現代でもアニメやキャラクターなどで多く描かれている「河童(かっぱ)」。かわいらしくユーモアに描かれることの多い河童ですが、実はその正体には悲しい言い伝えが。この記事では、河童の正体や伝説を解説します。
河童(かっぱ)とは、どんな妖怪?
日本の有名な妖怪のひとつ、河童(かっぱ)。河に現れること、童(こども)の姿をしていることから、その名前がつきました。その伝説や物語は全国各地に伝わり、呼び名も見た目も少しずつ異なります。
河童の見た目、現在の河童の姿は「江戸型」
多く伝えられている姿は、子どものような体格で、全身が緑色。背中に亀の甲羅のようなものを背負っていて、頭の上には丸い皿があります。この皿には常に水が張られていて、皿が乾いたり割れてしまうと、力が出なくなるとされています。
また、現在描かれている河童の多くは、魚のような鱗に覆われた爬虫類のような姿をしていますが、18世紀以前の博物書などには、猿人のような姿で描かれることが多くありました。
18世紀半ばに、山のない江戸の人びとに受け入れられやすいように、蛙やスッポンのような両生類的な姿の河童が創作され、19世紀にその姿が全国に伝わり、現在の姿へ置き換えられていったと考えられています。
河童の正体は?
そもそも河童の由来は、大きく西日本と東日本で異なります。九州や関西など西日本では、大陸から渡来された伝承をベースにしたものが多く、関東をはじめ東日本では安倍晴明の式神などがその仕事を手伝わせるために作った人形が転じたものと伝えられています。
そして、河童の見た目のルーツになったとされる有名な説のひとつが、間引きされた子どもの水死体が河原にさらされている姿であるという説。他の子どもに間引きしていることを悟られないよう、大人が作った嘘が「河童」であったとされています。悲しいお話ですが、江戸時代には子どもの間引きが頻繁に行われていたのです。
河童の行動
悲しいルーツの一方、書物で描かれる河童の行動は、ひょうきんでおっちょこちょい。相撲といたずらが好きで、人間につかまえられて、こらしめられている姿も多く描かれています。また、一方で恩義に厚く、お礼の代わりに田植えを手伝ったり毎日魚を届ける姿も、数多く伝承されています。
なぜ河童はきゅうりが好きなの?
河童の好物はきゅうりと言われていますが、その理由は、瑞々しいきゅうりが水神信仰のお供え物に欠かせない野菜だったから。河童は水の神様、あるいはその零落した姿とも言われており、それゆえに、河童はきゅうり好きと言われるようになったのです。これにちなみ、きゅうりの細巻き寿司を「かっぱ巻き」と呼ぶようになりました。
河童にまつわる伝説
九州の「河童憑(かっぱつき)」
九州地方には古くから「河童は人間に取り憑く」という言い伝えがあります。
例えば、熊本県では河童が若い女性に取り憑く言い伝えがあり「河童が棲む水辺ではふしだらな様を見せないように」と戒められ、河童に取り憑かれると、甘ったるい声で言い寄るようになると言われていました。
また、大分県では河童は少女を狙って取り憑き、一度取り憑かれてしまうと、心身ともに消耗し記憶喪失のようになりふらふら行動するようになってしまうと言われています。同じように長崎県でも、河童に取り憑かれると譫言(うわごと)を喋り食事も取らなくなると伝えられてきました。
河童の中継基地「河童石」
三重県や和歌山県など各地で伝わる「河童石」もユニークな言い伝えのひとつです。
河童は、春は小川へ、秋は山へ行くと信じられていますが、その中継基地が河童石とされています。たとえば大分県のある地域では、川の中にある大きな岩を「河童石」と呼んでいました。昔、その岩の近くの水中からにょきっと手が出てきて、ある男が何だろうか?とその腕をつかむと、なんと腕ごと抜けてしまいました。その夜、男の夢に河童がでてきて「抜けてしまった腕を返しておくれ、お礼に岩の上に魚を置いておく」と言うのです。哀れに思って腕を返すと、その言葉のとおり、翌朝に岩の上に魚が置かれていました。
ほかにも、その岩のうえで遊んでいた子どもが水中に落ちて大量の水を飲んで病気になってしまいますが、岩にきゅうりなどをお供えしたところ、たちまち治ったという言い伝えもあります。
河童に関連した作品
妖怪絵で有名な鳥山石燕、浮世絵師としておなじみの葛飾北斎、歌川国芳も河童を描いたほか、江戸時代には古賀侗庵による資料集「水虎考略」や「水虎十二品之図」など、河童に関する専門書も発刊されていました。そのほかにも、柳田國男の「遠野物語」(1910)、水木しげるの作品などにも、河童が登場します。
葛飾北斎「北斎漫画」三編 人魚 水獺 他 文化12年(1815) 無款 半紙本 絵手本 永楽屋東四郎
高井鴻山作「妖怪図」軸装
参考:水木しげる「図説 日本妖怪大鑑」
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