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2025.08.07

こんなに暑い夏だから。辞書から「あつい」が飛び出した!

犯人(ホシ)は、太陽だった。
そうかもしれぬと、それ以外は考えられぬと思いながらも、いざ真実を知るとやはり衝撃は大きい。

編集部オンラインシステムへの投稿に、我が目を疑ったのである。
あの、穏やかで慎重でめったにミスなどせぬ編集部スタッフkが、まさかの期限設定ダブルミス。本日、と言いながら書かれているのは2カ月先の日付……。
あのk氏が、である。しょっちゅうやらかしている、わたくしAの話ではない。いったい何が……!?

とまあ、茶番はここまでにしておいて。

ホモサピエンスの平常時体温を超える気温に、スタッフkまでもが現実を見失って希望と混同する昨今である。もはやデフォルトの鳴き声のように「アツイ」としか口から出ない。

気づけば、ジャパンナレッジ横断検索システムの検索窓に「あつい」と入力、エンターキーを押していた。
そんなこんなで、あきれ顔のジャパンナレッジ君が「ほい、これ……」と返してくれた内容を、パクって自分なりに料理しながら、ご紹介していこうと思う。

ちなみに、ジャパンナレッジというのは、小学館グループのオンライン・パブリッシング・カンパニー『ネットアドバンス』が運営する、「80以上の辞事典、叢書、雑誌が検索できる国内最大級の辞書・事典サイト」である。日頃から、足を向けて寝られぬほど大変お世話になっております。

「あつい」がアツい!

「あつい」でヒットしたのは276件。しかしもちろん、言葉の重複と各言語への翻訳が含まれているから、そのあたりを整理しながら進めていく。

意外にも、デフォルト設定で一番最初に出てきたのが、これ。「渥」の漢字。

うるおう・手厚い・濃い、という意味を持つ字(『新選漢和辞典 Web版』より抜粋編集)なのだそう。

往年の名優・渥美清(あつみ きよし)さんが大変に有名なので、「あつ」と読むのが一般的かと思いきや、人名以外の読みは「あく」。
寅さん俳優と同じ漢字で「渥美(あくび)」なんて単語もある。音だけ聞いていたら退屈なんかな? とか思うが、「つややかで美しい」という、退屈の対極にある言葉だった。いとをかし。

厚い

ものに厚みがある・肉付きがよい・情や行動などの程度がとても大きい・お金持ちである・厚かましい・密生している・特定の役割を担う人が多い・音楽が多くの音で構成される、などの意味を持っている。

言葉の意味が、厚いな!

篤い

恩恵や幸福、情などを受けたり与えたりする程度がとても大きい。また、その気持ちを表す行動の程度が大きい・熱心である・誠実である・病気が重い、など。

ちなみに、ある程度使い分けはあるものの、「厚い」と「篤い」が同じ項目になっている辞書がけっこうあった。

熱い

温度がものすごく高いこと・感情が高まっていること・熱心であること・人々が関心を寄せていること・(「身があつい」の形で)切羽詰まって困る様子。

へえ、切羽詰まって困る、なんていう意味があるのは初めて知った。
あ、「切羽詰まる」についてはこちらをどうぞ。
「切羽詰まる」の意味や語源って?実は「詰まらせる」のがとても重要だった!

暑い

気温がものすごく高いこと。

現在では「気温」に限定して使われているが、そもそもの語源は「熱い」と同じで、上代・中古(飛鳥・奈良・平安時代くらい)では明確な使い分けがなされていなかったという。
ってことは、「今日は熱いわあ」とか「この缶入りのお茶、暑くて持てないの」とかでも、間違いじゃなかったってことか。

そういえば、江戸時代までは「オレ、こんなに文字を知ってるんだぜ!」アピールのために(いや、そこまで断言しちゃっていいのかはわからんけど)、固有名詞ですら複数種の漢字で書いていたというから、「これでなければ・この方法でなければ点はやらぬ……」的な発想はそもそもなかったのかもしれぬ。まあ分かればいいよねぇ~、というおおらかさが、大変に好ましい。

固有名詞の複数表記について、(わたくし個人の中で)有名な例を挙げると、「新選組・新撰組」とか。これはご本人たちですらどっちも使っていたというから、字義的にどうとかの理屈を吹っ飛ばして、もはやどっちでもいいのだろう。あ、「真選組」「新鮮組」については別団体ですので、そこはお間違いなく。

圧威

なんか想定からは外れていたのだが、二字熟語も出てきた。これも「あつい」と読む。

意味は、人をおさえつけ、威圧する力。
なんか嫌だなあ。パワハラのにおいを感じるなあ。と思ったら、例文にもそういった文脈のものが載っていた。

「あつい」を調べたらアツかった!

その他、人名用漢字などけっこう出てきたが、そのあたりは割愛。

ということで、「あつい」の自由研究は以上。
ちなみに、ジャパンナレッジ大先生に収録されている『日本方言大辞典(小学館)』には日本各地の方言も載っているのだが、かなりの地理的距離がある地域に同一の方言があったりして、なかなかに興味深かった。

「暑さ寒さも彼岸まで」「心頭滅却すれば火もまた涼し」なんぞと言うが、理屈をこねたところで今現在暑いものは暑いのである。
どうかどなた様も御身を最優先に、「心頭滅却すれば~」の逸話はそのまま炎に呑まれ彼岸へ旅立った悲劇であることを念頭に、エアコンを適切に使用しながら、やがて訪れる(はずの)実りの秋を心待ちにしましょうぞ。

アイキャッチ画像:壽陽堂歳国『風流鍋島夕すゞみ』メトロポリタン美術館より

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あきみず

人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。
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