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2020.02.18

最強のパワーフード「芋がら」とは?戦国武将から産後の女性まで支えてきた食材の魅力

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「腹が減っては戦はできぬ」という言葉にもあるように、戦国武将にとって何を食べるのかは戦いの勝ち負けを決めるほどに大切なもの。どんな食べ物が好まれていたのか、気になるところですよね。

過去の和樂webの記事では「戦中食」がたびたび紹介されていますが、戦国武将の必須アイテムのひとつに「芋がら縄」というものがあります。

実はこの芋がらは戦国武将だけでなく、古くから女性の健康を守る食材として重宝され、ごはんの友にもぴったりの食材であることをご存知でしょうか。

今回は、今見直したい芋がらの魅力についてご紹介したいと思います。

戦国武将の必須アイテム「芋がら縄」

ではさっそく。戦国武将に好まれた「芋がら縄」とは、一体どんなものなのでしょう。

一言で言えば、芋がらを編んで味噌で煮たものを乾燥させたもののこと。必要に応じて、ある時は縄として、またある時はお湯などで溶かして味噌汁として使っていたと言われています。

食べ物なのに道具としても使える⁈

言わば「一人二役」のアイテムなので、多くのものを持ち運べない戦場ではとても助かりますよね!さらに「すぐに食べられる」「栄養価が高い」ということも芋がらが重宝された大切なポイント。これこそ、戦国武将の強さの秘密と言えるかもしれません。

また、芋がらの茎の部分はスポンジ状になっているので、味噌などの汁気を含みやすいのが特徴です。つまり、芋がら縄を噛みしめると旨味がじわりと感じられるということ。常に緊張にさらされている戦場のなかで、戦国武将たちの心身の疲れを癒していた様子が想像できます。

ところで、芋がらって何?

「芋がらという名前を初めて聞いた」という方のために。芋がらは、八ツ頭や赤芽芋など里芋の葉や茎の外側の皮を取ってから乾燥させたもののことです。生のものは「ずいき」と呼ばれていますが、「芋がら」も通称として「ずいき」と呼ばれることがあります。

とても地味な見た目をしているので「これ食べられるの?」「美味しいの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません笑。でも、好きな方の間では「こんなに美味しいものはない」と絶賛されるほどの食材です(かくいう私も芋がらが大好き。その魅力を伝えたいと思いながら、この記事を書いています)。

流通量が比較的多いのは八ツ頭を使った「赤ずいき」で、加賀の伝統野菜としても知られています。他にも全国的に有名なのは、奈良の伝統野菜「軟白ずいき」や山形県の芋がらの郷土食など。種類や呼び方は違っても、昔ながらの食材として人々に親しまれてきました。

収穫時期は、初夏から夏にかけて。お盆の近くにはスーパーなどで生のずいきを見かけることもあります。ただし旬の時期が限られているので、一般的には乾燥させて使うことが多いようです。

気になる栄養ですが、芋がらは不溶性食物繊維を豊富に含むためお通じの改善や、赤色の芋がらに含まれる「アントシアニン」には眼精疲労の改善にも効果が期待されています。

「血の道を通す」という、おばあちゃんの知恵

「芋がらは『血の道を通す』『古血を洗う』」「女性は積極的に食べるといい」というおばあちゃんの知恵を聞いたことはありませんか?特に「産後の女性には芋がら」「芋がらを食べると回復が早い」と昔からよく言われています(私自身も産後1ヵ月は毎日のように食べ、そのおかげか順調に回復していきました)。

本などで調べてみると東北地方や北陸地方などでの食習慣のようですが、身近な方に話を聞いてみると私が暮らしている愛知県や岐阜県などでも産後に芋がらを食べる習慣があるようです。

産後は新しい命が誕生した喜びを感じる一方で、環境の変化が大きく心身が疲れやすい時期でもあります。芋がらを使った民間療法は、そんなデリケートな時期の女性たちをやさしく守り続けてきたと言えそうです。

芋がらを使った三重の漬物「くき漬け」

三重県には、夏になると八ツ頭の芋がらを使った漬物「くき漬け」がよく食べられます。しっかりアク抜きをした芋がらを赤紫蘇と梅酢(※)に漬け込んだ色鮮やかな漬物です。酸味と塩気が夏の身体に染み込む美味しさ!ごはんとの相性も抜群で、食欲を高めてくれる一品です。

「くき漬けがあれば、おかずナシでもごはん2杯は食べられる」という声もあり、故郷を離れて暮らす人も取り寄せするほど地域の人々に愛されています。

*梅酢とは...梅干しを漬ける時にできるもので、梅の実を塩漬けにした汁。梅のエキスが凝縮しており、身体にやさしい万能調味料として利用できる。紫蘇を入れて赤く染まったものを指すことも多い。

本格的なくき漬けは時間をかけて仕込みますが、茹でてしっかりあく抜きをした芋がらに適量の梅酢を加えて混ぜるだけでも、美味しい即席漬物ができます。以前に「赤ちゃんカフェ」や「親子向け離乳食教室」などでこの漬物を提供し、ママたちにも好評!

普段の料理にも、芋がらを

戦国武将から現代女性まで幅広く愛され、人々の健康を守ってきた芋がら。「ぜひ食べてみたい」という方のために、芋がらの手軽な使い方をお伝えしますね。

芋がらの料理を美味しく作る最大のポイントは、「しっかりアクを抜く」こと。アクが残ったままだと口のなかがイガイガとしてしまい、美味しく感じられなくなってしまいます。アク抜きの下処理がとても重要です!

まず、水などで戻した芋がらを、沸騰したお湯で数分間煮ます。その後水を張ったボウルに入れて、数回水を取り替えながら、しっかりとアクを抜きます。少量食べてみて、アクが抜けていた下処理は完了です(芋がらの種類にもよりますが、私はだいたい半日位水に漬けることが多いです)。

下処理に時間がかかるため、まとめて下処理をしたものを小分けにして冷凍しておくとすぐに使えて、重宝しますよ!

先にご紹介したような梅酢の漬物や、白和え・スープ・味噌汁・煮ものなど普段の料理に幅広く使うことができます。水分を含みやすい特徴があるため、出汁や汁気の多い料理との相性がとても良いです。芋がら独特のシャキシャキとした食感を楽しんでくださいね。

芋がらを後世に伝えていくために

以前に芋がらの生産農家に伺った際に「食べる人が少なくなって、芋がらを作る人は年々減っている」という話を聞いたことがあります。これを聞いて何だか残念な気持ちがするのは、私だけでしょうか。

これまで書いてきたように芋がらは、戦国時代から現代までの長い間、たくさんの人たちの健康を支えてきた滋養に富んだ食材のひとつです。ぜひ後世にも残していきたいですよね!

そのためには、まずは芋がらを食べて味わってみるところから。道の駅や直売所などで売られていることも多いので、見つけたらぜひ手にとってみてくださいね。

書いた人

自身の体調不良がきっかけで、まちづくりから食の道へ。「薬膳×おばあちゃんの知恵=養生ごはん」をテーマにして、「養生キッチンふうど」として活動中。旅と食、古くて新しいものが大好き。国際薬膳師。昆布好きがこうじて「昆布大使(日本昆布協会認定)」も務めている。http://kitchenfudo.wixsite.com/fudo