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2020.10.04

鎖国が続いていたら日本のビールはこうなっていた?世界初・麹で醸すロックなビール!

この記事を書いた人

――もしもいまなお、鎖国が続いていたとしたら

海外からの文化や製品が入ってきていなかったとしたら、衣服や、娯楽や、住居はどんな感じだったのだろう。わたしたちはどんなものを食べて、何を飲んでいたのだろう……

誰もが一度は想像したことがあるかもしれない、パラレルワールド。
そんな「もしも」の世界軸を掘り下げていき、「鎖国下の日本で造るビール」を醸造しているブルワリーがあります。

和歌山県にある、オリゼーブルーイング。

世界初、麹でビールを醸すブルワリーです。

世界初の麹ビールってどんなビール?

通常、ビールは麦芽、水、ホップ、酵母の4大原料によって醸造されており、ビールの「アルコール」と「炭酸」は、酵母が麦芽の糖を食べることで生み出されます。

しかしオリゼーブルーイングでは、麦芽を一切使用しません。なぜならば、鎖国下の日本には、麦芽文化がなかったから!

麦芽から糖を生み出す代わりに、麹によって米や麦のでんぷんを糖に変え(糖化)、ビールを醸造しているのです。

―いまなお鎖国が続いていたとして、海外から帰ってきた人が『シュワシュワとした飲み口の“びいる”という酒があったんだが、造れるか?』と杜氏さんに持ち掛けたとしたら、一体どんなふうにしてどんなものを醸造するのか

そんな発想から生み出される、オリゼーブルーイングのビールは独創的でありユニーク。

米麹や麦麹を使った、独自の「オリゼースタイル」のクラフトビールを醸造しています(オリゼーとは日本の国菌である麹菌)。

その味わいは、まさに日本酒を彷彿とさせる芳醇さ!

麹はでんぷんを糖化するだけではなく、副産物としてアミノ酸やグルタミン酸を生み出すため、味に深みがでて通常ビールにはあまり感じられない、複雑な味わいの層を感じることができるのです。

例えば「JAPANESE WHITE No.9」

これは、米麹・米・ホップ・小麦を使用し、吟醸酒などで使用される酵母で醸造しています。

梨のような香りに、マスカットを思わせる味わい。麹の甘みやコク、複雑なうまみが口の中で上品に広がる、日本酒やスパークリングワインのような一本です。

そしてビールの世界大会である、インターナショナルビアカップにて銅賞を受賞した「ORYZAE PALE ALE」

麦麹、大麦、ホップによって造られるこのビールは、麦麹香る、日本酒のような風味の一本です。キリっとした炭酸の後に現れる酸味とふくよかな芳醇さ、そしてホップの苦み。いままで経験したことのない新しい味わいに、驚くこと間違いなし。

このように、オリゼーブルーイングは既成概念にとらわれない、自由で奥深い味わいのビールを造り出しているのです。

ビールの造り手は、麹に魅了された、麹作りのエキスパート

ではこの麹ビール、一体どのような人が造っているのでしょうか?

麹作りは、かつて「麹屋」と呼ばれる麹の専門店が存在していたように、とても複雑で手がかかる作業。現代では機械の参入によりだいぶ楽になったようですが、その作業をビール造りの工程に取り込むということは、並大抵のことではありません。

それを実現させたのが、オリゼーブルーイングの代表木下さん。醤油や味噌、日本酒の醸造など、様々な麹作りの経歴を持つ、麹作りのエキスパートです。

もともとはロックミュージックのベーシストだったという木下さん。

しかし偶然にも麹に出会い、その魅力に引き込まれていったといいます。

「最初、麹に出会ったときは衝撃的でした。普通に暮らしていたら嫌われるような「菌」を使って食べ物を美味しくするわけですから。しかし関わっていくうちに、育てる喜びを知り、そこから麹にハマっていきました。自分が魅せられた麹を、もっと身近なものとして多くの人に知ってもらいたい。そしてカジュアルに麹で遊んでもらいたい、そんな想いで新しい醸造の形を模索していました」

そんな木下さんが最終的に選んだのが、麹をつかったお酒造り。

麹のお酒といえば日本酒ですが、麹の世界において日本酒は格式が高く、音楽で例えればその立ち位置はクラシックやジャズ。

自身がやっていたロックやポップスに近いジャンルのお酒はなんだろうか、そう考えた結果クラフトビールを造ることを決めたそうです。

浮世絵ラベルも最高にロック

ロックな麹ビール

それはオリゼーブルーイングのビールを一口飲めば、きっとすんなりとわかるかと思います。

どのビアスタイルにも属さない、飲んだことのない味わい。

そして瓶を色鮮やかに彩る、浮世絵のラベル!

オリゼーブルーイングのラベルには、木下さんがアレンジを加えた浮世絵が使用されています。

「JAPANESE WHITE No.9」は安達吟光による、猫たちの宴会。

よく見ると、猫たちが楽しそうに飲んでいるお酒はビールに書き換えられており、宴を盛り上げる楽器はギターになっています。

「ORYZAE PALE ALE」は喜多川歌麿の芸妓がベース。

芸妓さんの髪は真っ赤に染められ、腕にはいかついタトゥー。そして着物にはホップが描かれています。

日本の文化をよりロックにポップに。

そんなオリゼーブルーイングの精神が一目でわかるラベルです。

麹の可能性は無限大。オリゼースタイルビールの可能性も無限大

大麦、小麦、米の他、カボチャやサツマイモなど、蒸して適度な湿度を保てる炭水化物であれば、なんでも麹は作ることができます。
つまり麹の可能性は無限大であり、そこに組み合わせるもの次第で多種多様なビールを生み出すことができるのです。

オリゼーブルーイングのビールは、尖っているもののどこか懐かしい味わいがします。それはきっとわたしたちが小さい頃から慣れ親しんできた、麹を使ったビールだから。

木下さんも、自身のビールを「みそ汁のようなものだと思ってください」と伝えているといいます。

食べながら飲むと、旨味がひろがるような相乗効果を感じられるオリゼーブルーイングのビール。

日本の古きよき文化を取り込みつつ、今後も様々なビアスタイルに挑戦していく、今後の彼らの展開から目が離せません。

「鎖国下の日本で造るビール」

是非一度味わってみてください。
オリゼーブルーイングHP

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書いた人

お酒をこよなく愛する、さすらいのクラフトビールライター(ただの転勤族)。アルコールはきっちり毎日摂取します。 お酒全般大好物ですが、特に好きなのはクラフトビール。ビール愛が強すぎて、飲み終わったビールラベルを剥がしてアクセサリーを作ったり、その日飲む銘柄を筆文字でメニュー表にしています。 居酒屋の店長、知的財産関係の経歴あり。お酒関係の記事のほか、小説も書いています。