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Jewelry&Watch

2026.10.31

ルーヴル美術館の至宝が腕時計に! ヴァシュロン・コンスタンタンと“時を超える美”に出合う【茶炉音・ド・和樂 特別イベントレポート】

ルーヴル美術館とヴァシュロン・コンスタンタンが織りなす“時を超える美” 1755年の創業以来、途切れることなく時計づくりを続けてきたスイスの高級時計メゾン〈ヴァシュロン・コンスタンタン〉。2026年、ルーヴル美術館とのパートナーシップから生まれた「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して –」に、新たな4本のタイムピースが加わりました。 そこで今回、「茶炉音・ド・和樂」では、東京・表参道の「ヴァシュロン・コンスタンタン ギャラリー 1755 表参道」を舞台に、特別なイベントを開催。西洋美術史家で東京造形大学教授の池上英洋さんと、時計ジャーナリストの柴田充さんをゲストに迎え、古代文明とルーヴル美術館、そしてアートと時計の修復が、いかに“時”を超えてつながっているのかを紐解いていただきました。 ルーヴル美術館の名品をわずか数センチの文字盤に写し取った8本の傑作時計。そして、メゾンを代表する時計を実際に腕にのせるタッチ&トライまで。美術と時計を行き来する、贅沢な時間をレポートします。

ルーヴルの至宝を、小さな文字盤の中へ

イベント当日、参加者はロールス・ロイス、レンジローバーによる送迎で表参道へ。到着したのは「ヴァシュロン・コンスタンタン ギャラリー 1755 表参道」。その名に冠された「1755」は、もちろんメゾンの創業年です。

東京・神宮前にある「ヴァシュロン・コンスタンタン ギャラリー 1755 表参道」。東京都渋谷区神宮前5-17-25 3階 TEL:03-6699-1755 営業時間:11時30分〜19時30分 ※完全予約制

この日、参加者を最初に迎えたのは、「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して –」の8本のタイムピースでした。ヴァシュロン・コンスタンタンとルーヴル美術館との芸術的・文化的パートナーシップから生まれたこのコレクション。2022年に最初の4本が発表され、2026年、新たな4本が加わりました。新作では、ファラオ時代のエジプト、アッシリア帝国、古代ギリシャ、ローマ帝国という4つの文明から、ルーヴル美術館の専門家とともに作品が選ばれています。

2022年に発表された4作。1枚目:「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して – アウグストゥス帝の胸像」。古代ローマを象徴する皇帝像を中央に据え、モザイクなどローマ美術の意匠を組み合わせた一本。
2枚目:「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して – サモトラケのニケ」。ルーヴルを代表する勝利の女神像を18Kホワイトゴールドの彫刻で表現。翼や衣のヒダまで細やかに彫り込まれている。
3枚目:「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して – ダレイオス王のライオン」。アケメネス朝ペルシャの王宮装飾をモチーフに、立体的なライオンと鮮やかな色彩を細密な工芸技法で再現。
4枚目:「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して – タニスの大スフィンクス」。ファラオ時代のエジプトを象徴するルーヴル美術館所蔵の名品を、彫金やエナメルなどの装飾技法で文字盤上に表現。

 

2026年の新作。「イシス神殿のテベレ」。ローマの河神テベレを表した彫刻を題材に、大理石のグリプティックと精緻な装飾技法を融合。42㎜、18Kピンクゴールドケース、自動巻き。

2026年の新作。「ヴェッレトリのアテナ」。ルーヴル所蔵の女神像を大理石の彫刻で再現し、古代ギリシャの壺絵を想起させる装飾を組み合わせた。42㎜、18Kピンクゴールドケース、自動巻き。

2026年の新作。「サルゴン2世のラマッス」。古代アッシリアで宮殿などを守った有翼の守護像をモチーフに、石彫と装飾工芸を融合。42㎜、18Kホワイトゴールドケース、自動巻き。

2026年の新作。「アクエンアテンの胸像」。古代エジプトのファラオを、石灰質砂岩そのものを彫刻するグリプティックで表現。42㎜、18Kホワイトゴールドケース、自動巻き。

