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Culture
2020.11.03

信長も重用した「鷹匠」は現代も活躍!実は引っ張りだこな、鷹のお仕事内容とは?

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飼いならした鷹を使って狩りを行う鷹狩り。中央アジアで4000年以上前に発祥したといわれており、日本では仁徳天皇の時代には鷹狩りが行われ、朝廷を中心に王侯貴族の遊びとして栄えたという記録が残っています。武将たちの間でも盛んに行われ、織田信長や徳川家康らが好んで鷹狩りを行っていた様子は歴史ドラマではお馴染みの光景。
現代において、鷹狩りの専門職であった鷹匠(たかじょう)と鷹が活躍する場はないと思われがちですが、そんなことはありません。今、彼らは自治体や地域から引っ張りだこ。いったい何が起こっているのでしょうか。

鷹狩りに使われる鷹の種類

鷹狩りに使われる鷹。ここでいう鷹というのは猛禽類の総称で、実際にはオオタカやイヌワシ、ハヤブサなどが使われ、それぞれ狙う獲物や猟場の状況、季節によって使い分けられています。
例えばハヤブサは鳥類最速のスピードを誇り(急降下時は時速300Km以上)、シャープな形の翼が特徴です。狩りを行う際に翼をすぼめて急降下し、飛んでいる鳥を鷲掴みにして蹴落として狩りをします。一方、オオタカは木の密集している場所でも狩りができるので、山がちな日本では重宝されてきました。

高速で飛び、上空から急降下して獲物を狙うハヤブサ

現代にも鷹匠はいる

鷹匠は鷹を訓練して調教し、狩りにも同行する専門職でした。信長は鷹匠に手厚い処遇をしていたことがわかっています。『信長公記』には諸国の武将がこぞって信長に鷹を献上していたという記録も。まるで茶の湯の名物のような扱いで鷹がやり取りされていた様子が記述されています。鷹狩り中に迷子になった信長秘蔵の鷹を見つけた里人には褒美だけではなく、以前没収された領地の返還と所有を保証する旨の朱印状も与えています。家康は鷹狩りを趣味を超えた養生法ととらえ、体を鍛える目的さえ見出していました。
現代では「趣味は鷹狩りです」という人は稀でしょう。では鷹狩りと共に鷹匠の仕事もなくなっていったかというと、そうでもありません。実は現代にも鷹匠は存在しています。鷹匠になるには国家試験はありませんが、民間団体主催(流派)の認定試験が設けられています。鷹狩りが一般的に行われなくなった現代において、鷹匠にはどのような需要があるのでしょうか。

現代の鷹と鷹匠のお仕事事情

害鳥とされる鳥たち

人のエサやりで集まってしまった公園の鳩や、都会の街路樹をねぐらにして大群で暮らすムクドリ、ゴミを荒らす目つきの怖いカラスなどが害鳥といわれ、そこに住む住民や建物の管理者らを困らせています。

同じ鳥でもツバメは大切にするのにカラスは邪魔者扱い。そんな矛盾もありますが、鳥たちが人間が暮らすエリアを棲み家にするということは、人間がちょっとガマンすればいいだけという問題ではないレベルに発展しているのです。鳥の糞や羽毛が引き起こすアレルギー問題、疾病、騒音。中にはカラスに襲われたという被害も。空港を離発着する飛行機にとってはバードストライクは致命傷。そんな害鳥に頭を悩ませている人々から今注目を集めているのが鷹と鷹匠なのです。

害鳥に悩む地域から引っ張りだこ!

昔は公家や天下人ら、セレブ相手に仕事をしていた鷹ですが、現代ではちょっと事情が違います。鷹と鷹匠の注目の新需要、、それは……、害鳥駆除!
鳩やムクドリ、カラスなど、都会の害鳥問題の救世主として鷹と鷹匠に注目が集まっているのです。

強面(こわもて)のハクトウワシ

鳥の追い払いといって思いつくのは、田畑なら案山子(かかし)、都会ならキラキラ光るものを取り付けたり、鳥の嫌がる音をたてたりといったところでしょうか。カラスといえども鳥獣保護管理法で守られていて、許可なく捕獲や処分はできないのが悩ましいところです。カラスは学習能力が高く頭がいいので、このようなお馴染みの対策ではなかなか思うような効果が上がらないという声がありました。

追い払いに鷹匠と鷹が活躍する仕組み

そこで近年注目されているのが鷹と鷹匠による害鳥駆除。「え?鷹に害鳥を狩らせるの?」と思いきや、そうではありません。弱肉強食の自然界においては、鷹は鳥類の頂点に君臨する存在。鷹を飛ばせることによって(一回だけではなく一定期間必要)、他の鳥たちは捕食されるのではないかと恐れ、安心して住めない環境、営巣(えいそう)できない環境にするという方法が鷹を使った害鳥駆除です。自然の摂理に従い、“鳥を以って鳥を制す” といったところでしょうか。

翼を広げると2メートル以上にもなるハクトウワシ

害鳥駆除に活躍する鷹

下の写真はハリスホークという中型の鷹。でそんなに速く飛べるわけではありませんが、集団で狩りを行うという社会性を持ち、訓練がしやすく、環境に慣れるのも早いという特徴があり、街中の害鳥駆除でよく使われている種類です。ただしカラスは頭がいいので、速く飛べないハリスホークだとナメられることがあるそうで、そういった場合に狩猟能力の高いオオタカを使う業者もあるようです。

ハリスホーク 写真提供:那須どうぶつ王国 

鷹は空港でも大活躍。渡り鳥のコアジサシが何万羽も住み着く関西国際空港では、バードストライク対策としてハヤブサや猟犬を使って滑走路や誘導路周辺のコアジサシを9割以上減少できたという実績も。

鷹による害鳥駆除の業者のホームページを見ると、凛々しい鷹の横に「お見積り」というボタンがあったりして、そのギャップに思わずクスっとします。

みんなを楽しませるこんなお仕事も

現代の鷹と鷹匠のお仕事は害鳥駆除だけではありません。人々を楽しませるこんなお仕事も。
栃木県の那須どうぶつ王国のバードパフォーマンスショーでは、鷹匠のおにいさんとハヤブサ、ハリスホーク、ハクトウワシ、ダルマワシ、ミミズクなどの猛禽類が、観客の頭上スレスレを飛び、大迫力のパフォーマンスで楽しませてくれます。

写真提供:那須どうぶつ王国

高速のハヤブサ、集団で狩をするハリスホーク、羽音をたてず飛ぶ夜行性のミミズクなど、それぞれの習性の違いの説明もあり、子どもだけではなく大人も楽しめる内容です。

写真提供:那須どうぶつ王国

鷹の鋭い爪から腕をガードするアームカバーや、おしゃれなフードを装着したハヤブサも近くで見ることができますよ。

あなたの頭上にも鷹が飛んでいるかも

カラスやムクドリが青空に黒い影となって飛んでいるのはもはや日常の光景。でも、もしかしたら、その中に鷹が混じっているかも! 鷹と鷹匠は、今や都市の住環境を守るという新たな役割を見出し、お得意様を変えてしたたかに今の世を生き抜いているのです。

協力:那須どうぶつ王国

書いた人

生まれも育ちも大阪のコテコテ関西人です。ホテル・旅行・ハードルの低い和文化体験を中心にご紹介してまいります。普段は取材や旅行で飛び回っていますが、一番気持ちのいい季節に限って着物部屋に引きこもって大量の着物の虫干しに追われるという、ちょっぴり悲しい休日を過ごしております。