Craftsmanship

2026.06.25

和樂スタッフの「推し民藝」第4回【四国・九州・沖縄】を取材して、旅して、出合った!

47都道府県にはそれぞれ、真摯(しんし)につくられる日常の道具類や郷土玩具などが今もたくさん受け継がれています。仕事柄さまざまな土地を訪れる機会や、つくり手に会うことも多い和樂スタッフが、その地で魅了され、今も愛用している品々を4回に分けてご紹介します。最後となる4回目は、四国(徳島、香川、愛媛、高知)、九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)と沖縄の、計12県の「推し民藝」です。

【徳島】

しじら織(おり)

明治維新のころ、干していた織物が雨に濡れて縮み、凹凸ができているのをヒントに誕生。生地の表面に現れた細かな起伏(きふく =シボ)が特徴的な織物。

「しじら織の風呂敷。旅行や出張時の着替えをまとめるのに便利です。涼やかで肌離れもいいので、単衣(ひとえ)のきものも狙っています」(小竹)

【香川】

高松張子(たかまつはりこ)

江戸時代から続く伝統工芸。他地域の張子人形に比べてユーモアある独特の表情が愛らしい。お姫様に仕えていた奉公人の娘が主人の病を自分にうつして亡くなった…という悲しい物語に由来する、「奉公さん」と呼ばれる赤いきものを着た人形はその代表格。

「おかっぱ頭の丸顔に、微笑みをたたえた小さめの口と目の『奉公さん』(ほうこさん、とも呼ばれる)。鯛持ち戎(えびす)、獅子頭、虎など100種類以上あるとされる高松張子のなかでも別格のかわいらしさで、お土産店で目が釘づけに」(鈴木)

【愛媛】

砥部焼(とべやき)の飯茶碗

伊予(いよ)郡砥部町を中心に製作される磁器。産地としての歴史は飛鳥時代にまで遡(さかのぼ)るが、生産や販売が落ち込んでいた昭和28(1953)年に柳宗悦(やなぎむねよし)や濱田庄司(はまだしょうじ)らが訪れ、手仕事の技術が残っていることを高く評価した。

「すぐに使えて手ごろな価格のご飯茶碗は、取材先や旅行先でつい購入。砥部焼の茶碗は高台(こうだい)が大きく重心がしっかりしているので、少々重いけれど安定感があって使いやすい。雑に扱ってもびくともしない堅牢(けんろう)さも私向きです」(小竹)

【高知】

土佐和紙(とさわし)の便箋

福井の越前(えちぜん)和紙、岐阜の美濃(みの)和紙と並ぶ、日本三大和紙のひとつ。「世界で最も薄い」ともいわれる技術力をもち、土佐藩の献上品から書道用紙や便箋、工業用紙までと多種多様性を誇る。

「“仁淀(によど)ブルー”に感激し、便箋やはがきを記念買い。便箋は透けるほど薄いのに破れにくく、滑らかで書きやすい、想像を超えた逸品でした」(山本)

【福岡】

小石原焼(こいしわらやき)のうつわ

朝倉郡東峰村(あさくらぐんとうほうむら)で生産される、「飛び鉋(かんな)」「刷毛目(はけめ)」「櫛目(くしめ)」「指描(ゆびが)き」など、素早く大量に加飾できる技法をもつ陶器。

「福岡県出身です。県民なら一家にひとつは小石原焼の飛び鉋の器があるんじゃないかと思うくらい、ポピュラーなもの。これは25㎝大の平皿ですが、小皿や蓋物なども愛用しています」(山本)

【佐賀】

唐津焼(からつやき)の醬油差し

唐津市を中心に産する唐津焼。豊臣秀吉による朝鮮出兵の際、日本より製陶技術が進んでいた現地の陶工を連れ帰ったことが、日本の陶磁器文化に改革をもたらし、唐津焼の名を全国に知らしめた。

「唐津焼を代表する窯元のひとつである『隆太窯(りゅうたがま)』。お皿やお湯吞みなどたくさん使っています。コロナ禍でオンラインショップができたと知り、新たにこの醬油差しを購入。ふっくらしたあたたかみのあるデザインに加え、液ダレしないのも素晴らしい」(高橋)

【長崎】

五島列島の桶

熟練の職人が木を割り、削り、組み立てる、伝統的な結い物の技法でつくられる桶。接着剤を多用せず、木の収縮と箍(たが =周囲を締める輪)の力で組み立てるため、箍を締め直したり、底板を替えたりして何十年も使うことが可能。仕上げやメンテナンスに特産の椿油が使われることも。

「福江島(ふくえじま)の桶屋『桶光(おけみつ)』のお櫃(ひつ)です。竹を細く割って編み上げる伝統スタイルの箍なのですが、竹特有の粘りと弾力が本体の木の収縮に合わせて絶妙に桶を締め続けるのだとか。入れたままにしておいた翌日の冷めたご飯も感動的においしい!」(田中)

