっかり落とす。

「棕櫚の産地である和歌山で3代続く、たわし専門店『髙田耕造(たかだこうぞう)商店』の“むすび”という商品。2個を直角に交えた形はほかのたわしに比べて高価ですが、角を使って洗えるうえもちがよく、何より軽い! 軽くて密度があるのはすごい技術です」(藤田)

【鳥取】

『中井窯(なかいがま)』のうつわ

「鳥取の民藝運動の父」と呼ばれる吉田璋也(よしだしょうや)が、江戸時代から続く牛ノ戸焼(うしのとやき)の技法をベースに、現代生活に合うデザインを指導したのが『中井窯』。鮮やかな緑、黒、白の釉薬を大胆に掛け分けたアイコニックなデザインで知られる。

「『中井窯』といえば青みがかった緑×黒や、緑×白のモダンな掛け分けが人気ですが、白×黒の直径25cmのこのうつわは何を盛りつけても、ものすご~くおいしそうに見せてくれます」(小竹)

【島根】

『舩木窯(ふなきがま)』の陶板

松江藩の御用窯として栄えた布志名焼(ふじなやき)の流れを汲む『舩木窯』。4代目の舩木道忠(みちただ)が柳宗悦、濱田庄司(はまだしょうじ)、河井寛次郎(かわいかんじろう)、バーナード・リーチらと親交を結び、日本におけるスリップウエアの先駆者に。

「道忠さんは島根県での民藝運動に参画し、濱田やリーチの影響を受けて作陶した人。コレクターも多く、私は蓋物(ふたもの)を持っています。写真の陶板は息子の研兒(けんじ)さんの作。松江のショップ『objects』でひと目惚れして購入しました。愛嬌あるトラの表情がかわいい!」(田中)

『出西窯(しゅっさいがま)』の急須と湯吞茶碗

昭和22(1947)年、出雲(いづも)市で農村工業の共同体構想を掲げた5人の青年により創業。5年後に河井寛次郎らの指導を受け、実用陶器の製作に特化する窯元に。

「かなり前に『ビームスジャパン』で見つけたもの。売り場のポップに“使い続けているうちにお茶の渋(しぶ)の色が現れる”とあり、面白いなと思って購入。実際に表面に渋の色がにじみ出ていい景色になってきましたが、知らない人が見たら汚れてると思うかもしれませんね」(山本)

『湯町窯(ゆまちがま)』のエッグベーカー

舩木窯同様、布志名焼の流れを汲む。その特徴である黄釉(きゆう)や透明感のある肌と、この地で作陶もしたバーナード・リーチの指導による実用的で美しいデザインが、湯町窯のスタンダードに。

「『湯町窯』のロングセラーであるエッグベーカーは、よく朝食で使います。大きいほうは卵1個とソーセージ1~2本、あるいはブロッコリー2房くらいがちょうどいい。一度ご飯を炊いてみたのですが、激しく吹きこぼれてしまったのでおすすめしません」(小竹)

【岡山】

倉敷(くらしき)ノッティング

昭和28(1953)年に倉敷民藝館の付属工藝研究所として設立された『倉敷本染手織研究所』で受け継がれている、手織りの椅子敷き。民藝運動の精神による実用的で堅牢(けんろう)、かつ美しい生活道具の代表格。

「初めてのノッティングは本筋のものをと思い、『倉敷本染手織研究所』の取材のときに購入。研究所の設立者でもあり、倉敷民藝館の初代館長でもある民藝運動家の外村吉之介(とのむらきちのすけ)のデザインです。毎日お尻の下で頑張ってくれているので、ずいぶん使用感が…」(藤田)

備前焼(びぜんやき)のピッチャー

日本六古窯のひとつ。釉薬をかけず、絵付けもせず、土と炎の力だけで製作されるシンプルなやきもの。灰が降りかかって模様になる「ごま」や、藁(わら)を巻いて焼くことでできる「緋襷(ひだすき)」という赤茶色の模様などの窯変(ようへん)が魅力。

「備前のお隣、瀬戸内市の牛窓(うしまど)にあるおいしいピザ屋さんで使われていたのが、陶芸家・寺園証太(てらぞのしょうた)さんの平皿とピッチャー。ひと目惚れして購入しました。備前焼はお水がまろやかになるそうで、食事のときなどに使っています」(高橋)

仁城義勝(にんじょうよしかつ)の入れ子椀

漆器は高級品、あるいは鑑賞物というイメージを覆す日用雑器を製作した、木漆工芸家の仁城義勝。分業ではなく一貫仕事で価格を抑え、素材の持ち味を活かす溜塗(ためぬり)といった技法や修理して使い続けるなどの民藝的精神は、息子の逸景(いっけい)氏に受け継がれている。

「まだ5点では済まないけれど、いずれこれだけで食事が成り立つのかも? 一生大切に使いたいうつわです」(後藤)

い草とガラスの留め石

かつてい草の一大産地だった倉敷では、現在もい草によるござやむしろ、バッグ、縄のれんなどが生産される。倉敷民藝館初代館長の外村吉之介により、ガラス工芸も栄えた。

「編むのではなく織り機によるバッグや縄のれんなど、い草製品をつくる『須浪亨(すなみとおる)商店』5代目の須浪隆貴(りゅうき)さんと、石川硝子工藝舎(いしかわがらすこうげいしゃ)の石川昌浩(まさひろ)さんによる“倉敷コラボ”の品。留め石の精神性は置き去りにして、インテリア小物として楽しんでいます」(小竹)

【広島】

宮島(みやじま)しゃもじ

島全体が神域であるため農業が禁じられ、生活に困窮していた島民を救ったのはひとりの修行僧(しゅぎょうそう)。夢に現れた弁財天(べんざいてん)が持つ琵琶の形からヒントを得たしゃもじのつくり方を島民に教え、参拝客の土産物に販売したと伝わる。

「ふっくらとした端正な形に魅かれ、宮島取材時に購入。実用品でありながら“敵を召し取る”や“福をすくい取る”にかけた縁起ものです」(小竹)

【山口】

萩焼(はぎやき)の茶碗

毛利藩の御用窯であった格式高い萩焼に作為のない美しさを見出した河井や濱田らは、地元の土や釉薬にて可能性を共に探求した。

写真提供/萩市

「控えめで優しい雰囲気、少し寂しげな感じが好き。使い込むうち味わいが変化することから“萩の七化(ななば)け”と言われるところに、50代の自分は勝手に共感。山口県へ行ったらぜひ手に入れたいもののひとつです」(鈴木)

●和樂スタッフ(と周辺の人々)紹介
遠藤智子(絶賛和樂web進行中!)/國藤直子(美容女将)/小坂眞吾(落語命)/小竹智子(スポーツ観戦狂)/後藤淳美(大のバレエ&犬好き)/鈴木智恵(ヘンテコマニア)/高木史郎(究極の職人気質)/高橋亜弥子(北へ南へ、渡り鳥人生)/田中美保(在・鎌倉)/新居典子(歌舞伎番長)/福田葉子(薩摩おごじょ)/福持名保美(休日は劇場通い)/藤田優(ミニマム生活の食いしん坊)/古里典子(愛嬌のある品が好き)/山本毅(二拠点生活の料理上手)/湯口かおり(ファッション畑から出張中)/吉川純(152cmのおしゃれさん)

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※紹介している商品は一部を除き私物です。一点ものや現在は入手できない品もあります。
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和樂web編集部


撮影/小池紀行・池田 敦(CASK) 構成/小竹智子
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