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紫式部って、こんな人
『源氏物語』は平安時代の王朝文化を今に伝える物語文学です。作者は紫式部。文献では長保3(1001)年にその存在が確認され、寛弘4(1008)年に成立したとされています。
物語は54帖からなり、主人公・光源氏(源氏)は桐壺帝の皇子として生まれながら臣籍に降下し、数多くの女性たちと恋愛遍歴をくり広げます。光源氏没後の後半は、子孫である薫と匂宮が主役となり、結末を迎えます。この光源氏亡き後の物語は、舞台が宇治であることから、宇治十帖と呼ばれています。
作者である紫式部は、受領階級のすぐれた漢学者・藤原為時の娘。29歳という当時としては遅い年齢で17歳年上の山城守(やましろのかみ)・藤原宜孝(のぶたか)と結婚。3年後に夫と死別し、藤原道長の娘で一条天皇の中宮彰子のもとに仕え始め、文筆の才能を発揮するようになります。同時代に活躍した『枕草子』の作者・清少納言は一条天皇の中宮定子に仕えており、あらゆる面でライバル関係にありました。
『源氏物語』主要登場人物
男性
【光源氏(ひかるげんじ)】 主役。日本文学史上に燦然と輝く、最高のプレイボーイ。
【桐壺帝(きりつぼてい)】 光源氏の父帝。藤壺と源氏の子をわが子として養育。
【頭中将(とうのちゅうじょう)】 左大臣家の息子で葵上の兄。源氏のライバルで大親友。
【柏木(かしわぎ)】 頭中将の息子。女三宮との密通を源氏に知られ、病死。
【夕霧(ゆうぎり)】 源氏と葵上の息子。頭中将の娘・雲居雁(くもいのかり)と結ばれる。
源氏と関係をもった女性
【藤壺(ふじつぼ)】 桐壺帝の寵妃(ちょうき)。源氏の子(冷泉帝)を生む。
【葵上(あおいのうえ)】 正妻。高貴な美人だが堅物(かたぶつ)。六条御息所の生霊(いきりょう)に殺される。
【六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)】 嫉妬が高じて生霊となった、高貴なる年上の恋人。
【夕顔(ゆうがお)】 頭中将の愛人だったが光源氏が略奪。生霊に取りつかれて早く死ぬ。
【空蝉(うつせみ)】 源氏と一夜の過ちを犯す。そのうち、夫の伊予守(いよのかみ)の任地へ下る。
【軒端荻(のきばのおぎ)】 空蝉の継娘。空蝉の身代わりとして源氏と契る。
【朧月夜(おぼろづきよ)】 左大臣家の姫。朱雀帝(すざくてい)へ入内(じゅだい)する前に密会したことが露見し、源氏は須磨へ送られる。
【源典待(げんのないしのすけ)】 50代半ばにして、なお好色。源氏物語のお笑い担当。
【末摘花(すえつむはな)】 没落宮家の娘。鼻が赤いことから、ついた名が末摘花(紅花のこと)。
【花散里(はなちるさと)】 源氏が通うことは稀だったが、信頼が厚かった世話好き女性。
【明石上(あかしのうえ)】 須磨に流された源氏と結ばれ、姫(明石中宮)を産む。余生を六条院で過ごす。
【紫の上(むらさきのうえ)】 幼少期に源氏が見初め、大事に育てて生涯をともにした理想の女性。
【女三宮(おんなさんのみや)】 朱雀帝の娘で、源氏の正妻。柏木と密通し、薫を産む。
源氏と関係をもっていない女性
【桐壺更衣(きりつぼのこうい)】 桐壺帝に愛されて光源氏を産むが、宮中でのいじめにより病死。
【朝顔(あさがお)】 若いころから源氏の憧れの女性だったが、徹底して関係を拒絶。
【秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)】 六条御息所の娘。斎宮を経て、冷泉帝に入内。
【玉鬘(たまかずら)】 頭中将と夕顔の娘。筑紫(ちくし)より上洛し、宮中の人気を独占!
【明石中宮(あかしのちゅうぐう)】 源氏と明石上の娘。入内して、東宮の子・匂宮を産む。
宇治十帖 主要キャスト
【薫(かおる)】 女三宮と柏木の子だが、源氏が養育。親に似ず優柔不断。
【匂宮(におうのみや)】 今上帝と明石中宮の息子。源氏譲りの色好み。
【浮舟(うきふね)】 薫と匂宮に想われ、悩みぬいた末入水自殺。助かるが、即出家。
※本記事は雑誌『和樂(2007年10月号)』の転載です。構成/山本 毅