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読み物
Culture
2019.09.25

デザイナー有村泰志さんインタビュー!作品「架空雑貨」がおもしろい!

この記事を書いた人

デザイナー・有村泰志さんがSNSに投稿されている様々な「架空雑貨」をご存知でしょうか。例えば、「物語の途中ですが、ここで一旦CMです。」と書かれた、ユニークな作品「CMを挟むしおり」には、番組の途中でカットインするテレビのCMにあるような文章が書かれています。


「CMを挟むしおり」 話題を呼び、クラウドファンディングで商品化された作品です

ここでいう「架空雑貨」とは、実際には存在していない、有村さんのアイデアから生み出されたユーモア溢れる作品のこと。

写真、イラスト、アニメーション。コンセプトによってこれらの手法を使い分ける有村さんの作品には、「おにぎり」「お茶」「扇風機」といった日本ならではの食文化、風習、モチーフなども多く見受けられます。そんな有村さんに、日本文化からどのようなヒントを得て作品に落とし込んでいるのか伺ってみました。

有村さんが生み出す「架空雑貨」

まずは有村さんの作品をいくつか見てみましょう。

有村:「和風検索ボックス」という作品は、検索の虫眼鏡が金魚すくいのポイの形と類似していることに気付いて制作した作品です。


「和風検索ボックス」

――「ぺこりはんこ」は、名前がお辞儀をしているように傾いていますね。

有村:上司に印鑑を出すとき、日本では左斜めに押印する習慣がありますよね。前職時代から、この日本独自の風習が面白いと思っていました。


「ぺこりはんこ」

――「DJ枯山水」は、渋い和のモチーフと今どきのモチーフを組み合わせた作品です。

有村:枯山水の円状の砂紋と岩が、アナログレコードの溝とプレーヤーに形が類似していたことに気付きつくりました。

「DJ枯山水」

3つのレイヤーに分ける発想法

――実際に商品化された「CMを挟むしおり」は、CMもしおりも“挟む”という同じ表現を使うことに着目されてつくられています。作品はどれも物の特徴を捉えたものですが…どのような発想法で生み出されているのでしょうか?

有村:僕はある対象のモチーフを「名前」「形」「動き」という3つのレイヤーに分ける、ということをしています。これは普段から使っている発想方法なのですが、要素を分解して個々のモチーフを見ることでアイデアが浮かびやすくなるんです。それによって、特徴をピックアップできるということもありますが、固定概念から離れられることが、着想に繋がるポイントになっています。

――要素を分解して特徴を分かりやすくするだけでなく、思い込みから解放されて、様々な課題解決の場でも応用できそうなライフハックですね。

有村:発想方法も大事ですが、作品のアイデアは日常に隠れているので、普段の生活で気になったことはメモに書き留めています。「CMを挟むしおり」も、街中で見かけたしおりをメモにとり、そこに書かれたキーワードを膨らませていくような形でつくりました。

――身の回りにあるものを観察してアイデアを見つけ、作品に繋げているんですね。

和を用いるのは、まだ掘り起こされていない可能性を見出せるから

――日本文化をモチーフにした作品も多く見受けられます。和の文化のどういったところにご興味をお持ちなんでしょうか?


「和風再生ボタン」

有村:僕は「侘び寂び」や、「不足の美」のような余白を美しいと感じる日本的な感覚が好きですね。これは先ほどお話しした、何気ない日常からアイデアを得て制作している、これらの作品にも反映している要素だと思います。

――タイトルも含めてシンプルな構成ですよね。

有村:はい。シンプルさは、どの作品でも心がけています。

そしてもう一つ、日本らしさというところで、異文化への柔軟性があります。クリスマスが日本に定着したこともそうですし、たらこパスタとか、日本人の甘口カレーとか。異国の文化を柔軟に取り入れて、かつそれを日本式のオリジナルにするところが好きです。

――扇風機といったアナログな道具をモチーフとして使われていることも多いですが、日本的なデザインを用いる理由はありますか?

有村:作品の投稿を見てくださった方に、「和が好きなんですか」と聞かれることが多々あります。もちろん好きではあるのですが、作品に和のモチーフが多いのは、今までにクリエイターが色々な作品を作ってきた中で、和のアイデアは世界規模で見るとまだ掘り起こされていないブルーオーシャンな領域だと思ったので、重点的に作っているんです。アイデアがまだたくさん眠っている金鉱山的なものだという考えが自分にはあって、自然と和のモチーフが多くなっていったんだと思います。

また、和を扱うのは日本人が一番得意ですし、日本人にしかできない領域でもありますから。

――クリエイターとしての戦略的な狙いがあったわけですね。

日本人の感性を作品化する

ーー日常生活で見つけたことを作品に繋げている有村さんですが、その着眼点は普段あまり気づくことのできない日本人の感性という部分にまで広がっていますよね。

こちらの「日本的感性」という作品は、雨という漢字を包丁で切り分けると、「遣らずの雨」「催涙雨(さいるいう)」といった日本人の感性が生み出した情緒あふれる雨の呼び名が現れています。

有村:日本には四季があり、さらに立春、雨水、啓蟄などの二十四節気がありますよね。それだけでなく、雨の呼び名にもたくさんの種類がある。自然にあるものを細かく切り分ける、日本人の考え方や豊かな感性が面白いと僕は思っていて、それを可視化した作品です。


「日本的感性」

――似たような作品で、「青だけの絵の具」、「雨味の飴」もありますよね。


「青だけの絵の具」


「雨味の飴」

有村:これらも同じような発想です。「青だけの絵の具」は、日本の伝統色だけで構成しました。このような自然現象を細かく分ける、日本人の表現手段の特徴は、大学時代のコンペをきっかけに知りました。作品をSNSに投稿しはじめたのは、昨年の夏頃ですが、なかには学生のころから温めてきたアイデアもあります。

日本人だからこそ何も疑問に思わないような身近にあるものまで、斜め上の発想で作品化してしまう有村さんの「架空雑貨」。日本固有の感性を再認識できたことに、デザインが持つ力を感じます。今後のSNSの投稿も要チェックです!

有村泰志さんプロフィール

デザイナー。1993年生まれ。兵庫県出身。学生時代から広告制作に没頭し、第24回京都広告賞にて学生グランプリを受賞。卒業後はグラフィックデザインを主軸に多岐に渡る仕事に携わっている。SNS上では個人の作品発表も続けており、都会と田舎の対比をシンプルなグラフィックで表現した「都会と田舎」は40万いいね・10万RTを超えて国内外で話題になった。

有村泰志さんTwitter :https://twitter.com/15424578268

有村泰志さんInstagram:https://www.instagram.com/arimurataishi/

書いた人

もともとはアーティスト志望でセンスがなく挫折。発信する側から工芸やアートに関わることに。今は根付の普及に力を注ぐ。日本根付研究会会員。滑舌が悪く、電話をして名乗る前の挨拶で噛み、「あ、石水さんですよね」と当てられる。東京都阿佐ヶ谷出身。中央線とカレーとサブカルが好き。