日本の国技となっている相撲。相撲は神事から発展してきたものであるため、取り組みの中で不思議な動きがいくつか見られます。
今回は、勝った力士が懸賞金をもらうときの手振りについてご紹介します!
左・右・真ん中、と右手をちょんちょん?
勝った力士は、審判である行司(ぎょうじ)に名前を呼び上げられた後、行司が手にした軍配(ぐんぱい)に載せられた懸賞金をもらいます。
の、前に何かしていますね? プレイバック!
左・右・真ん中、と、ちょんちょん右手を振り、その後に懸賞金の包みを持ち上げています。
これは「手刀(てがたな)を切る」といわれる動き。左が神産巣日神(かみむすびのかみ)、右が高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、中が天御中主神(あまのなかぬしのかみ)を指し、国土・人間・万物を創造した五穀の守り神たちに感謝している動作とされます。
昔のやり方はちょっと違った?
現在行われているものとは異なる方法が、以前は見られたようです。そのため、「手刀を切る」で事典や辞書を調べてみると、順序の記述はまちまちです。
『大相撲の事典』によると、東側の力士が勝ったときは、真ん中・右・左の順で、西のときには、真ん中・左・右の順で手刀を切るのが、昔の作法だったのだそう。
しかし、江戸時代にあったこの作法は、いつしか途絶えてしまいました。
現在の方法は、「怒り金時」といわれた大関・名寄岩(なよろいわ)が昭和25(1950)年に復活させたもの。昭和41(1966)年の7月場所で当時の時津風(ときつかぜ)理事長(元横綱・双葉山[ふたばやま])によって告知されて、正式に相撲の規則となりました。
力士でなくても手刀を切っている!?
手刀を切っているのは、力士だけではありません。実はあなたも切っているかも?
人混みや行きたい道がふさがれているとき、腰をかがめて片手を縦に小さく振ったことはありませんか? あれが手刀です。ただ、相撲で懸賞金をもらうときの手刀とは意味が異なり、手を開いて相手に見せることで武器を持っていない・敵意がないことを表し、かつ手刀の指先の方向に行きたいのです、という意志も示すものと言われています。力士も取組前に親方の前を通るときなど、この意味での手刀を切っていますね。
アイキャッチ画像:歌川芳幾 メトロポリタン美術館より