Culture
2020.05.20

2024年の冬至はいつ?なぜゆず湯に入るの?由来や意味を調べてみた!

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冬至は「二十四節気(にじゅうしせっき)」の一つで、1年で最も昼が短く、夜が長い日です。2024(令和6)年は12月21日(土)が冬至です。

冬至と言えば、かぼちゃを食べ、柚子湯に入る日として知られています。
かぼちゃを食べるのは、冬至を1年の締めくくりの日ととらえ、「いろはにほへと」の最後にあたる「ん」の付くものを食べるのが良いという縁起担ぎです。
その中でも、「かぼちゃ(南瓜:なんきん)」「人参(にんじん)」「蓮根(れんこん)」「銀杏(ぎんなん)」「金柑(きんかん)」「寒天(かんてん)」「うんどん(うどん)」の「ん」が重なる食べ物は、「冬至の七種(ななくさ)」と呼ばれ、特に縁起が良いとされていました。

それでは、冬至に柚子湯に入るのにはどういう理由があったのでしょうか? この記事では、その謎を探っていきます。

旧暦では、冬至は11月!?

冬至は「太陽の偉大なエネルギーが復活する日」であり、「一陽来復(いちようらいふく)」とも言われます。この日は太陽が復活する日として、全国各地で盛大な「冬至祭」が行なわれる日でもあるのです。

太陽を神と見なし、あらゆる生命の維持を日の力に求める古来の人々には、その力が最も弱まる日と考えられました。そのため、「鎮魂(たましずめ)」「魂振(たまふ)り」の呪術を行い、日の力を再活性化させることを行いました。

旧暦の冬至は、霜月(しもつき、11月)にあたり、11月15日頃でした。
宮中では、11月の下の「卯の日」(三卯の月には中の卯、新暦採用後は11月23日)の新嘗祭(にいなめさい)の前日の「寅の日」に、鎮魂祭が行われました。

民間でも、全国的に霜月に各種の祭祀が催されることが知られています。
大釜に湯を沸かし、これを中心に神楽を舞い、その湯を用いて神事を執り行うのはその典型的な様式で、愛知県東栄町(とうえいちょう)の花祭、長野県飯田市遠山郷の霜月祭、長野県天龍村(てんりゅうむら)の霜月神楽などが特に知られています。
こうした「湯立神楽(ゆだてかぐら)」の源流は、近世まで行われていた伊勢神宮外宮の神事にあったと言われています。いずれも魂が身から離れ、生命力が弱まることを危ぶみ、鎮魂・魂振りを行う再生の儀礼の意味を持つと考えられています。

一方で、冬至はそこから徐々に日が長くなる折り目にもあたり、そのため、これを年の初めと見なすこともありました。旧暦で霜月を十二支の最初である子の月とするのはそのためです。
東京都西早稲田にある穴八幡宮(あなはちまんぐう)では、冬至から節分の日まで毎日「一陽来復」の御守を配布しています。

東京都新宿区西早稲田にある穴八幡宮

「一陽来復」の言葉は、『周易本義(しゅうえきほんぎ)』に由来するとされ、その意味は陰が極まり陽が復すること、すなわち、冬が終わり春が再来することです。
1年で一番太陽の力が弱まる日ということは、つまりは翌日から確実に日が強く長くなっていく日。このことから「太陽が生まれ変わる日」ととらえ、「冬至」を境に上昇運に転じる、ともいわれます。1年のなかでも大切なこの日、運をさらに上昇させるために、いろいろな食習慣やしきたりがあるのです。

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柚子の歴史

柚子は、ミカン科の常緑半高木です。柑橘の一種で、中国・揚子江上流が原産と言われ、日本へは奈良時代か飛鳥時代に朝鮮半島を経由して渡来したと考えられていますが、詳細は不明です。当時は、薬用などの用途で栽培されていました。
柚子は柑橘の中では耐寒性に優れているので、北は青森県の海辺まで生育します。

柚子の大馬鹿十八年?

ことわざに「桃栗三年柿八年」というものがあります。意味は、植えてから実がなるまで(収穫まで)に何年かかるかを並べたものです。比喩的に、物事は一朝一夕にできるものではない、それ相応に時間がかかるものだという教えが含まれているそうです。

実は、「桃栗三年柿八年」に続きがあることをご存じでしょうか?
よく言われるのは、「柚子の大馬鹿十八年」。植えてから実がなるまで18年もかかっては、生産者もたまったものではありません。だから「大馬鹿」なのでしょう。この言い回しを積極的に色紙に書いたのが、『二十四の瞳』の作者・坪井栄(つぼい さかえ)でした。小豆島(しょうどしま)には、この石碑が建立されています。

なお、さらに長い言い回しとして、「桃栗三年柿八年、梅は酸い酸い十三年、梨はゆるゆる十五年、柚子の大馬鹿十八年、蜜柑のまぬけは二十年」というものもあるようです。

江戸っ子は柚子湯を楽しんでいた!