美術館では巨大な彫像として目にする作品が、今度は手首に収まる時計へ。しかし、これは単に美術品を“小さくした”ものではありません。彫金、エナメル、ミニアチュール、マイクロモザイク、石彫など、メゾンが受け継いできた装飾工芸を駆使し、原作の精神そのものを時計という異なる表現へ置き換えているのです。時計というより、小さな美術館を覗き込んでいるような感覚に誘われます。

美術の中にも「時」は存在する

和樂の高橋木綿子統括編集長の挨拶、そして茶炉音・ド・和樂の鈴木 深支配人による乾杯ののち、この日のメインとなるクロストークが始まりました。登壇したのは、西洋美術史の研究で知られる池上英洋さんと、長年、世界の時計づくりを取材してきた柴田充さん。

この日の乾杯は、1760年創業のシャンパーニュ「ランソン」で。ヴァシュロン・コンスタンタンの創業は1755年、ランソンは1760年。ほぼ同じ時代に誕生し、それぞれ長い歴史を重ねてきた。また、「マルタ十字」を紋章にしているという共通点も。

池上さんが最初に取り上げたのは、美術における「時間」でした。西洋美術には、翼を持ち、鎌を手にした老人として「時」が擬人化されることがあります。翼は、時間が飛ぶように過ぎ去ることを示し、鎌は命を刈り取るもの。墓碑彫刻では、悲しむ人のかたわらにこの「時」の擬人像が置かれ、「どんな悲しみも、時がやがて癒してくれる」という意味を担うこともあるといいます。

西洋美術史家・東京造形大学教授の池上英洋さん。西洋美術に描かれてきた「時」の表現から、ルーヴルの名品が歩んできた歴史まで、作品を見る視点をわかりやすく紹介。

時計は時間を計るもの。しかし美術は、はるか昔から、時間そのものを“見るもの”として表現してきたのです。話はさらに、ルーヴル美術館を代表する《サモトラケのニケ》へ。大階段の頂に立つ、翼を広げた勝利の女神。現在では世界で最も有名な古代彫刻のひとつですが、その姿には頭部も両腕もありません。

池上さんは、欠損しているからこそ人間の想像力が刺激されるのだと語ります。完全ではないから、かつてはどのような姿だったのだろうと人々の想像力を掻き立てるのです。そして二千年以上の歳月を経て、戦争や社会の変化をくぐり抜けながら現在まで残ったその「時間」までを含めて作品なのだと説明します。

一度その話を聞いてから、文字盤上の「サモトラケのニケ」を見ると、時計の見え方まで変わってきます。

数千年前の文明と、270年を超える時計づくり

では、なぜヴァシュロン・コンスタンタンとルーヴル美術館なのでしょうか。柴田さんは、両者の関係がルーヴル美術館所蔵の歴史的な時計の修復を支援したことをひとつの契機として深まり、2019年に正式なパートナーシップを結んだ経緯を紹介しました。背景にあるのは、単に美しいものを生み出すだけではなく、優れた芸術や技術を守り、次の世代へ伝えていくという共通の思想です。

そしてトークは、時計と美術に共通する「修復」というテーマへ。

池上さんは、イタリアで暮らした経験にも触れながら、ヨーロッパでは靴や家具、時計など、良いものを修理しながら長く使い続ける文化が根づいていると話します。そして、ある宗教美術の修復をめぐるエピソードを引き合いに出しながら、「作品は作り手を離れると、持っている人のものでもある。その人の思い入れや歴史がつながっていく」と解説します。修復にはひとつの絶対的な正解があるわけではない、というのが池上さんの考えです。

ヴァシュロン・コンスタンタンの工房も幾度となく訪れ、またルーヴル美術館の取材も経験がある時計ジャーナリスト・柴田充さん。池上さんとのクロストークでは美術史と時計、それぞれの専門領域から「メティエ・ダール(装飾技法)」の魅力を読み解いた。

長年使われた時計には、ケースについた小さな傷も、その時計と持ち主が過ごした時間の一部かもしれません。一方で、内部の機構は正しく修復しなければ、その先の世代へ時を刻み続けることはできない。何を残し、何を直すのか。「修復」とは、過去を消して新品に戻すことではなく、そこに積み重なった時間を受け止めながら、未来へつなぐための営みなのです。

