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2017.06.30

車を走らせ、東へ西へ!美術館をめぐる旅 第5回 軽井沢千住博美術館 前編

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19世紀の終わりごろ、西洋人宣教師によって見いだされ、宿場町から別荘地へと変貌を遂げた軽井沢。作家や画家などの創作意欲を搔き立て、来日時にたびたび訪れる海外アーティストも少なくありません。この避暑地を、メルセデス・ベンツの2シーターで快適ドライブ! 目ざすは国際的日本画家、千住博氏の美術館。自然とともにあるという美術館として驚きの建築は、ロードスターのような心地よい空間でした。
_17A4674美術館の駐車場に併設して、ミュージアムショップと人気ベーカリー「ブランジェ浅野屋」が。この不思議な形の建物もまたアートだ。

太陽の光が燦々と降り注ぐ、庭園のような美術館[前半]

文・野地秩嘉

屋内でありながら自然の一部

軽井沢駅から国道18号を右折、そのまま走って塩沢交差点を過ぎると、軽井沢千住博美術館が見える。駐車場に車を止め、ドアを開けた瞬間から、わたしたちは作品のなかに足を踏み出す。この美術館の場合、収蔵してある絵画だけが作品ではない。建物にたどり着くまでの庭、小道、空の風景、風のそよぎもまた作品だ。ここは作品を「鑑賞」するところではない、美術そのものを「体験」する場所だ。

かつて千住博はこう書いたことがある。「美術館は決して重苦しいところでもないし、権威的なところでも、つまらない場所でもありません。(略)まずは、美術館では楽しむことを頭に置いてください。『おもしろいものを見つけてやろう』という気持ちで美術館に入っていきましょう」(『ニューヨーク美術案内』光文社新書)
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軽井沢千住博美術館は個人美術館だ。一般の美術館と違い、個人美術館の建設には作家自身がかかわるのが通例となっている。ここも同様で、千住博その人がコンセプトを考え、建物や庭の姿を頭のなかに描いた。建築家の西沢立衛は千住氏から聞いたイメージを図面に落とし込み、創作を加えた。西沢氏は妹島和世とのユニットSANAAで知られる俊英だ。美術館はふたりの共作と言っていい。

建築前に、千住氏は西沢氏にふたつのことを依頼をしている。

「こんなの建築じゃないよというのにしたい」
「自然は暗示に満ちている。無尽蔵の知識を僕たちに与えてくれる」

西沢は依頼にこたえた。同館は美術館どころか、建築の枠を超えた「ぶっとんだ」建物だ。
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太陽の光が差し込む美術館

エントランスまでの小道は雑木林を抜けていく。軽井沢にあった樹木だけではなく、海外から移植したものもあり、主なそれには名称、種類などキャプションが付されている。木や草花もまた作品という意識があるからだろう。

入り口の扉を開けるとロビーはなく、直接、展示室に踏み込むようになっている。正面には代表作「ウォーターフォール」が飾ってある。「ウォーターフォール」は入場者を迎えるレセプションなのだろう。ロビーがなく、入った瞬間から作品に相対する趣向は「ぶっとんだ」点のひとつにすぎない。

気がつくのは館内の明るさだ。晴れた日であれば光が燦々と降り注いでいて、戸外にいるのと変わらない。建物の壁面自体がガラスになっているため、なかにいても外の自然と一体になっている自分を感じる。
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「でも、光に当たってしまうと、作品に影響が出るのでは?」そう訊ねたら、事務長の井出嘉幸さんは笑った。

「ガラスには紫外線をカットする加工が施されていますし、何より千住先生ご自身が、作品に何かあれば何度でも手直しするとおっしゃっています。それに、色が変わったとしても、それもまた作品がたどった時間の経過だと」

やはり、作品は自然の一部だという考えなのだろう。その際、わたしは事務長に質問したが、なぜ、学芸員に聞かなかったかと言えば、同館に学芸員は常駐していないからだ。

千住氏は「好きなように見てくれればいいんです」と言い、過剰な説明を排しているとのこと。それが作者のコンセプトだから、学芸員が作品解説する姿は見られないし、また、作品自体に麗々しいキャプションは付されていない。タイトルと制作年が記してあるだけだ。
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それにしても明るい空間で絵を見るのは楽しい。世界の美術館の大半は窓を小さくして、室内を暗くした閉鎖空間になっている、室内を薄暗くしてから作品を照明で浮かびあがらせ、それが美術館の約束事だと信じている。そのため、入場者は長い時間を過ごしていると、ミュゼ・ファティーグという疲労感にとらわれて、暗い気持ちになってしまうのだ。

