鈴木春信? 喜多川歌麿? 昔歴史の授業で出てきた、かも。という方に。これを聞けば彼らのチャレンジ精神に元気をもらえるはず。
『和樂webの日本文化はロックだぜ!ベイベ』は、「日本文化に対して先入観がある人々を解放し、日本文化をもっと気軽に楽しんじゃおう」というコンセプトの音声コンテンツ。和樂web編集長セバスチャン高木(以下、高木さん)が色んな雑談を交えて日本文化をPOPに語ります。ここでは講義ノートとして、お話の概要を公開!
第2回は描いた作品も、人生も魅力的! キング・オブ・ポップ葛飾北斎について取り上げました。
北斎こそがキング・オブ・ポップだ!ってホント?【日本文化はロックだぜ!ベイベ】vol.2
今回からしばらくは、『浮世絵スーパースター列伝』と題し、浮世絵の世界を彩ったスター絵師たちをご紹介。中でも今回は浮世絵の主要画題である美人画、その革命者鈴木春信(以下、春信)と喜多川歌麿(以下、歌麿)についてお話します。
ここがすごい!春信3つの魅力
錦絵(多色摺の浮世絵)を発展させたのが春信です。従来のモノクロや2色摺だった浮世絵にカラフルな錦絵を発展させたことから、高木さんは「元々あった漫画にストーリー漫画の第一人者となった手塚治虫のようだ」と言います。私は葛飾北斎や東洲斎写楽の方が有名なイメージがありましたが、春信もすごかった! 具体的にその魅力をご紹介します。
春信の魅力①豪華
それまでモノクロだったものが春信の錦絵では6色摺りなど、かなり華やかになりました。浮世絵と聞くと一般的にイメージされる、カラフルな作品は春信によって発展したのです。
ほかにも、から摺り(現代あるエンボス加工のようなもの)や、きめ出しという紙自体に凹凸をつけるなど、様々な技法が込められたのが春信の浮世絵でした。当時、春信の作品は他の7、8倍の値段でしたが、すぐに売り切れてしまうくらい、大人気!
春信の魅力②ポエティック
こちらの浮世絵は、男女がひとつ傘の下、雪の中を歩いています。その様子からは背後のストーリーやふたりの心境を想像させる、切なさが漂います。実際、本作は心中しにいく場面を描いたものです。このような心理描写をする浮世絵はそれまでなかったそうです。
春信の魅力③見立ての手法を取り入れた
例えば、日本庭園では石だけで水の流れを表現する、千利休は魚をとる為に腰に付けていた籠(魚籠)を花入になぞらえるなど、日本人にとって馴染みの深い見立て。春信は浮世絵にその手法を取り入れます。
こちらは中国の『瀟湘八景(しょうしょうはっけい)』という8つの景色の図にならって『坐鋪八景』(ざしきはっけい)という座敷の中の8つの景色を描いたもの。
このように、さまざまな革命をおこしていたのですね!
美人画の頂点、歌麿
春信が亡くなった後に出てきたのが喜多川歌麿です。歌麿は幕府の改革による影響を受け、浮世絵に革命をもたらした人物です。
寛政の改革では贅沢が禁止され、浮世絵の紙を薄くする必要が生じます。春信のころに使われていた、奉書紙という分厚い和紙ではなく、薄い和紙になり、から摺りなどの技法が行えなくなりました。そこで歌麿は構図を工夫し、大首絵(おおくびえ)を生み出しました。
それまでの浮世絵は全身を描いていましたが、歌麿はいわゆるバストショットを描きました。アップになったことで、着物の柄や髪の毛などディテールが細かく描かれるようになり、絵の質は上がっていきます。確かに本記事内の菱川師宣の作品と見比べるとその差がよくわかります。
寛政の改革で幕府がもうひとつ禁じたのが、一般女性の名前を浮世絵に記すこと。当時の美人画には遊女と一般女性(浮世絵ではお茶屋の娘)の2種類があり、直に会える女性を描いたということで、一般女性を描いたものは爆発的な人気がありました。それを禁止され、歌麿は「このやろう!」と思ったのか、ある手法を取り入れます。それがトンチでした。
左上に描かれている絵は判じ絵という絵から言葉を当てるトンチになっています。「菜(な)」が「2輪(にわ)」で、「なにわ」。続く矢(や)はそのまま「や」と読み、その下に描かれた「沖(おき)」と「田(た)」を通して読むと「なにわやおきた=難波屋おきた」となります。
描かれた女性の艶っぽさも歌麿の魅力です! タイトルも色っぽく、女性の恋心を描いた『歌撰戀之部』というシリーズには、「物思戀(ものおもうこい)」「深く忍戀(しのぶこい)」「夜毎に逢戀(あうこい)」「あらはるる戀」「稀ニ逢戀(まれにあうこい)」があります。
反骨精神で幕府と戦ってきた歌麿ですが、豊臣秀吉の醍醐の花見を題材にした『太閤五妻洛東遊観之図』を描いたことがきっかけで、手鎖の刑に処せられます。それがきっかけで病気になったとされ、最後は仕事が集中したことにより過労死したと言われています。
ほかにも、浮世絵は幕府との戦いだったこと、また、それによって発展したジャンルがあったこと、「浮世絵スーパースター列伝」というタイトルに込められた高木さんの想いとは……などなど、聞きどころたっぷりの36分です。
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