270年以上にわたり時計づくりを続けてきたヴァシュロン・コンスタンタンにとっても、これは重要な使命です。古い時計を修復するためには、現在では使われなくなった技法や工具が必要になる場合もある。時には過去の資料をひもとき、当時の技術そのものを学び直して修復に臨む——。そんな時計づくりの姿勢も、トークの中で紹介されました。

美術館と時計メゾン。一見異なるふたつの世界を結んでいるのは、過去の名品をただ保存することではなく、そこに宿る技術や記憶まで含めて、次の時代へ受け渡していくという「継承」なのです。今回、初来日した8本のコレクション「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して –」にも、その思想は色濃く表れています。

2022年に発表された第1章では、ルーヴル所蔵作品の中心となる像を、主にゴールドの彫金によって立体的に再現。たとえば《サモトラケのニケ》では、わずかな厚みの中に、翼の広がりや衣のヒダまでを彫り出しています。古代ローマを題材にしたモデルでは、人物像の周囲に極小の石を組み合わせた装飾も。池上さんはその技術を目の当たりにし、「一点一点が美術品だと感じます」と驚きを口にしました。

一般的な腕時計のように文字盤の中央に時針や分針を置けば、立体的な造形を作るための空間が失われます。そこでこのコレクションでは、時刻や曜日、日付などを文字盤の周囲に設けた4つの窓で表示。中央部をひとつの“カンバス”として開放しました。高度な装飾工芸を成立させているのは、それを可能にする機械式時計の設計そのものでもあるのです。

「金を彫る」から「石を彫る」へ。2026年の新たな挑戦

そして2026年。「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して –」は、さらに新たな領域へ踏み込みました。大きな特徴となったのが、「グリプティック」と呼ばれる石彫の技法です。これまでゴールドで表現していた彫像を、今回は石そのものから削り出しているのです。

「アクエンアテンの胸像」では石灰質砂岩、「イシス神殿のテベレ」では大理石など、それぞれの古代作品の質感に迫る素材が選ばれている。素材が変われば、当然、加工方法も変わる。

時計装飾のために培われてきた従来の工具だけでは、極小の石を思いどおりに彫ることはできません。伝統的な手仕事に加えて、現代的な技術も採り入れながら、古代の造形を数センチの世界へ再構築しています。ヴァシュロン・コンスタンタンも2026年の新作を、2022年作に続く「新たな章」と位置づけています。

数千年前、名もなき職人たちが石に刻んだ文明の記憶。それを21世紀の時計職人が、もう一度石に刻む。古代と現代の職人が、何千年という時間を超えてひとつの文字盤上で出会っているともいえるでしょう。

憧れの時計を、実際に腕にのせてみる!

イベントの締めくくりは、ヴァシュロン・コンスタンタンのさまざまな時計を実際に腕に乗せる、タッチ&トライの時間です。レディスで注目を集めたのが、「オーヴァーシーズ」と「エジェリー」。

“旅の精神”をテーマにした「オーヴァーシーズ」は、スポーティーでありながらエレガント。今回紹介された34.5㎜の「オーヴァーシーズ・オートマティック」には、ピンクゴールド製ブレスレットだけでなく、レザーやラバーのストラップが用意され、工具を使わずに交換できるインターチェンジャブル・システムが採用されています。

ホワイトのラバーストラップへと付け替えた「オーヴァーシーズ・オートマティック」。同じ時計でもストラップ次第で印象が大きく変わるのも魅力。

「オーヴァーシーズ・オートマティック」35㎜。18Kピンクゴールドケースに、ブレスレット、レザー、ラバーを付け替えられるインターチェンジャブル・システムを採用。スポーティーからドレッシーまで自在に表情を変える。

実際にラバーストラップへ替えてみると、同じ時計とは思えないほど印象が軽やかに。
「夏はラバー、秋冬はレザーというように、季節で変えるのも楽しそう」
「お店に持っていかなくても、自分で簡単に替えられるのがいいですね」
そんな声も聞かれました。

