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Culture
2020.09.21

GoTo銭湯!壁画が富士山な理由と関東・関西の違いがおもしろすぎる!

この記事を書いた人

自宅のそばに銭湯がある暮らしに憧れる。そして銭湯のそばに角打ちでもあれば言うことなし。ハイエンドなスマートフォンも、おしゃれな革靴もいらない。一生豊かな気持ちで生きてゆける。筆者にとって銭湯とはそれほど優先度が高い。
銭湯はただの広いお風呂ではない。夏場は汗を流し、冬場は体を芯から温める。少額で心と体を癒しつつ、常連客との会話を愉しむ。
もちろんひとりで悦に入るのも一興。手持ち無沙汰になったら、浴室のいちばん奥の壁画に目を向けてみて欲しい。富士山ひとつをとっても店主のこだわりや伝統が息付いているのだ。
今回は、そんな銭湯の壁画について少し伝えさせてもらえたらと思う。

銭湯の壁画が富士山なのは描いた人が静岡出身だったから

湯に浸かりながら富士山を眺める。これを現実のものとするには、それなりの手間暇をかけなければならない。
富士山の見える場所に移動し、付近で銭湯もしくは温泉を探す。遠方からの場合は宿も必要だろうし、時間帯や天候によっては富士山が見えないなんてこともあるかもしれない。お金だってかかる。銭湯はそんなハードルをぐっと下げてくれる桃源郷なのだ。

銭湯の壁に富士山が描かれるようになったのは大正時代と言われている。
明治期に開業した東京の銭湯・キカイ湯が「子どもたちに喜んでもらいたい」との願いを込めたのがはじまり。2020年現在、東京都千代田区の跡地にはキカイ湯の史跡が残されている。
作画をしたのは川越広四郎(かわごえこうしろう)という画家。静岡出身の川越が故郷のシンボルを描いたところ、日本の象徴であり末広がりの構図は縁起も良いということで、次第に広まっていったというのが通説となっている。

関西は図案のバリエーションが豊富

縁起を担ぐのはいかにも江戸っ子らしい発想だ。富士山の壁画はそうした経緯で関東中心に人気を呼んだが、全国規模でみてみると実は銭湯の壁画は富士山だけにとどまらない。
そもそもの話で、銭湯に通じる入浴の文化は飛鳥時代にはすでにあったと言われており、京都の八瀬にはその元祖といわれる「かま風呂」が今もある。かま風呂は現在でいうサウナのこと。また平安時代の説話集『今昔物語』にも湯浴み(ゆあみ)の文字も見られる。

そうした経緯から京都の銭湯の壁画は東京のそれと違い金閣寺や平安神宮などの図案が見られる。となりの大阪でも金魚や鯉などのバージョンを見ることができる。また、文化の違いは図案だけではない。関西の壁画はペンキではなくタイル絵が主流だ。
ちなみに京都にある「柳湯」のタイル絵はモザイクアートになっている。ファミコンで遊んだ世代は心躍ること間違いなしだ。

壁画が銭湯の一番奥なら、一番手前の暖簾にも東西文化がある

タイル絵の大きなメリットはランニングコストだろう。湿気にさらされる浴室の壁画はペンキだと定期的な補修が必要だが、タイルにはその心配がない。おまけに洗剤やたわしにも強く清掃もラクチン。このあたりは関西人らしい勘定が働いているのかもしれない。
またタイル絵にしたことで浴室の奥の壁だけでなく、カランや湯船の仕切りや湯船の底にも図案を用いることができるようになった。近年は東京の銭湯でもタイル絵を見られるところがあるので、ペンキ絵と比較してみるのも面白いと思う。

東京と京都の違いは暖簾にも見られる。
東京の暖簾は丈が短い。これは寿司屋や蕎麦屋にもみられる暖簾を手でサッと跳ね上げて中に入る「江戸っ子」文化が反映されている。
一方で京都の暖簾は男湯と女湯で分かれているものが多い。色や「男」「女」の文字で男女を明確に区別しているため、右なのか左なのか入る前からどっちに行けばいいのかわかるようになっている。
暖簾を見て東京型と京都型の見分けができれば、中を想像することができる。外観から「もしかしてココは?」と銭湯をめぐる楽しみがまたひとつ増えるのだ。

銭湯は小銭で愉しめるアトラクション

新しい領域へ踏み込むときは勇気がいるものだ。経験のない人が銭湯に行くときも同じ。
最初は支払いの仕方やタオルの借り方、ロッカーやドライヤーの使い方に戸惑う人もいるだろう。そんなときはニコッと笑って「すみません初めてなもんで」これで全部解決する。裸の付き合いとはそういうものだ。

世話好きな番台もいれば無愛想な常連もいるが、一喜一憂することはない。観客となって銭湯という劇場を愉しめばいい。風呂上がりに腰に手をあてコーヒー牛乳を飲みながら、脱衣所のテレビで相撲を見ることができたらもう立派な銭湯通である。
あ、でもどんなに映えるからといって写真に撮るのは控えよう。思い出は心の中にのみ収めておくのが銭湯の作法なのだ。

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書いた人

生粋のナニワっ子です。大阪での暮らしが長すぎて、地方に移住したい欲と地元の魅力に後ろ髪惹かれる気持ちの狭間で葛藤中。小説が好き、銭湯が好き、サブカルやオカルトが好き、お酒が好き。しっかりしてそうと言われるけれど、肝心なところが抜けているので怒られる時はいつも想像以上に怒られています。