Culture
2019.11.26

こんなこたつが欲しかった!だらだライフをスマートに楽しめる、無垢材こたつが超カッコいい!

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四国の香川県といえば、言わずとしれた「うどん県」ですが、じつは「こたつ県」でもあることをご存じでしたか? エアコンの普及や洋風の住宅のひろがりにともなってこたつの国内生産量は減少傾向にありますが、香川県ではいまでも職人の方がたがこたつを作り続けています。

ユニークな社長のもとでこたつ作りにはげむ

日美株式会社は、香川県で大正12(1923)年に創業、1979(昭和49)年からは家具製作も行っています。腕のよい職人の方がたが日々、実直に製品を作り続けています。その日美が「Nichibi Woodworks」として手掛けているのが、トレンドのインテリアにもマッチするおしゃれな国産の「こたつ」です。

日美の東京支社で「Planning / Designer」として仕事をしている岩切明日香さんによれば、現在日美には男性15名、女性2名が在籍し、50代前半(中堅は30~40代)で平均キャリア15年くらいの方が多いそうです。職人の方の中には、家具やこたつの業界とは異なるバックグラウンドを持った方が多数いて、運送業、飲食業、書店、塗料会社、家具屋、漆器メーカーの営業などをされていたそうです。ちなみに、漆器も香川・高松の伝統工芸品です。
社長の白井正人さんの経歴もユニークです。白井さんは4代目の社長ですが、はじめて創業家以外の出身で社長になったかたとのこと。バンドでメジャーデビューを目指して上京したそうですが、諸事情から地元香川に戻って配送アルバイトとして日美に入社。その後職人となり社長まで登りつめたとか。なお、現在もバンドは継続中だそうです。
そんな白井さんのもとで働く職人の方のことを社長は「希望、夢、財産、チャレンジャー」として認識しています。これはどういう意味なのでしょうか。岩切さんの解釈では「日美はものづくり企業で職人はその源。日美の工場は年々作るものや作り方、考え方が大きく変化してきています。こたつ市場の縮小の影響を職人たちも受けていますが、負けずに新しい技術にチャレンジしたり、新しい商品を生み出したりしてきました。社長をはじめ、新しいことにチャレンジする風土が日美の職人にはあると思います」。なるほど、こうした思いが新しいこたつづくりにつながっているのですね。

インテリア畑出身の担当者がしかけた未来のこたつ

岩切さんが手がけているのは「Folivora」というシリーズです。これは、岩切さん自身の「無垢材オイル仕上げのモダンなこたつを作りたい!広めたい!」と思いから作られ始めた商品です。以前、都内のインテリアショップで働いていた岩切さんは、そのお店で扱っていた、「木の質感を感じられて使い込むことで風合いが増し、シンプルかつスタイリッシュなデザインの無垢材の家具」にとても愛着を持っていたそうです。また、冬はもちろんこたつ派で、ソファでもゴロゴロできるかを考えていました。しかし、4、5年探しても思うようなこたつは見つからず、特注でも作ってもらうことができませんでした。

そんな時に、当時は取引先だった日美と出会い「作ってみましょう」と言ってくれたことから、そのお店のオリジナル商品として無垢材オイル仕上げのこたつを企画開発することに。また、テーブルだけではなくこたつ布団もモダンなインテリアに合わせられるものをと考え、あわせて開発しました。出来上がったこたつは、「冬のこたつ」だけではなくリビングテーブルとして年間売上No.1商品になり、他のインテリアショップからも取り扱いたいと要望が出るほどの人気商品となりました。

その経験から「やっぱりモダンなインテリア」と「こたつ」の両方が好きな人はたくさんいると確信し、既存のこたつとインテリアで新しい組み合わせができないかと夢が膨らみ、なんとインテリアショップを辞めて日美に転職! 日美入社後に立ち上げたブランドが「Folivora」なのです。そして、岩切さんは新時代のこたつの伝道者となり、日々あたらしいこたつの普及に励んでいます。

「こたつテーブルは、『こたつにしてはいいね』ではなく『テーブルとしてもほしい』と思ってもらえることを意識しています。また、こたつ布団を掛けているときは天板しか見えないので、その状態でも野暮ったく見えないよう、天板のデザインに気を配っています」(岩切さん)