一方、この美術館では何時間いたとしても、ふさぎ込む心配はない。晴れの日であれば光を味わい、雨の日であれば雨滴がガラス壁面を伝うのをじっと眺めていられる。雨滴が垂れるシーンはちょうど千住氏が描いた「ウォーターフォール」の水と同じ動きだ。彼はそうした効果まで考えて、ガラス壁面の美術館を作ったのだろう。[後半へ続く]

美術館をめぐる旅〜軽井沢編ガイド〜

ハードトップをオープンにして、高原リゾートでのドライブを思いきり楽しんだのは、メルセデス・ベンツの2シーターロードスター。林の径を抜けたり浅間山の麓を走ったりと、夏の軽井沢を満喫できるのはゆったり快適ドライブが心地よいオープンカーならではです。夏の軽井沢ドライブ&アートな旅の、上質モデルプランをご紹介します!

軽井沢千住博美術館

目的の美術館はココ!
世界で活躍する日本画家と建築家が軽井沢の自然とコラボした美術館

ニューヨークを拠点に精力的に作家活動を続ける、日本画家・千住博氏の個人美術館。“土地の自然とともにある美術館”をコンセプトに、建物、植物、作品、そして空や太陽光、傾斜した床まで計算されていて、存在自体が美術品のよう。
スクリーンショット 2017-06-22 13.30.081995年、ヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞した大作「ザ・フォール」は現在プロジェクションマッピングを使用した“動く絵画”として特別公開中(2017年12月25日まで)。写真右の作品は「デイフォール/ナイトフォール」。下絵や画材などの展示もあり。

住所 長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
開館時間 9時半〜17時(入館は16時半まで)
休館日 火曜日(祝日の場合は開館、7月〜9月は無休、12月26日〜2月末日は冬期休館)
入館料 一般1,200円

上信越自動車道「碓氷軽井沢IC」より約15分 駐車場60台

東間

軽井沢で蕎麦を食べるならココ!
料理を楽しみ、締めにつるっと…。粋人好みの極上蕎麦店!

群馬で蕎麦打ちの修行をし、2003年にオープンした『東間(とうま)』。少しだけ粗めに挽いた細打ちの蕎麦に、かつおの本枯節を使用したすっきり味のつゆがこの店流。人気のごぼうのから揚げもだし巻き玉子も美味。鍋料理が2種類、通年メニューにあるのもうれしい。
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住所 長野県北佐久郡軽井沢町発地1398-58
営業時間 11時〜15時、18時〜21時(売り切れ次第終了、季節により変更あり、夜要予約)
定休日 火曜日(夏期無休)

上信越自動車道「碓氷軽井沢IC」より約10分 駐車場13台

メルセデス AMG
Mercedes-AMG SLC 43

軽井沢をドライブしたのはこのクルマ!
“フルタイムオープン感覚”の気持ちよさ!

2シーターの軽快な走りに、緊急ブレーキや車間距離キープなどの安全機能、クローズ時でもオープン感覚で走行できるルーフモードなど、最新技術で人の感覚をも心地よくするSLCは、夏の軽井沢を走るのにぴったり。車体はもちろん、ステアリングまわりのデザインや深紅のシートベルトなど、女性がグッとくるセンスも秀逸。

【メルセデス AMG SLC 43】
左/右ハンドル 9速A/T 総排気量2,996cc 全長4,140mm 全幅1,820mm 全高1,305mm 車両本体価格9,700,000円(税込)
_17A4552-minセンターコンソールのレバーやキーのボタンをひと押しするだけで、20秒かからずルーフの開閉が可能!

スクリーンショット 2017-06-20 17.10.49ルーフトップはクリアモード(写真左)で頭上に青空が広がり、ダークモード(写真右)に変えれば室内の温度上昇防止にも。

問い合わせ先/ヤナセ www.yanase.co.jp/

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–撮影/永田忠彦 構成/小竹智子-

美術館をめぐる旅 軽井沢千住博美術館 後編はこちらから!

第1回 土門拳記念館はこちらから!
第2回 石川県立美術館はこちらから!
第3回 岡田美術館はこちらから!
第4回 徳川美術館はこちらから!