「101年目の民藝は“みんなのもの”。そして、“土地ごとに染み込んだリズム”から生まれるもの」(髙木崇雄さん)
2025年は「民藝」という言葉が生まれて100年として盛り上がりましたが、実は、民藝というムーブメントのマニフェスト「日本民藝美術館設立趣意書」が配布されたのは1926年4月1日付。今年で100年です。
さらに、日本民藝館設立90年、河井寛次郎(かわいかんじろう)没後60年など、今年も民藝の節目の年と言えます。
そんな中“101年目の民藝だと思うもの”とのお題に、3組の方を取り上げました。
まずは、沖縄の「木漆工(もくしっこう)とけし」の渡慶次愛(とけしあい)さん・弘幸(ひろゆき)さん。
それぞれ、輪島で漆と木地を学んだ彼らは、単に「琉球漆器」という言葉に寄りかからず、本来は沖縄で育たない「漆」という植物の樹液を用いることの意義を問い直しています。
沖縄で育ったクスやセンダン、デイゴ、ガジュマルといった木と向き合い、漆によって木が活きるものには漆を、木だけで働けるものはそのまま使い、使い込むほどに新鮮さを感じさせる器を手がけています。
風土に無理なく根ざした彼らの仕事ぶりこそ、民藝が含む「土着のモダニズム」を体現していると感じます。

それから、ユニークな琉球張り子(りゅうきゅうはりこ)を手がける沖縄の豊永盛人(とよながもりと)さん。
古典を拝んでいるばかりでは「未来の古典」はつくれない、今の時代の力も弱さも素直に受け止めながら、新しい悦びをみんなでつくりたいと、古典も新作も制作。
歴史に学びつつ歴史に依存しない態度はこれからの民藝にも必要です。

そして、僕の食卓に欠かすことのできない岡山・石川昌浩(いしかわまさひろ)さんの硝子(がらす)。
彼は「ふつうであること」、「ひとりで生み出す仕事ではないこと」を大切にしています。
仕事場の住所は非公開、信頼する数軒の店にしか卸さず、自分だけが評価されても意味がないと、周囲のみんなを巻き込んだ企画展を試みています。
だれでもできるはずの仕事をやりながら、みんなでだれにもできない仕事をつくっているんです。

右/おなじく石川硝子工藝舎 石川昌浩の「網目コップ(小)」2,970円。
民藝は、日々暮らす人々が長い時間をかけて育んだ、土地ごとに染み込んだリズムから生まれるもの。
だからこそ“みんな”が共有できる美しさを湛えているのです。
101年目の民藝とはきっと、人と道具が共に働くなかに宿る美しさや、あたりまえだと思っている暮らしをしっかりと見つめ直すことで発見できる、日々に潜む「悦び」そのものではないでしょうか。(髙木さん談)
「人と道具が共に働くなかに宿る美しさ。それが民藝かな」(髙木)

右/同じく、メキシコでは台所の守護聖人とされる「琉球張り子 聖パスカリート」2,970円。

右/木漆工とけし「塗込拭漆4.2寸椀」16,500円。

髙木崇雄さんprofile
たかき・たかお 1974年生まれ。2004年福岡に工芸店「工藝風向」を開店。日本民藝協会常任理事。『民藝』編集長。一般社団法人工藝文化振興会代表理事。著書に『わかりやすい民藝』。
●工藝風向 DATA
住所:福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27
営業時間:11時〜18時30分
休み:木曜
公式サイト:https://foucault.tumblr.com/
※掲載している価格は、すべて税込価格です。