一方、「エジェリー」は、オートクチュールとオートオルロジュリーからインスピレーションを得たレディスコレクションです。「エジェリー・オートマティック」はケース径35㎜。文字盤に施されたプリーツを思わせる模様、縫い針を想起させる繊細な秒針など、時計と服飾の感性が重なります。交換可能なストラップを備えたモデルも用意され、赤やベージュなど色を替えるだけで印象は一変します。

「時計だけ見ると華やかなのに、腕にのせると意外と馴染む」
そんな驚きの声も。

「エジェリー・オートマティック」。35㎜の18Kピンクゴールドケースにダイヤを配し、オートクチュールのプリーツを思わせる文字盤でエレガントな印象に。ストラップを交換して装いに合わせて楽しめる。

「エジェリー」もストラップを自分で簡単に交換できる。赤やベージュなど、色を変えるだけで時計の印象ががらりと変わる。 

また、メンズでは、「ヒストリーク」「パトリモニー」、そして「トラディショナル・コンプリートカレンダー」などが登場。クラシカルな雰囲気を纏った時計は、秋冬シーズンやビジネスシーンにもぴったりです。

「トラディショナル・コンプリートカレンダー」はケース径41㎜。曜日と月を窓で、日付をセンター針で表示し、6時位置には月の満ち欠けを示すムーンフェイズを備える。自動巻きで、パワーリザーブは約40時間。

ケースの中では“美術品”のように見えていた時計も、自分の腕にのせれば一気に印象が変わります。
「今日で時計熱が一気に高まりました!」
そんな声まで上がり、会場は最後まで時計談義で盛り上がりました。

時間を計るものから、時間を受け継ぐものへ

数千年前につくられた古代美術。世界の名品を守り伝えるルーヴル美術館。そして1755年以来、時計づくりを続けるヴァシュロン・コンスタンタン。この日、トークを通して浮かび上がったのが、「修復」と「継承」というふたつの言葉でした。

ルーヴル美術館とのパートナーシップから生まれた「メティエ・ダール – 偉大な文明へ敬意を表して –」。2022年作と2026年作、計8本が一堂に揃った。

美術品も時計も、つくられた瞬間だけで完結するものではありません。時を重ね、傷つき、時には修復されながら、人から人へと受け渡されていく。その過程で加わった記憶もまた、そのものが生きてきた「時間」の一部なのかもしれません。

ヴァシュロン・コンスタンタン ギャラリー 1755 表参道」では、時計師の作業を間近で見ることができる。顕微鏡を覗き込みながら、極小のパーツを扱う時計師の精緻な作業をじっくりご覧あれ。

古代の職人から、ルーヴル美術館へ。ルーヴル美術館から、現代の時計職人へ。そして時計職人から、それを腕にする人へ。時を超えて、美を受け継いでいく。ヴァシュロン・コンスタンタンとともに、そんな壮大な“時間の旅”を味わう「茶炉音・ド・和樂」の1日だけの贅沢なイベントとなりました。

シャンパーニュをいただきながら、池上さんと柴田さんのクロストークに耳を傾ける。
クロストークの後にはフィンガーフードも。時計を眺めながら参加者同士の会話も弾む、サロンのような時間に。「TRIBUTE TO GREAT CIVILISATIONS(偉大な文明へ敬意を表して)」とマルタ十字をあしらった、この日のためのスペシャルデザートも。トーク終了後も、池上さん、柴田さんを囲んで時計や美術談義が続いた。学ぶだけでなく、語り合えることも「茶炉音・ド・和樂」の楽しみのひとつ。

これからも『和樂』および『和樂web』では、多彩なゲストをお招きし、美術や文化、美しいものと出合う特別な時間をお届けしてまいります。今後のイベントにも、ぜひご期待ください!

「茶炉音・ド・和樂」のご案内

『和樂』と『和樂web』では、今後も読者のみなさまにお楽しみいただけるスペシャルなイベントを企画しています。

このような特別な企画、プレゼントのご案内は「茶炉音(サロン)・ド・和樂」ご登録のみなさまへお届けします。ぜひお気軽にご参加ください!

 

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和樂web編集部


撮影/足立友梨 取材・文/田上雅人
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