舞台は歌舞伎町!ブラックノワールな日本映画「初恋」三池崇史監督の狙いとは?

舞台は歌舞伎町!ブラックノワールな日本映画「初恋」三池崇史監督の狙いとは?

たった一晩で人は変われる――。
日本公開に先駆けて世界で絶賛!三池崇史監督の「初恋」がいよいよ2月28日(金)に公開。三池監督の撮りたいものをという東映からのオファーを受けて出した答えは「ラブストーリー」。
主演は三池監督に見いだされ、今や日本を代表する俳優の一人となった窪田正孝氏。二人が参加した外国特派員記者会見に潜入してきました!

三池流ラブストーリー!「初恋」あらすじ


一皮めくれば人間の欲望が顔を出す新宿・歌舞伎町。天涯孤独のプロボクサー・葛城レオ(窪田正孝)は格下相手との試合でまさかのKO負け。試合後に受けた診察で、余命いくばくもない病に冒されていることを告げられてしまう。
あてどなく街を彷徨うレオの目の前を、少女が駆け抜ける。「助けて」という言葉に反応し咄嗟に追っ手の男を叩きのめしてしまう。しかし男は刑事! レオは懐から落ちた警察手帳を手に取ると少女に腕をひかれ現場を後にする。少女はモニカ(小西桜子)と名乗り、父親に借金を背負わされていることを明かす。さっきレオが倒した刑事・大伴(大森南朋)は、ヤクザの策士・加瀬(染谷将太)と裏で手を組み、ヤクザの資金源となる“ブツ”を横取りする計画を立てていた。そのためにモニカを利用しようとしていた。

ヤクザと大伴の双方から追われる身となったレオは、一度はモニカを置いて去ろうとするも、どうせ先の短い命と、半ばヤケクソで彼女と行動を共にする。
モニカと共に資金源の“ブツ”が消えたことで、古いヤクザの権藤(内野聖陽)、敵対するチャイニーズマフィア、恋人を殺されたジュリ(ベッキー)、とんでもない争いに巻き込まれたレオとモニカの「人生で最も濃密な長い一夜」が幕を開ける!

「初恋」のタイトルに込められたわけ……外国特派員会見から


先に試写会が行われた今回の会見。ヤクザ、バイオレンス、「ブツ」などのアウトロー“ブラックノワール”な世界を描きながら、観客から笑い声が絶えない!今回は字幕を付けての上映でした。
特にヤクザの策士・加瀬のコミカルかつ吹っ切れた演技から繰り出されるブラックジョークには、こらえきれなかったという風な笑いも起きていましたよ。

セッティングが終わったところで、窪田正孝さんと三池崇史監督が登壇。お揃いのオリジナルTシャツ姿でした。
会見では次々に手が挙がり、通訳さんが訳すのが大変なほどの熱気ぶりです。まずお互いの印象を聞かれた三池監督と窪田さん。

三池監督:お互い共通しているのは、ずっと現場に入っている、走り続けているから、10年も経ったと言われるともうそんなに……?と思うくらいですね。ああでも、10年経って、僕は鏡を見ると老けてて、窪田くんは男前になって出世している、神様って冷たいなあと思いましたよ。

窪田さん:監督は10年前に比べたらサングラスの色も薄くなったし、雰囲気が柔らかくなりました(笑)。なんて言いましたけど、この10年、他の現場に行くことで、監督の遠さや、現場の魅力を感じることもありました。今回参加できてよかったです。

と、信頼関係が感じられるイジり合いのコメントが飛び出しました。「初恋」というタイトルに込められた意味を聞かれた三池監督。

三池監督:タイトルと窪田くんのポスターで勘違いして見に来てくれる人もいるかなと思って。

との答えに、会場は笑いに包まれました。


あらすじからわかる通り、この映画はヤクザ、チャイニーズマフィア、“ブツ”が交錯するハードボイルド映画。英語の字幕を追いながら観ていましたが、日本語のせりふからだいぶまろやかにされているにも関わらず「Fワード」が字幕に踊っていました。

