日本文化の入り口マガジン和樂web
9月22日(水)
元始、女性は太陽であった(平塚らいてう)
日本文化の入り口マガジン 和樂web
日本文化の入り口マガジン 和樂web
9月22日(水)

元始、女性は太陽であった(平塚らいてう)

読み物
Culture
2019.09.26

金鳥の蚊取り線香はどうやって生まれたの?なぜコンビニに置いてあるの?徹底解説

この記事を書いた人

「えっ!? なんでコンビニで売ってるの?」
手軽に使える便利アイテムがあふれるコンビニで出会えるなんて思っていなかった「蚊取り線香」。独特の存在感に惹かれ、ついつい手にしてしまったこの商品、実は、ものすごい経歴の持ち主だったんです。

「コンビニで蚊取り線香」の不思議

武者小路あずき(以下、あずき):ヨクキク ウコウヨ…って何? 赤いニワトリがこっち見てる。

アレクサンドリア・パイン(以下、パイン):ムッキー!このバカだぬき、そんなことも知らないの? これは、「ヨクキク キンチヨウコウ」って読むのよ! 蚊取り線香って商品で、お線香に火をつけて煙で蚊を退治するの。

あずき:え? 蚊取りは、スプレーや加熱式じゃないの? 火を付けるタイプなんて知らなかったよ。そんな手間がかかるものを買う人がいるのかなぁ。ぼくは、見たこともなかったよ。

パイン:キー!そりゃ、買う人がいるから売ってんでしょ。コンビニって売れないものは置かないでしょ!
あ、ネットで調べたら月に平均2、3個は売れてるみたいね。

あずき:ふーん。爆売れとかじゃないけど常に売れてるんだね。ところで、ヨクキクキンチョウコウって。

パイン:蚊取り線香ね。

あずき:いつごろできたものなの?

パイン:さぁ、いつかしら。ちょっと調べてみようかしらっと。
あ、1890(明治23)年「世界初!蚊取り線香」棒状蚊取り線香「金鳥香」が誕生ってキョー!

あずき:えー! 日本生まれなの? 100年以上の歴史があるんだー。父さんだぬきと同い年くらいだー!どうやってできたのか知りたいなー。蚊取り線香ができたころにタイムスリップしてみよっかー。

パイン:は? なにいってんの?あずき、だいじょうぶ?

あずき:イエーイ、過去に潜航(カトリセンコウ)

蚊取り線香ができるまで

1886(明治19)年:KINCHO 創業者と除虫菊(じょちゅうぎく)の出会い

あずき:あれ? 1886(明治19)年にタイムスリップしちゃったー。

パイン:ムッキキキー。あんた、失敗したんじゃないの?つか、現代に帰れるのかしら…ぶつぶつ。1886年って何かあるのかしら。ネット検索してみよ。ふーん、なるほど、こういうことらしいわよ!

あずき:わわ!お札の福沢諭吉も蚊取り線香に関係あったの?なんだかすごーーーーい。ところで、除虫菊ってなんなの?

パイン:ふふふん。その答えは、ここ。

和名:シロバナムシヨケギク キク科の多年草・英名はPyrethrum
原産国は地中海・中央アジアといわれ、セルビア共和国(旧ユーゴスラビア)で発見されました。この花は古くから殺虫効果があることが知られており、現在もケニアをはじめ世界各地で殺虫剤の原料として栽培されています。殺虫成分「ピレトリン」は花の子房に多く含まれています。
http://www.kincho.co.jp/tama/kiku/kiku.html より引用)

あずき:へー、蚊取り線香はお花の成分からできているんだねー。初耳~。

パイン:除虫菊は、第二次世界大戦前にはたくさん生産されていて、日本から世界中に輸出されていたらしいわ。でも、戦後は除虫菊の「ピレトリン」という成分を化学的に合成した「ピレスロイド」が殺虫成分の主流となったみたいよ。現在では産業用の除虫菊はつくられていないんだって。

あと、KINCHO創業者の上山さん、『除虫菊栽培書』って手引書をつくって、除虫菊の栽培普及にも尽力したとあるわ。日本全国に普及行脚旅の途中で、蚊取り線香を思いついたとも!

あずき:旅の途中で?

1888(明治21)年:偶然の出会いから生まれた「除虫菊×線香」

パイン:ふふふ。1888年、上山さんは、旅の途中で、偶然、線香屋の息子さんと出会うの!そこで、除虫菊の粉を線香に混ぜるアイデアを思いついて、蚊取り線香を試作したらしいわ。

1890(明治23)年:世界初の蚊取り線香が誕生

パイン:線香屋さんとの出会いから2年後の1890(明治23)年、ついに世界初の棒状蚊取り線香「金鳥香」が誕生するんだキョ!

あずき:じゃあ、もし、ここで線香屋さんと出会ってなければ「蚊取り線香」は生まれなかったかもしれないってこと?なんだか不思議~。最初は、ほんとにお線香みたいな感じなんだ。

パイン:「金鳥香」は、長さ20cmで約40分くらいで燃え尽きる商品。きちんと効果を発揮するために、同時に3本使っていたそうよ。

あずき:結構短かったんだね。そういえば、いまの蚊取り線香には、渦巻って文字があるね。渦巻になったのはいつなのかなー? よーし、またまたターイムスリップ。ぐるぐるウズマキー。

1895(明治28)年:奥さんのひとことで誕生した渦巻型蚊取り線香

あずき:今度は、1895(明治28)年にやってきたね。

パイン:この年、上山さんの奥様が、庭でとぐろを巻く蛇を見て、渦巻型の製品を思いつくの。試行錯誤の末、1890(明治23)年に、世界初の「渦巻型蚊取り線香」が世にでることになるのムッキャー!最初は手巻きで商品をつくっていたらしいわ。右利きが多いため、渦巻は右巻きだったんだって。

左巻きの蚊取り線香は、世界で金鳥だけ

パイン:その後、1957年頃に商品を機械でつくるようになったらしいんだけど、他の会社との差別化をはかるために、金鳥だけ、渦巻を左巻きにしたんだって。

あずき:あの~、右でも左でも一緒の気がするんだけど。

パイン:あーもう、あんたなんにもわかってない、ムキャー!
左巻きの蚊取り線香って、世界で金鳥製オンリーなの。唯一無二の存在。わかる?