柚子湯の起源は明らかではないのですが、日本では、冬至の日に柚子湯に入ると「風邪をひかずに冬を越せる」と言われています。

柚子湯に入る習慣は、意外に新しく、銭湯ができた江戸時代から始まったと言われています。
天保9(1838)年に刊行された、近世後期の江戸と江戸近郊の年中行事を月順に解説した『東都歳時記』(斎藤月岑(さいとう げつしん)編)には、11月に

冬至。星祭。今日諸人餅を製し、家人奴僕にも与えて陽復を賀す。又来年の略暦を封じて守とす。今日、銭湯風呂屋にて柚湯を焚く

とあります。

斎藤月岑編『東都歳時記』(江戸歳事記 4巻 付録1巻) 国立国会図書館デジタルコレクション
右ページに「冬至 星祭」、左ページの中央付近に「今日、銭湯風呂屋にて柚湯を焚く」の文字が見えます。

5月5日の「端午の節句」の菖蒲湯も同様で、現在も街の銭湯に受け継がれています。

身を清めるために、柚子湯に入る?

柚子(ゆず)=「融通がきく」、冬至=「湯治(とうじ)」。こうした語呂合せから、冬至の日に柚子湯に入ると言われていますが、もともとは「一陽来復」の運を呼びこむ前に、厄払いするための禊(みそぎ)だと考えられています。現代でも、新年や大切な儀式に際して入浴する風習があります。

冬が旬の柚子は香りも強く、邪気を祓うという俗信もありました。
また、柚子は実るまでに長い年月がかかるので、「長年の苦労が実りますように」との願いも込められているのです。

柚子湯の効能

江戸時代に銭湯で客寄せのため、冬至の日に柚子を入れたのが柚子湯が始まりと言われていますが、現在では柚子の様々な効能が明らかになっています。

柚子湯には血行を促進して冷え性を緩和したり、体を温めて風邪を予防したり、果皮に含まれるクエン酸やビタミンCによる美肌効果があると考えられています。

柚子湯は、柚子の果実を丸のままお湯に浮かべる光景がイメージされますが、柚子の薬効による様々な効果を得るためには、柚子を細かく刻んでさらしの袋に入れ、湯に浮かべるのがよいとされています。この柚子入りの袋で体をこすると、柚子独特のよい香りの癒し効果とともに、肌を滑らかにする効果があります。

柚子の果汁や果皮には多くの栄養が含まれています。お肌に良いと言われているビタミンCの含有量は柑橘類の中でもトップクラスです。
柚子100g中に含まれる果汁のビタミンC含有量は40mgですが、果皮には150mgと特に多く含まれています。ビタミンCは肌の保水性を高め、抗酸化作用を有することから、乾燥肌の予防や老化予防が期待でき、肌を守るバリア機能の効果が期待できます。

柚子を果皮ごと食べることはほとんどありませんが、柚子を浴槽に入れることで、ビタミンCが果汁・果皮両方から湯に溶けだします。ビタミンCが溶け出した柚子湯に入ることでお肌の手入れができてしまうのです!

また、柚子の精油(エッセンシャルオイル)には、柚子独特の爽やかで優しい香りが含まれています。香り成分は揮発性のため、お湯に入れるとさらに香りがたち、リラックス効果も期待できます。

柚子湯に入って、体も心も温まろう!

柚子は1年中売られていますが、10月頃から出荷量が増え、12月頃にピークを迎えます。
果皮にツヤとハリがあるもので、持ったときに重みを感じるもの、果皮全体が黄色く色づき、傷や黒ずみがないものを選ぶのがコツだとか。

柚子はその独特の爽やかな香りと果皮の色合いで、日本料理には欠かせない重要な食材として、人々の五感に触れてきました。

最近は、柚子のエッセンシャルオイルや入浴剤なども販売されており、柚子の香りを手軽に楽むことができます。
元気に冬を越すためにも、この冬は、柚子湯で心も体も温まってみませんか?

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主な参考文献

書いた人

秋田県大仙市出身。大学の実習をきっかけに、公共図書館に興味を持ち、図書館司書になる。元号が変わるのを機に、30年勤めた図書館を退職してフリーに。「日本のことを聞かれたら、『ニッポニカ』(=小学館の百科事典『日本大百科全書』)を調べるように。」という先輩職員の教えは、退職後も励行中。