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2019.12.16

刀剣ファンのプレゼントに!チョコレート菓子「鍔ちょこ」のクオリティがすごい

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人気ゲームの波及効果で、刀剣ブームが起きてから数年余り。ファンの多くにとって刀剣への関心の対象は、ひとえに優美な反りが入った刀身であり、「山鳥毛(さんちょうもう)」や「鬼切丸」といった名刀・妖刀にまつわるエピソードだと思います。

ですが、日本刀にはもう1つ別の面白さがあります。それが、刀身以外の部分、つまり刀身を収め、装う「刀装具」です。

刀装具には、手で握る部分の「柄(つか)」、柄につけられた飾り金具である「目貫(めぬき)」、刃を収める「鞘(さや)」などありますが、特に注目したいのが「鍔(つば)」。鍔とは、刀身と柄の間にあって、柄を握る手が刃へと滑るのを防ぐとともに、敵から防護する役割をなす刀装具のことです。

間もなく「鍔ブーム」が到来する?

鍔は、刀身から抜いたときの基本形状で「丸形」や「角形」(正方形)などバリエーションがあり、さらに精密な細工によって模様が彫られているものもありました。その模様の種類も実にさまざま。名のあるものだと、鍔自体が美術工芸品として、鑑賞の対象となっているほどです。

名工の制作した鍔は、ある種の花鳥画を見るようで、個人的には刀身自体よりも好きな世界です。また、刀装具の展覧会が開催されるなど、日本刀ブームで生まれたファンの中にも、鍔に興味を持つ人が増えていることをうかがわせます。やがて「鍔ブーム」が到来するかもしれませんね。

そんなトレンドの変化を察知したかのように登場したのが、チョコレート菓子「鍔(つば)ちょこ」です。これが産声を上げたのは、鎌倉時代からの名刀の生産地で、今も「刃物のまち」として知られている岐阜県の関市です。

今回は、この「鍔ちょこ」を紹介します。

百種以上からセレクトした5種の鍔を製品化

「鍔ちょこ」とは、鍔の形状と模様をベルギー産の高級チョコレートで再現したお菓子です。全部で5種類あり、価格は税込み1500円。2019年12月現在、関市内の販売店、名古屋栄のオアシス21などで販売されています。

「鍔ちょこ」全5種のラインナップ

「鍔ちょこ」は、関市の「日本刀アイスを作る会」が開発。同市で刀剣の販売修理を手がける「濃州堂」が取り扱う百種類以上の鍔から、5種類をセレクト。刀匠で本会メンバーの26代藤原兼房(加藤正文実)さん監修のもと市内メーカー「東海プラスチック」が型を作成。そしてお隣の美濃市のパティスリー「アベイユ・エス」がチョコ作りを、販売元はご当地牛乳メーカーの「関牛乳」が担当。これらすべて日本刀アイスを作る会のメンバーで構成されていて、まさにオール関市&美濃市の〝濃州〟で作り上げています。

パッケージを開けて本体を取り出すと、なるほど確かに鍔の形・デザインです。口に含むと、ソフトで滑らかな食感が広がります。今はやりのビターチョコと違い、苦みはほぼありませんが、甘ったるさもない上品な味わい。

5種類とも原材料は同じで味も同じですが、当然ながら形状は各々異なります。以下、元になった鍔について簡単に説明しましょう。

「三日月武蔵」

三日月をモチーフにした曲線美豊かな透かし鍔です。月は、美しい自然を意味する四字熟語「花鳥風月」に含まれているとおり、昔から日本人を魅了してきました。そのモチーフが織りなす妙を楽しめます。

名称に「武蔵」とあるのは、かの剣豪宮本武蔵がデザインしたのでは、という説があるからです。実は宮本武蔵は、絵画や彫刻にも才能を見せ、晩年は鍔の制作にも携わっていました。「三日月武蔵は宮本武蔵が制作した」説が本当かは、ちょっと怪しいのですが、鍔愛をかきたてられますね。

「三日月武蔵」

「鶴丸透かし」

鶴は、平安時代の昔から吉祥・長寿の象徴として扱われ、衣装から家紋に至るまで、さまざまなものに採り入れられてきました。「鶴丸」は、鶴が両翼を大きく揚げ、翼端が頭上で接したさまが「丸い」ことから、こう名付けられています。

このモチーフは、室町時代にはあったそうで、当時の武士にも人気があった定番とも呼べる鍔。本製品でも優雅でダイナミックな意匠を生かされています。

「鶴丸透かし」

「菊唐草」

奈良時代に、神聖な力を持つ薬用植物として中国から移入されて以降、愛され続けてきた菊の花。「菊、梅、竹、蘭」を四君子と呼ぶように、絵の画題としても好まれたのと同様、鍔でもよく見るものです。