それでもちゃんと「初恋」の映画です。見終わったあと「この内容がたった一晩の出来事とは」と唖然とするはず。

日本映画と海外~世界の「MIIKE」が思うこと~


今回はプロデューサーに「戦場のメリークリスマス」などを手掛けた、ジェレミー・トーマス氏が参加しています。アジア映画が国際的な存在感を高めている昨今、インターナショナルなプロデューサーと組むことについての質問が出ました。

三池監督:彼はとっても信頼できるプロデューサー。我々のやり方を理解し、尊重してくれる。そのうえで日本人の映画として世界に出してくれる、こういう人は少ない。幸せだと思う。

実はこの映画、海外公開版と日本公開版と2パターンあるそうです。海外に出すということは、ある種戦略が必要なこと。実際、「初恋」はカンヌやトロントなどの名だたる映画祭に出品され、絶賛を浴びています。ちなみに窪田さんは撮影時には国際的な作品である、といったことは意識せず、とにかく現場に集中していたとのことでした。

会見の後半、「途中いきなりアニメーションが入ったのはなぜか」という質問が。格闘シーンや爆発、カーチェイスなどもふんだんに盛り込まれたこの映画。カースタントのシーンの一部はアニメーションで表現されており、アメコミチックな表現とポップなカラーリングが強烈な印象を残します。

三池監督:カースタントの人々が高齢になってきているから、ああいうシーンをやらせると腰に負担がかかるんですよ(笑)。それは冗談だけど、今の日本映画は危険な行為を避ける傾向にある。だからと言って、脚本にある、表現したいものをどう削らずに実現するか。苦肉の策ではありました。

「クリエイティブであるかどうか」を常に考えるという三池監督。かなり挑戦的な作品でもある今作を通じて、日本映画が抱えるジレンマがかいま見れた質問でした。

映画館で映画を見るという「体験」――三池監督と東映が追及する日本映画

三池監督といえば、その作品の幅広さでも知られています。バイオレンスやアクション、ホラーに時代劇、人気アニメ・コミック原作、果ては女児向けのテレビドラマまで、本当に同一人物の作品なのかと思うほど。4年目に突入した女児向けシリーズと、この「ラブストーリー」との差異についての質問も飛び出しました。

三池監督:最近手掛けているドラマシリーズでは、暴力ではなく、愛で問題を解決する。人を愛する力で生きていきましょう、というメッセージの作品で、これも確かに自分の中にあるんですね。一方で、ばかげていて、おろかともいえるような生き方の中に、確かに光るものがある。こういうものも、憧れます。映画監督にはそれぞれ得意なジャンルがあって、普遍的なテーマと格闘するものです。僕はホラーやバイオレンス、いろんなものを撮ってきていますが、台本の中から探すものって、どのジャンルでもあまり変わりません。人はさして変わらないことで苦悩し、幸せを求めているんです。

リモートワークなどが話題になったことを受け、ストリーミングや配信で映画を見ることについての質問も。

三池監督:映画館に行くということ自体が僕の思い出、記憶に結びついている。もしかしたら映画館で映画を見るというのは、古いことかもしれないけど、僕自身は劇場用映画を作り続けたいと思っています。

荒波をバックに東映のロゴマークが流れるスタート、ヤクザ映画の一時代を築いた東映ならではのヤクザシーン。製作会社である東映の「自分たちにしか作れないものを」という矜持を感じるこの映画。
くどいようですが、タイトルは「初恋」です。主人公たちアウトローな世界に巻き込まれながら、幸せを求めて生きていく。

もしかしたら、この映画は、失われかけた日本映画の「初恋」を追い求めた作品でもあるのかもしれません。

現実を忘れてスカッとできる!映画館という体験


「初恋」は、たった一晩の話。主人公のレオ、ヒロインのモニカの人生は、この一夜でがらりと変わります。レオは人を愛することを覚え、モニカは諦めていた自分の人生を生きなおす覚悟を決める、二人の変化はすがすがしい印象を残します。もっとも、その傍らで、人生が逆の意味でひっくり返った人々の屍が積まれているのですが……。
目にもとまらぬスピード感で走り抜ける、ダークなテーマながら爽快感溢れるこの作品。映画館で見る醍醐味がたっぷりと味わえます。

大人たちが追い求めた「初恋」を観に、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

「初恋」公式HP

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