あずき:え? ほんとに? それって、きっとすごいよね。

「蚊取り線香」以前の蚊よけの歴史

パイン:ちなみに、蚊取り線香ができる前は蚊よけも結構大変だったみたいよ~。平安時代から大正時代あたりは、もくもく煙を焚いて蚊を追い払ってたみたいね。

あずき:へー。もうぼく疲れちゃったからタイプスリップはむり~だよ。

パイン:ケッ。やっぱり、ダメだぬきね~。じゃあ、ここからは私がネットを駆使して説明するわよ。

パイン:奈良時代に中国から伝わったとされる蚊帳(かや)。江戸時代には萌葱色の近江蚊帳が広がり、日本の夏の風物詩になったんだって!

パイン:蚊遣火(かやりび)は、平安時代から大正初期まで使われていたらしいの。よもぎの葉、カヤの木などを燃やして燻した煙で蚊を追い払ってたんだって。和歌や俳句にも出てくるらしいわ。

パイン:どちらも蚊取り線香が普及するにつれ、使われなくなったってさ。

現在:世界に広がる「金鳥の渦巻」

パイン:こうやって見てくると、蚊取り線香ができる前まで、大変な上にあんまり効果的とはいえない闘いを繰り広げてきたみたいね。

あずき:いまふうな感覚だと、火をつけるなんてめんどくさいって思ったんだけどさ。歴史を見てくると長い時間蚊を追い払うことができる、みんなが待ち望んでいた製品だったんだね!

パイン:そうね。今では、東南アジアや熱帯地方を中心に世界で使われてるらしいムキ!電気がなくても火種があれば使えるし手ごろな価格であることも人気の理由みたいよ。

デジタル全盛期に、なぜ、まだ火付け式商品?

KINCHOが世界で初めて発明した「蚊取り線香」からはじまった蚊取商品。今では、スプレータイプの「キンチョール」、「蚊がいなくなるスプレー(24時間用)」、マットタイプの「金鳥かとりマット」、リキッドタイプの「キンチョウリキッド」、電池式の「おでかけカトリス」へと進化を続けている。手軽な商品がたくさんある中で、いまだに「金鳥の渦巻」には根強い一定のユーザー層がいると言う。それってなぜなんだろう。

蚊取り線香の香りで、おばあちゃんを思い出す

パイン:「こだわりの天然成分由来」っていうだけあって全然嫌なにおいじゃない。う~ん、この香り、結構好き。なんだか懐かしいのよね~。
昔からの香りを守るために、除虫菊の搾りかすが練りこまれているって聞いたことがあるわ。

あずき:うん、なんだか癖になる香りだよね。なんとなく、おばあちゃんの香り~。

パイン:私は、昔の飼い主を思い出すわ~。夏になると縁側で蚊取り線香をたいていたおばあちゃん。そういえば、彼女、「蚊取り線香」っていわず、「金鳥の渦巻」って言ってたなぁ。こっちが正式名称なんやーって、ムキャー。あー、また、おばあちゃんと一緒に縁側ですいか食べたいよ~。ぐすん。

あずき:あのパインが、思い出に浸って泣いてるなんて…カトリシン…じゃなくてカトリセンコ、じゃなくて「金鳥の渦巻」、おそるべし。

パイン:ちなみに、いまはローズの香りとかいろいろあるらしいから。お線香臭が苦手な若者でも使いやすそう。3時間タイプのミニタイプとかアウトドア用の吊り下げタイプとか。ものすごいバリエーションなんだムキ。

あずき:へえぇ。ぼく、今度、キャンプ行くときに持っていってみよう。楽しみだな~。

パイン:ダメだぬきも、「金鳥の渦巻」にハマりそうね。フフフン。

令和の夏、コンビニで日本の原風景を見つけました

こんな風に、おばあちゃんと一緒に使った思い出、キャンプで使った記憶、そして夏に必ず流れるテレビCMの相乗効果で、日本人のDNAには「蚊取り線香」がインプットされているのではないのだろうか、なんて私は考えてしまうのだ。「金鳥の夏 日本の夏」と聞くと花火が浮かぶ、と言うと年齢がばれてしまうか。

デジタル全盛期だからこそ、アナログに惹かれる人が増えているのか? 人里離れた山奥で、昔ながらの生活を続ける人たちを取材するテレビ番組「ポツンと一軒家」が人気だと言う。「コンビニで、ぽつんと蚊取り線香」を発見したのも同じ理屈なのかもしれない。この光景、いつまでも消えないでいて欲しいな。

関連リンク:蚊取り線香初耳少女「やよい」が聞く!蚊と倭族の戦いの歴史(金鳥目線)|大日本除虫菊株式会社

書いた人

身長144cmの小さなデザイナー。すだち、阿波踊りが外せない徳島県出身。祭り、神社仏閣、歌舞伎、旅にお酒好き。新橋の立ち飲み居酒屋で、呑み友達とくだらない話をしながらお酒を飲んでいると笑いの神が降臨。お酒の失敗談で本が出せます。