一方で、唐草模様は、長寿・繁栄を連想させる蔓の生命力を表現したもので、菊と唐草を組み合わせた「菊唐草」は、縁起の良いありがたみのあるデザインと言えるでしょう。

「菊唐草」

「紗綾形(さやがた)」

ぱっと見て複雑な幾何学的文様ですが、実は漢字の「卍」(まんじ)を斜めに連ねた模様が紗綾形です。着物生地の地模様や襖(ふすま)でも多用され、メジャーな模様と言えるかもしれません。

鍔としては、幕府抱え工の武州伊藤派が得意としてきた図柄です。本来卍は、仏教では吉祥の象徴とされており、鍔にもその意味がこめられていました。

「紗綾形」

「正親梅」

梅は晩冬の寒さにかかわらず花を咲かせることから、古来生命力の象徴とされました。江戸期以降は「松竹梅」の一つとして、春の接近を告げる、おめでたい風物詩としてもてはやされました。

そのため、鍔のモチーフとしても梅は人気がありました。単独で使われるよりも、他の縁起のよい植物(松、竹、菊)と組み合わせることもあれば、「鶯宿梅(おうしゅくばい)」といって、うぐいすとセットになった鍔も残っています。「正親梅」は、梅の花々が単独で何輪も散りばめられた優雅な意匠です。

「正親梅」

どれも、刀剣ファンなら食べるのがもったいないと感じる、コレクションに加えたい逸品ですね。

「日本刀アイスを作る会」によれば、膨大な種類のある鍔から、これら5種を選んだのは、「定番で人気の高いデザイン」「日本らしくわかりやすい、縁起もよい」という理由からと、型抜きチョコとしての再現が難しすぎないという技術上の理由からだそうです。

また、当会事務局の加納さんは、「刀が使われていた当時も、武士のファッションの一部だったように、今の装飾品と変わらない“たしなみ”があったということを知りました。日本刀のまち関市らしいお土産作作りの一つとして、本当の鍔をかたどってしまったというこだわりと、誰もが親しみやすいスイーツで表現したことが、この商品の特徴です。パッケージは、マニアックにならないよう、可愛いらしさも加えました。見かけをおしゃれにすることで、多くの人に親しんでいただけると嬉しいです」とコメント。刀剣好きの友人に贈るお土産にも最適かと思います。

プロジェクトは「日本刀アイス」から始まった

「鍔ちょこ」生みの親の「日本刀アイスを作る会」の名称が気になったかと思います。この会は、関市の若手経営者らが結成した有志団体で、名称のとおり最初は、「日本刀アイス」を作るために誕生したそうです。

「日本刀アイス」とは、2016年12月に関商工会議所青年部が開いた「ジュニアビジネスプランコンテスト」で、2人の高校生が、地域活性にもつながる新商品案として発表したのがそもそもの発端。若手経営者ら18人が本会を結成して開発に着手したという経緯があります。

「日本刀アイス」は、見た目は日本刀。長さ25cmの刀身がアイスで、鍔がチョコレートでコーティングしたクッキーとなっています。好評につき、毎年新フレーバーが登場し、2019年は「淡麗チョコミン刀」が出ました。

食べてみると、独特のもっちり感があります。これは、和菓子にも使われる葛(くず)が原材料のため。溶けにくく、真夏でもゆっくり食べて安心なのもセールスポイントの一つだとか。こちらも関市内での販売価格は税込み1000円です。

「日本刀アイス」(奥がゆず味、手前がチョコミント味)

プロジェクトの第2弾は「玉鋼ビスコッティ」

「日本刀アイスを作る会」が、「日本刀アイス」の次に出したのが、「玉鋼(たまはがね)ビスコッティ」です(税込み850円)。

玉鋼とは、伝統的なたたら製鉄でできた、日本刀の原料となる良質な鋼のこと。やや光沢を帯びた石炭のようですが、この見た目をかなり忠実にビスコッティに仕上げました。外観から、「かなり固いのでは?」という第一印象とは裏腹に、サクサクした噛み心地でクセがありません。ちなみに主原料は小麦粉でなく、関市産の奨励品種ハツシモから作られた米粉だそうです。

「玉鋼ビスコッティ」

そして、「日本刀アイスを作る会」の第3弾プロジェクトとして日の目を見たのが、先般発売された「鍔ちょこ」となるわけです。

いかがだったでしょうか? 刀剣ファンの聖地めぐりで関市を訪れた際には、ぜひとも手に入れたいお品ばかりだったと思います。関市探訪の折には、チェックしておきましょう。

・「日本刀アイスを作る会」公式サイト:http://katanaice.com/
・「日本刀アイスを作る会」公式Twitter:https://twitter.com/katanaicecom

書いた人

フリーライター。北国に生まれるも、日本の古くからの文化への関心が抑えきれず、2019年に京都へ移転。趣味は絶景名所探訪と美術館・博物館めぐり。仕事の合間に、おうちにいながら神社仏閣の散策ができるYouTube動画を制作・配信中→Mystical Places in Japan