「天網恢恢疎にして漏らさず」も、ぜひその中に加えてほしい、心地よいリズムを持っていますが、読み方も意味も、ちょっと分かりづらい……。
ということで、言葉の由来や実際に使われた文学作品名なども含めてご紹介します!
ではさっそく見ていきましょう。
「天網恢恢疎にして漏らさず」読み方は?
読み方は、「てんもうかいかいそにしてもらさず」。
切れ目がどこなのか、ものすごく分かりづらいのですが、意味の上では「てんもう」「かいかい」「そにして」「もらさず」と分けられます。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の意味
でも、読み方が分かっても、意味をすぐに理解できる人は少ないのではないでしょうか。「かいかい」って何……。
ということで、辞書を引いてみましょう。
天の網はひろく、その目はあらいようだが、悪人を漏らすことなく捕える。すなわち、天道は厳正で、悪事をなしたものは早晩必ず天罰を受ける。(『日本国語大辞典』より)
「天網」とは、天の網、天(神様などのような超人的な存在)の監視の目、という意味。
「恢恢」とは、広く大きいこと、大きく広く包み入れること。
「疎」とは、粗いこと。
今の若い世代にはなじみがないかもしれませんが、こっそり悪いことをしようとした子どもを「お天道様(太陽)が見ているよ」なんて叱ることがありました。
誰も見ていない・知られていないと思っても、必ず悪事は知られて報いを受ける、という意味ですね。
「天網恢恢疎にして失わず」という言い方もあります。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の由来は?
中国の戦国時代の思想書『老子(ろうし)』がもとになった表現です(『老子』には「天網恢恢疎にして失わず」の形で書かれています)。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の類語
「お天道様が見ているよ」もそうですが、その他にも似た意味を持つ言い回しがあります。
「天網逃れ難し(てんもうのがれがたし) 」
天の網から逃げるのは難しい。
「天知る地知る我知る人知る(てんしる ちしる われしる ひとしる) 」
中国・後漢の故事に出てくる言葉で、「誰も知らないと思っていても、天地も、私もあなたも知っているのだから、不正はいつか必ず露見する」という意味。「天知る地知る我知る子(し)知る」「四知(しち)」とも言います。
番外編・「壁に耳あり障子に目あり」
「天網恢恢~」と少し意味は異なり、必ずしも「悪事」だけに限らないのですが、どこで誰が見聞きしているか分からず、秘密は漏れやすいものだ、という意味。
名作にも出てくる「天網恢恢疎にして漏らさず」
泉鏡花の『義血侠血』(1894年)、永井荷風の『狐』(1909年)、また、江戸時代の仮名草子『浮世物語』(1665年ごろ)はじめ様々な文学作品に、「天網恢恢疎にして漏らさず」の表現が出てきます。ご興味のあるかたは探してみては。
アイキャッチ画像:葛飾北斎『冨嶽三十六景 甲州石班沢』メトロポリタン美術館より
参考文献:
・『日本国語大辞典』小学館
・『デジタル大辞泉』小学館
・『故事俗信ことわざ大辞典』小学館
・『新選漢和辞典 Web版』小学館