Folivolaブランドでつくられるものには素材的な特徴があります。それは「無垢材(特にオイル仕上げ)」の使用と、これまでのこたつにはなかった「素材感(モルタル調塗装)」です。無垢材のオイル仕上げ自体は無垢の家具が好きな方にとっては、木の自然な質感や使い込む楽しみ(経年変化)があるので人気ですが、「熱を持つと木が割れたり反ったりする」リスクがあるため、こたつにはつかわないメーカーがほとんどでした。また、岩切さんには「こたつは和室のものという根強いイメージを覆す素材を使いたい」という思いがありモルタル天板を検討していましたが、ひび割れやコストの観点から、こたつに使うには難しい素材でした。

そんな中、岩切さんの強い気持ちをくんでくれたのが社長でした。岩切さんが企画したモルタル天板のこたつを元に、社長がモルタル調塗装を編み出してつくりあげてくれたとき、感慨はひとしおだったそうです。こたつ県の職人と東京のインテリア好きな女性がこたつをとおしてつながる……こたつはやっぱりあたたかさを運んでくれる家具なのです!

ことしのこたつのトレンドは!?

こうして、社長をはじめとした職人のみなさんと、岩切さんはこの冬も新作のあったかい家具を送り出します。いくつかご紹介しましょう。

LENIS kotatsu table(レニス こたつテーブル)
「LENISは、美しいシルエット、丸みのある優しい手触りを大切にしつつ、シャープな雰囲気も意識してデザインしました。また、これまでにはなかった高さ55cmも選べる「ソファに座ったまま入れるこたつ」です(岩切さん)

IKKE floor chair(イッケ フロアチェアー)
“IKKE”はデンマーク語で、英語でいう”NOT”を意味し、あきらめ「ない」という思いをこめたそうです。「『座椅子』はちょっと野暮ったく感じられがちな家具ですが、見た目と座り心地の両立を心がけてつくりました。IKKEは、身体を預けてリラックスできることそれでいて圧迫感がなくスタイリッシュであることそのどちらもあきらめない!と思いながらデザインしました」(岩切さん)

YUL dining kotatsu(ユール ダイニングコタツ)
新たなカテゴリ「ダイニングこたつ」です! 従来のこたつと同様にヒーターが搭載されており、ダイニング用のこたつ布団を挟んで使用します。「ダイニングのこたつは『高暖卓(たかだんたく)』と呼ばれ、立ち座りが楽なため、年配層を中心に売上を伸ばしている市場ですが、そのために年配の方向けのデザインが多いのです。そこで、若い世代の方に訴求できるチェアに座って使えるこたつ、という新たな提案をしていきたいと考えています」(岩切さん)

ゴロゴロをより楽しむために

主に洋風のこたつを手がけてきた岩切さんですが、いまは「床座」の文化に注目していると話します。「ゴロゴロしながらテレビを見て、手を伸ばせばスナックとお酒とティッシュに手が届くような、ダラダライフをスタイリッシュなインテリアで実現できたら、と考えています」(岩切さん)

また、こたつが団らんを生む場所として、さらに家庭を飛び出したところでも使えるようにならないかを考えているそうです。いわば「新しいこたつの使い方」。今後さらに模索していきたいといいます。そんな岩切さんが伝えてくれた社長のメッセージ「廉価品の大量生産時代を経て今に至りますが、今後はより「こだわり・個性」を重視したものになっていくと思います。素材=自然の恵みをいかに生かすか、職人達の自主性を大切に日々葛藤しています」という言葉の中に、新しいものを生み出しつつも伝統を守る職人の矜持をつよく感じました。

だらだら・ごろごろを誘い、「人をだめにする家具」ナンバーワンとも言われるこたつが、こんなにたくさんの強い思いをこめて作られていることを知り、この冬はもっと気合を入れてだらだらしようと思った次第です。家のつくりが洋風だからとあきらめていたこたつファンの皆さんも、ソファに座りながら使えるこたつをぜひ試してみてください。

「うどん県」だけじゃない「こたつ県」から、暖かい空気がきっと今年の冬も日本中にひろまる予感がします。

 

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