【熊本】

来民渋(くたみしぶ)うちわ

山鹿市鹿本町(やまがしかもとまち)の来民地区でつくられる伝統工芸品。仕上げの柿渋に含まれるタンニンの作用によって防虫・防カビ効果が生まれ、堅牢で100年もつとも。質実剛健な美しさと、生活に根ざした知恵が民藝の品としても高く評価されている。

「何かのキャンペーンなどで配られるうちわとは違い、ひとあおぎするだけで風が起こります。しっかり機能的で姿がきれい。渋い色味も、懐かしいような形も、いさぎよく無地なところもいいと思って手に入れました」(國藤)

【大分】

別府竹細工(べっぷたけざいく)のかご

平らに裂いた竹ひごを、組んだり編んだりして形にする編組(へんそ)よって生産される、緻密(ちみつ)で美しい細工もの。8つの技法の組み合わせによって200種類以上の編み方が可能。

「グラフィックデザイナーから竹細工作家に転身した網中聖二(あみなかせいじ)さんのかご。シンプルで洗練されていて美しく、テーブルの上に置いて楽しんでいます」(高橋)

小鹿田焼(おんたやき)のピッチャー

江戸時代、福岡の小石原焼の陶工が日田(ひた)市の小鹿田に招かれて窯を開いたという歴史的なつながりが。そのため技法は小石原焼に類似するが、小鹿田焼は10軒のみの一子相伝の家族経営で今に続く。

「昭和29(1954)年にバーナード・リーチが小鹿田を訪れ、滞在中に取っ手の付け方を指導したというピッチャー。その手法がひとつの型として受け継がれていて、これは13年前の小鹿田焼の取材時に購入したもの。大切に使っています」(新居)

【宮崎】

わら細工

西臼杵郡日之影町(にしうすきぐんひのかげちょう)を中心にした地域でつくられる注連縄(しめなわ)やわら細工も、柳宗悦らにその造形美や精神性が高く評価されたもののひとつ。現代では農閑期の手仕事を超えた“飾る民藝”としても注目されている。

画像提供/川しまゆうこ

「高千穂(たかちほ)地方では、神社仏閣だけでなく人々の生活に注連縄の風習が根付いています。未だ神話が生きるこの土地で、稲作から商品製作まで一貫して手がける『わら細工たくぼ』を知り、来年の正月飾りはコレ、と。取材にも行きたいな…」(小竹)

【鹿児島】

白薩摩(しろさつま)の抹茶茶碗

伝統的やきもの、薩摩焼の一種。火山性の白い粘土を使い、低温で焼き上げることで生まれる象牙色の肌と、貫入(かんにゅう =細かなひび)が特徴。

「生まれも育ちも鹿児島なので薩摩焼は日常的に使っていましたが、それはほぼ黒薩摩。島津の時代から白薩摩は特別なもので絢爛豪華な金の模様が描かれることも多いのですが、これは無地のシンプルな茶碗です。茶道を教えていた母から譲り受けた大切なもので、これでお抹茶を点(た)てていただくと格別の味」(福田)

【沖縄】

やちむんのうつわ

沖縄の言葉で「やきもの」を表す「やちむん」。豊かな自然を写し取ったような、おおらかで力強い佇まいが特徴。この美しい日用雑器を柳が絶賛し、全国に知らしめた。

「『陶器工房 壹(いち)』のうつわは、旅行の際に読谷村(よみたんそん)の高台にある工房まで訪ねて行って手に入れたもの。やちむんには珍しい、真っ白な地にコバルトブルーの染め付けが大好きです」(福田)

琉球(りゅうきゅう)ガラスのうつわ

戦後、米軍人やその家族からの注文で生産が拡大。軍施設から破棄されたコーラやウィスキーの空き瓶を活用した色ガラス製品がつくられるように。

「沖縄の『久髙(くだか)民藝店』で、30年くらい前にガラスの色に魅かれて購入した小鉢。野菜の和えものや冷奴、デザートまでなんでも合う。大切に使い続けてきた実用的で美しいうつわです」(後藤)

●和樂スタッフ(と周辺の人々)紹介
遠藤智子(絶賛和樂web進行中!)/國藤直子(美容女将)/小坂眞吾(落語命)/小竹智子(スポーツ観戦狂)/後藤淳美(大のバレエ&犬好き)/鈴木智恵(ヘンテコマニア)/高木史郎(究極の職人気質)/高橋亜弥子(北へ南へ、渡り鳥人生)/田中美保(在・鎌倉)/新居典子(歌舞伎番長)/福田葉子(薩摩おごじょ)/福持名保美(休日は劇場通い)/藤田優(ミニマム生活の食いしん坊)/古里典子(愛嬌のある品が好き)/山本毅(二拠点生活の料理上手)/湯口かおり(ファッション畑から出張中)/吉川純(152cmのおしゃれさん)

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※紹介している商品は一部を除き私物です。一点ものや現在は入手できない品もあります。
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和樂web編集部


撮影/小池紀行・池田 敦(CASK) 構成/小竹智子
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